空間反転対称性をもたない系では、第二次高調波発生や非相反伝導、⾮線形ホール効果といった印加電場に関して二次に比例する非線形電気伝導現象が現れます。このような現象は、3階の極性テンソルである非線形電気伝導度テンソルで特徴づけられ、ランク1,3の極性な多極子モーメントとランク0,2の軸性な多極子モーメントのもとで現れます。これまでの研究では、主としてランク1から3の多極子モーメントに関連する非線形電気伝導現象に関する研究が行われていましたが、 一方、ランク0の電気トロイダル単極子がどのような非線形電気伝導を誘起するかはよくわかっていませんでした。
本研究では、カイラル結晶構造のもとで現れる非線形光学応答現象を、群論および模型解析を用いて調べました。 まず群論による解析から電気トロイダル単極子に由来する二次の非線形電気伝導度が、異なる二周波数のもとで有限になることを明らかにしました。次に、電気トロイダル単極子自由度を有する結晶構造に対して、久保公式を用いた模型計算を行うことで、カイラル結晶構造に由来する反対称スピン軌道相互作用が上記の非線形光学応答の発現に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。