応用物理工学コースは,工学部応用理工系学科の13研究室と,電子科学研究所の協力講座1研究室を合わせた,計14研究室で構成されています.
教員は工学研究院(工学院)の応用物理学部門(応用物理学専攻)に所属しており,13研究室は組織上,4つの分野(講座)に分かれています.ただし,この分け方に大きな意味があるわけではありません.ここではより分かりやすく,研究手法の違いに基づいて3つのグループに分類して紹介します.
まず,物理を「モノのコトワリ」ととらえ,直接「物質」に向き合う実験研究と,基礎方程式に立脚して論理的思考を積み重ね,現象を説明する理論研究に大きく分けられます.
さらに,物理学における光(電磁波)の重要性にも注目します.私たちが目で見て得る情報は可視光によるものであり,情報通信を支えるのも光です.また,医療におけるX線撮影・CTスキャン・MRI検査といった技術も,すべて電磁場の応用によって実現されています.
光を高度に制御し,物質の性質を測定したり状態を操作したりすることは,物理研究における非常に強力な手法となっています.そこで本コースでは,光を重要な研究手段とする研究室を独立したグループとして区別し,「物」・「理」・「光」の3つに分類して紹介します.
身近な水から極低温のヘリウムまで,応用物理の研究対象は実に多彩です.
有機導体の電子物性,超音波を用いた半導体量子構造の非破壊測定,周期性を持たないが不規則でもない原子配列を示す準結晶,水の制御による細胞活動の統御,極低温で現れる超流動ヘリウムなど,多様な物質に焦点を当てて実験的研究を行う研究室をまとめています.
これらの研究は,基礎的な物質理解の深化にとどまらず,新しい電子デバイスや非破壊検査技術,革新的な材料開発,さらには医療やバイオ分野への応用など,将来の社会や産業の発展に直結する可能性を秘めています.
各研究室はそれぞれの対象となる「物」に強い関心を持ち続け,その本質的な性質を解き明かすことに力を注いでいます.
多様な「物」と真摯に向き合い,新しい物質科学を切り拓く研究群です.
トポロジー理工学研究室
量子機能工学研究室
結晶工学研究室
ナノバイオ工学研究室
超流動物理学研究室
非従来型超伝導,トポロジカル物質,半導体微結晶の光学応答,グラフェンやカーボンナノチューブにおける量子輸送現象,第一原理計算による物性予測,フォノニック結晶,量子ウォーク,非エルミート量子力学など,多様な物質や現象を対象に,理論的研究による解明を目指す研究室です.
実験は行わず,解析的な手計算から,大型計算機を駆使した数値計算まで,さまざまな手法を用いてアプローチします.物理現象の背後にある理屈を徹底的に考え抜くことで,新しい理解や予測を生み出しています.
これらの理論研究は,基礎科学として自然の根本的な理解を深めるだけでなく,新しい機能性材料の設計や量子技術の基盤構築など,将来の科学技術や産業応用に直結する重要な役割を担っています.理論から導かれる予測が,実験や技術革新の出発点となることも少なくありません.
理論の力で自然の本質を見抜き,新しい未来像を描き出す研究群です.
数理物理工学研究室
物性物理工学研究室
固体物理学研究室
光渦を利用した物質操作,半導体ナノ構造におけるスピン物性の研究,通信波長帯で動作する量子メモリの開発,EUVから軟X線に至る短波長光源と新しい分光法の開発,レーザー冷却原子系の超高精度分光による基礎物理学の検証,光子数の定まった量子状態の生成,さらには超伝導体の超高速分光など,高度な光技術を駆使する研究室をまとめています.
これらの研究では,多数の光学機器を巧みに操り,狙いを定めた現象を解き明かすことに挑戦しています.とりわけ,超高分解能の分光測定を実現し,未知の物理現象の解明へとつなげることを目指しています.
さらに,このような光科学の進展は,基礎物理学に新しい知見をもたらすだけでなく,次世代の情報通信技術,超高精度の計測やセンシング,さらには医療診断や材料分析など,幅広い分野への応用も期待されています.
光を自在に操ることで,物理の最前線と社会の未来をひらく研究群です.
光量子物理学研究室
極限量子工学研究室
フォトニクス研究室
半導体量子工学研究室
光物性工学研究室
光電子ナノ材料研究室(電子科学研究所)