Multi photon microscopy
Multi photon microscopy
多光子励起顕微鏡は波長800 nm以上の励起光で蛍光分子を励起するので生体組織による散乱効果を受けにくく,深部観察に長けた顕微鏡である.例えばマウスの大脳皮質はもちろんのこと,さらに深い部分の海馬や脳梁なども観察できる.
多光子励起顕微鏡の動作原理は,レーザースポットを2次元的に走査して,レーザースポットの位置とその位置で得られた蛍光輝度から画像を構築するというものである.共焦点顕微鏡と動作原理はほぼ共通する.
レーザースポットを2次元的な走査にはガルバノスキャナなどのビームスキャナを用いる.ビームスキャナでレーザービームを適当に飛ばせばいいというわけではなく,飛ばしたビームを対物レンズに適切に入射しなければならない.このため,対物レンズそのものやビームスキャナと対物レンズの間に設置するレンズの選定が非常に重要である.
また,顕微鏡と聞いて想像するようなカメラを使って蛍光観察するのではなく,光電子増倍管などの感度の高い光検出器を使うのが特徴である.そのため,レーザースポットの位置と蛍光輝度を対応付けるために簡単な信号処理が必要になる.
ここでは,安価に多光子励起顕微鏡を自作してみたい方向けに,顕微鏡の設計方法や構築方法をまとめていく.大まかな仕様は市販の顕微鏡と同程度の視野φ1 mm,撮像速度は>10 fps程度である.レーザー光源や対物レンズを除けば数百万円程度で自作できるだろう.