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English

コンピュータを用いた生命科学

1990年代に初めて生物の全ゲノムが解読されてから、これまでに微生物からヒトまで数千の生物種についてゲノムの解読が行われました。大規模なデータ計測の対象は、ゲノム配列のみにとどまらず、RNA、タンパク質、代謝物質、DNAの修飾状態など、生命活動を構成するさまざまな要素へ広がっています。これらの計測により得られる膨大なデータの中から科学的発見を行うオーミクス科学において、大量のデータを蓄積、検索、解析する学問である情報科学は益々重要性を増しています。

情報科学は20世紀中盤に成立した比較的新しい学問ですが、この20年ほどの計算機の劇的な性能向上のおかげで、私たちの日常生活のみならず様々な科学分野においても、最も影響力の大きな基盤的学問になりました。生命科学分野でも、計測データが蓄積するに従い情報科学的手法は日々強力さを増しています。私自身はウェットの実験を行なわず、コンピュータのみを用いて研究をするドライ系の研究者であるため、この情報科学的手法の強力さが頼みの綱です。人類規模のプロジェクトの成果として大量データが公開されるたびに、これでまた情報科学が強力になったと、喜んでいます。

私にとって大きな関心は、どうやれば、蓄積されたデータから得られる限りの知識を抽出できるかという点です。計測を行う実験者は、自らの生命に関する疑問を解決するために計測を行うものですが、得られるデータが包括的なものであることから、その実験者が思いもつかなかったような生物学的真実を、データが物語っているということがあり得ます。また、別々の研究プロジェクトで計測された大規模データ同士を相互に比較解析することでも、個々の研究では気づかなかった発見が期待されます。論文発表が済み、一般公開されて新規性の薄れたデータの中からでも、深い生物学的真実を掬いだせるような、技術力の高い研究を目指しています。

今のところは、ゲノム配列に潜むシグナルを感度良く検出する方法論の開発を主体としています。進化系統樹の理論を用いたゲノム中の機能領域の発見、文脈自由文法という情報科学の概念を用いたRNAの二次構造の解析、ベイズ推定という統計的手法を用いた頻出配列モチーフの発見など、様々な方面での技術開発を進めています。現在の技術開発の日々の先に、ランダムな文字列数値列が並んでいるだけにも思える大規模データが、生物の本質を語る文章や絵画に見えてくる日が来るのではないかと期待しています。

(2011年9月, 「創成」第18号より一部改変し転載)

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