今後登場が期待されている介護ロボットは抱え動作など細かい力の調整を必要とするため、全身に複数の触覚センサを組み込むことが必要になります。これら多数のセンサから得るデータを効果的に送信するシステムとして、ホストノード、リレーノード、センサノードからなるイベントドリブン型センシングシステムの研究を行っています。センサノードはセンサプラットフォームLSIとセンサデバイスからなり、複数個がシリアルバスによって接続されています。本システムは人間の機能を模しており、人間の受容器が持つ自己発火機能と連続した刺激に対してデータ送信間隔が伸延する順応機能を持っています。これらの機能により、配線数増大とデータ幅輳を低減することができます。また、センシング中のイベントに応じて注目したいセンサノードのデータ送信頻度を増大させ、それ以外は減少させる人間の意識集中を模したシステムの研究も行っています[1]。
シートセンサ[2]
イベントドリブン型センシングシステムの多数のセンサから効果的にデータを取得できるという利点を生かしたアプリケーションとして、自動車用シートセンサがあります。荷重センサをシートに多数配置することにより、着席状態(体勢)を取得することができます。また座面中央など反応し続けるセンサは、イベントドリブン型センシングシステムの持つ順応機能を用いてデータ点数を削減することができます。搭乗者の状態を推定しながら快適に自動運転するためのセンサ群になると考えています。
自動車用シートセンサ
左重心時
左重心時の荷重の様子
ウェアラブルセンサ[3][4]
イベントドリブン型センシングシステムの特長である「多数のセンサから効率的にデータを取得できる仕組み」を活用したアプリケーションとして、人が装着可能なウェアラブルセンサの研究に取り組んでいます。多種多数のセンサから人の動作や力のかけ具合を検知することによって、職人のスキルのデジタル化や、遠隔ロボットの操作インターフェイスに応用することを目指しています。
これまでに、手のひらに加わる力を検知する力覚センサ、指の曲げ角度を測る曲げセンサ、周囲の物体を検知する距離センサを用いて、把持状態の検出を行いました。また、加速度センサや角速度センサを用いて、人の多関節動作を検知することができました。
作製したウェアラブルセンサグローブ
計測した左官動作時の各指先に加わる力
[1] 伊藤翔太,森遼雅,野々村裕,畑良幸,“人の意識集中を模したデータ量制御機能を持つ神経網型センシングシステム”,第38回「センサ・マイクロマシンと応用システム」シンポジウム,10P3-SSL-86,2021.
[2] 神谷祐輔,古田彰謙,小川優希,畑良幸,”神経網型センシングシステムを用いた自動車用シートセンサ,”令和5年電気学会全国大会,3-150,pp.227-228.
[3]野間駿介,白戸祥太,國枝尭央,室山真徳,畑良幸,”ウェアラブルセンサグローブに向けたオフセットドリフト補正機能とデータ量制御機能を有するイベントドリブン型センシングシステム”,令和6年度電気学会センサ・マイクロマシン部門総合研究会,MSS-24-040.
[4] 大西伶哉,野間駿介,室山真徳,畑良幸,”ウェアラブルセンサに向けたイベントドリブン型センシングシステムを用いた慣性センサによる姿勢角検知の基礎検証”,令和6年度電気学会センサ・マイクロマシン部門総合研究会,MSS-24-056.