介護ロボットや家庭内ロボットなど、人と触れ合いながら作業を行うロボットには、人や物に優しく触れ合うことや、的確な把持動作を行う必要があります。この実現には、接触物を認識するための触覚センサが必要となります。人は物体に触れたとき、金属や木材などの材質によって、感じられる冷たさや温かさが異なります。これは、人から接触物へと流れる熱の移動量、すなわち熱流によるものです。
我々の研究チームでは、この材質による温感の違いを検出するために、熱流検出が可能な熱流式温感センサを提案しています。熱流量による材質判別を行うセンサを試作し、人の材質判別速度である1秒以内の応答性を実現しています[1]。
熱流式温感センサの実写真と構造図は左図のようになっています。本センサは、内蔵されたヒータを加熱することで、センサと測定対象に温度差を生じさせ、能動的に熱流を発生させています。
左図の等価回路から熱流を導出でき、本センサに流れる熱流 Iを検出することで、測定対象の材質判別が実現可能です。左図は試作した熱流式温感センサを用いたときの、ポリエチレン、ガラス、アルミニウムの3種類の材質の熱流波形です。この熱流波形において、接触後からピークが発生しており、我々はこのピーク値を熱流ピーク値、接触後からピークまでの時間を熱流ピーク時間と呼んでおります。3種類のいずれの材質でも熱流ピークが1秒以内に発生しており、この熱流ピーク値の大きさが材質によって変化することが確認されます。
その他、材質の粗さや滑りの検知の研究も行っています。
[1] 森遼雅,樋口創太,大橋祐也,土屋駿斗,畑良幸,野々村裕,“材質判別に向けた1秒以下の応答性をもつ熱流式温感センサ”,電気学会論文誌E,Vol. 141,No. 6 (2021),pp. 153-163.