フィードバック制御理論教程1
■村岡如竹
■村岡如竹
50年くらい前、学生時代に習った制御理論では、ステップ入力に対してリンギング(オーバーシュートやアンダーシュート)を起こさない条件は、オープンループのボーデプロット上で、「位相±135°でループゲインが-12dB以下」ということだった。これは理論的なことではなく、「経験則」によるものと講義では説明された。
しかし、今日のシミュレーションが発達した環境で、確かめてみると、どうも、もっと複雑な事情が絡んできているのが判ってきた。結論から言うと、オープンループ上で純粋に2極しかない条件では、「位相±135°でループゲインが-15dB以下」という結果を得た。
では、なぜ、「経験則」では、-12dB以下だったのか。ここでは、3極、4極といった多極を想定としてCASL87や他のシミュレータを利用してこの謎を解き明かしていこう。
尚、解析においては、リンギングを起こさないための第1極は2極目以降とのスタガー比を確保しつつ、シミュレーションでしかできない重極(共役複素極含む複素極は除外)をもつフィードバック回路を想定した。
重極とした理由: ぎりぎり、リンギングを起こさない状態での1極目と2極目のスタガー比を確保しつつ、2極目以降の極が極限まで2極目に近接しているという最悪条件を想定して、完全なる重極とすることで、なんらしかの漸近線値を期待したため。
【オーバーシュートしない安定したフィードバック制御系の設計】
増幅器などの電子回路の場合は、オーバーシュートやアンダーシュートのリンギングは、せいぜい電源電圧にぶつかるくらいで、大した被害はない。しかし、メカや、化学プラントなどでは、致命的となる。つまり、この事態を避けるためには、応答性を確保しつつ、リンギングを起こさないことの閾値をもとめることが重要となる。
最も判り易い例としては、高度なメカトロニクスでのミサイル(ロケット)の自動制御であろう。ここにいい例があるので紹介しよう。
極東地域にも配備されたロシアの沿岸防衛用地対艦ミサイル・システムK-300バスチオン(Бастион)-Pの地上発射型の場合のミサイル本体は、P-800オニクス(Оникс)で、その主力エンジンはラムジェット・エンジンである。発射時は固体燃料による噴射であるが、ある程度のスピードに達するとラムジェット・エンジンの推進に切り替わる。
その発射時の映像が公開(英国のロイター通信提供)されている。この映像からは発射直後に先頭部のサイド・スラスターの噴き出しでいきなり水平飛行に転じているが、重量3トンの本体をまったくオーバーシュートやアンダーシュートすることなく見事に直角に姿勢制御している。さすがは旧ソ連時代からフィードバック制御理論の長けた歴史(盲目の天才、ポントリャーギンの「最大原理法」など)を持つ国のお家芸的技術と言えよう。尚、この映像では1機のみのデモであるが、実戦では3機を同時に発射し、先頭の1機がターゲットの追尾と他の2機へのコントロールを行うとのことである。
米国の巡航ミサイル「トマホーク」などは発射時の映像はけっして詳細を見せないが、ロシアは自信たっぷりなのか、高度な技術の粋をこの映像で堂々と「お披露目」している。
このロシアのアイデアである直角に姿勢を変える動作は、主力のラムジェット推進に切り替わる前の固体燃料による推進時と思われるが、発射後、すぐに先頭部のサイド・スラスターによって水平に転じているのは、発射時の最初から低空で飛ぶことで敵の艦船のレーダーに捕捉されないことをねらっているものと思われる。
また、この先頭部のサイド・スラスターの効力は、日本のSSM-1のような、まるで多連装ロケットランチャーのような「斜め発射」とは異なり、発射管を垂直に立てることで、ミサイル発射機搭載車の設置位置の悪条件での向きを気にすることなく、どの方向にも自由に、そして、いきなり水平飛行、つまり、超低空で敵艦に向かって、無駄な迂回をせずに最短距離で迫っていくことを可能にしているのである。
さらに、映像を詳しく見ると、面白いことに先頭部のサイド・スラスターはラムジェットの空気取り入れ口をふさいでいるキャップになっているため(P-800の発射時の画像参照)、発射時の水平飛行への姿勢転換終了後は自らのスラスターの全方位噴射で切り離され、捨てられている。このことから、スラスターを切り離した後に、さらに、ある速度(音速かな?)に達した後に、固体燃料ロケットエンジンからラムジェット・エンジンに切り替わるのだろうと推測される。
P-800としては、地対艦ミサイル仕様の場合のみ、このサイド・スラスターがパーツとして先頭部に連結された画期的なシステムとなっている。この技術により、P-800本体を地対地、空対地、地対艦、空対艦、艦対艦などの多用途に転用できるようになっている。
サイド・スラスターを離脱させたあとは、胴体に格納された矢羽を外に出し、空力制御で姿勢や方向をコントロールするか、或いはベクタード・スラストで同等のことを行うと思われる。
因みにミサイルなどのロケットは、液体、個体燃料の方式の違いにかかわらず、共通して、燃料の消費によって機体の重量も重心位置も刻々と変化していくものであり、また、飛行する空間の気圧や空気との相対スピードの違いによる矢羽やベクタード・スラストの角度に対するゲイン比や応答特性も大きく異なってくる。
線形近似:
これらの状態の変化に対応するには、フィードバック制御上の安定動作のための各要素の変化を把握し、その状態に合わせたフィードバック系定数を動的に変化させなくてはならない。(デジタル・フィルターで、伝達関数の分数式の分子にある人工的なゼロ点や分母にある極の周波数の変更、及びループゲインを変更など)
つまり、高度の違いによる気圧や速度、燃料の残量による重心位置が変化するなど、非線形上のそれぞれの状態で、「線形近似」を基本にしたモデルを複数、構築することが重要となる。
さて、制御理論、特にフィードバック制御理論は電子回路のみならず、飛行機や水中翼船のエルロン制御及び、上述のようなミサイルのサイド・スラスターなど、おおよそ「制御」と名の付くものの統括的コントロールの要である。
統括的制御理論にとって安定性と高速応答性は相反する側面をもつが、ぎりぎりのところを正確に構築しなくてはならない。ここではそのような観点で、CASL87を活用して、尚且つ、一般の制御理論の教科書にはない詳細な部分に切り込んだ展開で説明していく。
■周波数特性上はリップルのないバタワース型特性、しかし...
下の図は3次のローパス・フィルターの周波数特性図である。それぞれ、チェビシェフ(Chebyshev)、バタワース(Butterworth)、ベッセル(Bessel)のフィルターである。
さて、フィードバック制御理論の話で、なぜ、ローパス・フィルターの特性を持ち出したのかと思われるだろうが、これらのフィルターのステップ入力応答特性に注目していただきたい。下の図は、上述の各種フィルターのステップ入力応答に対するレスポンス特性である。(Simetrix/Simplisを使用)
周波数特性上は、リップルのないフラットな特性はバタワース型とベッセル型であったが、ステップ入力応答においてオーバーシュートがないのはベッセル型のみである。
電子回路の場合は、オーバーシュートは最悪、電源電圧にぶつかる程度で済むが、他の機械系(冒頭に紹介したミサイルの姿勢制御など)の場合は、不安定なオーバーシュートの修正のために燃料を無駄に費やすことや、化学プラント系の制御では、融点、沸点の限界値に到達して相転移(Phase transition)を起こし、施設の破壊に及んでしまうので要注意である。
このように装置の周波数特性にリップルがないからといって安心できるものでもないことが判るであろう。
ただ発振しないというだけの条件は位相-180度(+180度含む)のときオープン・ループ・ゲインがゼロdB未満というのは昔から周知である。では、このオーバーシュートの有無の境目をどうやって判別するのか、これから説明していこう。
■フィードバック制御の概念
本題に入る前に、初歩的なフィードバック制御理論の概念について触れておこう。
下の図のクローズド・ループ回路はフィードバック制御系の概念である。A(S)はメインとなる増幅器の裸ゲイン、B(S)はフィードバック(ネガティブ)経路のゲインであり、このB(S)の出力と入力(Input)との差をメインの増幅器A(S)に入力する。A(S)の絶対値が巨大であれば、このクローズド・ループ回路の利得は、B(S)の絶対値の逆数値と同等になる。(Sはラプラス演算子。S = σ+jω )
フィードバック制御系の安定性を判別する場合、クローズド・ループ回路の図の下に示した図のようにオープン・ループ回路でのゲインと位相の周波数特性を評価することになる。オープン・ループ回路はクローズド・ループ回路を切り開いた構造である。
オープン・ループ回路はクローズド・ループ回路のフィードバック経路のゲインB(S)とメインの増幅経路のゲインA(S)の積として表せる。クローズド・ループ回路のどこで経路を断ち切ってオープン・ループ回路を作るかは、断ち切る場所がインピーダンス的にあまり影響を受けない場所を探すことに限る。
それでもやはり計算精度的に心配な場合は後で述べる「オープン・ループ回路の構築上のテクニック」を参照のこと。
・ボーデ線図法の活用
下の図はボーデ線図法(Bode diagram)の概念である。上図のオープン・ループ回路でのゲインと位相の周波数特性を評価することでフィードバック・ループ系の安定性を判別できる。ただし、位相は負のフィードバックであるため、-180度、或いは+180度をベースにする。
下の図の例では、2つの極(最低極Fp0 + 第2極Fp1)で構成され、自然発生説な第2極Fp1に対して、人工的につくった第1極Fp0の値を操作して安定性の確保(ここではオーバーシュートしない)する概念を表す。2極構成の場合は、説明は後述するが、結論から述べると、ステップ入力応答がオーバーシュートしない条件は、位相-135度において、ループ・ゲインは-15dB以下である。
ところで、ボーデ線図法での安定性判断は、いささか古典的と思われるかも知れないが、実験室に転がっているオシロスコープやサインウェーブ発振器で検証でき、判別結果に対しての技術者同士の理解の上でも、容易に納得のいく同意が得られるので、現代でも「タフ」(toughness)な判別法といえる。また、他の方法に比べて、フィードバック・ループ系の全体の安定性のための計画性を容易に発想でき、系の設計修正もボーデ線図から容易に導かれる。
コンピュータの性能が乏しかった過去においては、周波数特性上の正確なゲインや位相の計算結果の把握が難しかったものだが、今日のPCの発展により、古典的なボーデ線図法にも、かなり正確な計算が手短なPCで高速にできるようになり、エンジニアのフィードバック制御の設計手法として再度、光が与えられる時代になったことは感慨深い。
■シミュレーションによるオープン・ループ特性での安定性判断(オーバーシュートしないこと)
フィードバック系回路や制御システムの安定性、特にオーバーシュートを起こさない設計の基本はシミュレーターによる手法だ。実際の実験での検証も必要だが、オープン・ループの場合、ゲインと位相の関係がノイズに埋もれてしまい、うまくいかないことが殆どであり、確信が得られるものではない。むしろ、シミュレーターを使うことにより、周波数特性に影響するいくつかの部品のバラツキを想定したシミュレーションを行い、限界状態を把握することの方が有意義で確実な設計ができる。
・まずは、2極(最低極Fp0 + 第2極Fp1)構成の例から
下の回路図はオペ・アンプを模して倍率60dBのクローズド・ループ回路である。オペ・アンプの裸のDC(直流)ゲインは150dBとしてあり、第2極は10KHzに存在しているものとする。(オペアンプの構造)
本来、最低極Fp0のみがループ内に存在して第2極以降が存在しないのが理想で、その場合、位相遅れが-90度の漸近線に向かっていくだけなので、発振やオーバーシュートのない状態である。しかし、世の中そうはうまくいかず、ループ・ゲインを最大限に確保して高性能を得ようとすると、複数の極に悩まされるのがフィードバック制御の難しさの常である。
上記のクローズド・ループ回路の最低極Fp0を調整して、オーバーシュートしないぎりぎりのステップ入力応答(左)とオーバーシュートしてしまっているステップ入力応答(右)を下図にそれぞれ示す。
下の図は、上図のオーバーシュートしないぎりぎりのステップ入力応答とオーバーシュートしてしまっているステップ入力応答のそれぞれのクローズド・ループ回路の周波数特性をCASL87及びGR87で求めたものである。青色がぎりぎりオーバーシュートしない場合の周波数特性、赤色がオーバーシュートしている周波数特性である。共に周波数特性上はリップルを持たない特性であることが判るであろう。
オーバーシュートの有無に関してはクローズド・ループ回路の周波数特性では判別できないのである。では、オーバーシュートのないステップ入力応答特性にするにはどう設計したらいいか、というか、どう判別したら良いかが問題となる。
下の図は上図の回路のオープン・ループ回路である。上記のクローズド・ループ回路のステップ入力応答のそれぞれのオープン・ループ回路のゲインと位相の関係を求めてみよう。
オープン・ループ回路としての周波数特性はCASL87及びGR87で求めると下図のようになり、上図の等価回路のような2極(最低極Fp0 + 第2極Fp1)構成の場合のステップ入力応答がオーバーシュートしないぎりぎりのゲインと位相の関係は、「-135度のときのループ・ゲインは、-15dB」である。
ところで、本論での「極」は、実数極(負の実数)であって、共役複素極でない(クリック)ことに注意してほしい。
・第2極以降の極が複数近接している場合
上述のように最低極を含めた極数が2個までなら位相の漸近線は-180度までである。しかし、下の図のように第2極の近傍に第3、第4の極がある場合はどうだろう。
オープン・ループ・ゲインの減衰や位相の遅れの漸近線が-270度、-360度となる事態になっていくが、オーバーシュートしない条件はどのようになっていくだろうか。
・スタガー比(Staggered ratio)の現実性への疑義
フィードバック回路でのオープン・ループの周波数特性で「スタガー比」というのを皆さんは聞いたり勉強したりしたことがあるだろう。安定性追求の手段に於ける判別指標となる第2ボールと第1ボールの周波数の「比」である。この値が大きければより安定することになる。
この「スタガー比」を大きくするには、周波数軸上で第1ポール(極)の位置を第二ボールの位置から充分低域の方へ移動、若しくは回路の改善によって、第2ポール以降のポールを充分高い周波数に追いやる、或いは、ゼロ点の周波数を第2ポール以降に狙い撃ちして被せることで実質的な第2ボールを消滅させるなどの手段が有効である。
しかし、上述にて説明した第2ボール以降が近接した状況にある場合は、安定性を重視するフィードバック制御の設計にとって、もはや「スタガー比」なるものは怪しげな存在だ。第2極に第3極、第4極が極めて近接している場合にはオープン・ループ・ゲインの減衰や位相の遅れがさらに深刻になる。特に第2極の値が判っても第3極の位置が不確かな場合は最低極(第1極)の計画的な作成をスタガー比に頼っても無意味になりそうなことは直感的にも判るだろう。
・超重極にいたるまで確かめてみよう
第2極に近接する第3極以降の極を極端に近接、つまり重極状態にすることがこの問題の最も理想的な解析手段である。下にこの重極状態のクローズド・ループ回路の構成を示す。超重極の作成は、現実的な回路では困難だが、等価回路では完璧に組めるのがシミュレーションの利点である。
上記の等価回路でステップ入力応答がオーバーシュートの有無の境目の最低極Fp0を割り出し、下のオープン・ループ回路にて位相-135度でのオープン・ループ・ゲインを求める。
この作業を最大100個の重極まで行い、それぞれのスタガー比と、オープン・ループ回路の位相-135度でのオープン・ループ・ゲインの特性を求めたのが下の図である。
上の図の左側が各重極数におけるオーバーシュートしないぎりぎりのスタガー比であり、右側が同条件での位相-135度でのオープン・ループ・ゲインの値を示している。
右側の位相-135度でのオープン・ループ・ゲインの図では、重極の数が増えると、-6dBの漸近線にゲイン限界が近づいていることが判る。ただし、この重極の数が増えるということは、位相補償のための第1極を低周波数側に移動せざるを得ないため、システムの応答特性が悪化していくことはいうまでもない。
第2極が2個の重極の例では、位相-135度でのオープン・ループ・ゲインの値は-10.2dBであるが、これは、第3極が第2極から開いている(周波数が第2極より遥かに高い)場合は-15dBに近づくことを意味する。
上記のことから、第3極以降の位置がつかめないような状況では、位相-135度でのオープン・ループ・ゲインの値は-15dB以下であればオーバーシュートを起こさないということがいえるが、3極目以降が把握できない状況はできるだけ避けたいところである。
電子回路の場合は、2極目以降は寄生の浮遊容量によるものであるが、先述のループ状のA(S)内に1次微分(ゼロ点)を人工的に作成して第2、第3極を解消する手段を講じて、実質上の2極目を高域に追いやることで、リンギング対策とすることに努めるべきであろう。オープン・ループで「位相±135°で、-12dB以下」でも、高速な応答でリンギングのない設計を試みるべきである。
・「経験則」では、「位相±135°でループゲイン-12dB」だった理由
冒頭で、過去の「制御理論」の講義で、この「経験則」でのリンギング発生の判別条件がまことしやかに通った理由が上記の重極でのシミュレーションでお判り頂けたと思う。極が単純に、第1極を含む2極のみであれば、「位相±135°でループゲイン-15dB」であるが、第3及び第4極目が第2極に近い場合、位相±135°でループゲインが-6dBの漸近線に近づいていくことになり、複数の実験事例では、おぼろげながら-12dBという「経験則」で得た値になった経緯が容易に推測できる。
・A/D変換に必要なサンプリング周波数やダイナミック・レンジの決定
安定性制御の対象として、アナログ電子回路、或いは物理的機械の角度や水平センサーなどの値を組み込みコンピューターやFPGAなどでデジタル的に処理したい場合のサンプリング周波数やオープン・ループ・ゲインのダイナミック・レンジの必要範囲は上述にて説明した範囲をカバーしている必要がある。
下の図に示すように、オープン・ループ系の位相-135度でのループ・ゲイン-15dBを満たす最低極Fp0をデジタル・フィルタで実現する必要がある。
冒頭で紹介したミサイルなどの刻々と変わる本体重量や重心位置の移動に対処して、デジタル・フィルタで実現する最低極Fp0をリアルタイムに変更していく必要がある。
上の図でサンプリング周波数Fsは-135度での周波数Fnoをカーバーするため、シャノンの法則から、
Fs > 2 × Fno
を満たす必要があり、できれば余裕を見て、4倍或いは10倍以上を見ておく必要があると思われる。また、あつかえるダイナミック・レンジも、
オープン・ループの最高ゲイン(直流値)+ 15dB
以上であり、やはり余裕をみて、オープン・ループの最高ゲイン(直流値)+ 20dB 以上は欲しいところだ。
当然のことだが、組み込みコンピューターやFPGAの処理スピードはサンプリング周波数の周期内でなくてはならない。また、ダイナミック・レンジが足りないことで量子化ノイズに-135度でのオープン・ループ・ゲイン-15dB、或いは余裕を見て-20dBが埋もれてはならない。
■オープン・ループ回路の構築上のテクニック
オープン・ループ回路をクローズド・ループ回路から組み上げるには、出力インピーダンスが入力インピーダンスに対して充分低い場所をカットする場所として探すことが肝心だが、高域の周波数まで考えると満足のいく場所は中々見つからないのが実情である。
それでもテクニックとして、フィードバック経路の入力インピーダンスがオープン・ループ回路の出力にとって、無視できない値の場合はフィードバック経路の等価回路をオープン・ループ回路の出力に疑似的に接続しておくことを薦める。
例として、以下の回路図に示すようなオペ・アンプのフィードバック回路の場合、オペ・アンプの出力からのフィードバック系への結線を断ち切り、フィードバック系の入力をオープン・ループ回路の入力とする。
下の図のように、オペ・アンプの出力には負荷として元のフィードバック系の回路(赤枠線で囲んだ部分)を付け足す。これによってオペ・アンプの内部の出力インピーダンスとフィードバック回路のインピーダンスとの分圧がオープン・ループ回路の出力として表すことができ、より一層正確なオープン・ループ回路を構築できる。
<記: 村岡如竹>