専門職以外の者にも提供可能なサービスの民営化に向けた利用者の支払意思額の推定及び事業性分析に関する調査事業
— 多様なサービス提供主体としてのNPO等の自主的活動の支援のために —
調査結果のダイジェスト
(2016年6月24日作成)
1.ボランティア活動への参加可能性と希望する最低限の報酬(p35)
ボランティアの内容ごとに見ると、食事作りのボランティアには39.2%、清掃・洗濯のボランティアには41.8%、買い物・用足しのボランティアには36.7%の者が待遇次第での参加意向を示しており、いずれも無償以外の者の中では1時間あたり800円~999円を希望待遇とする者が最も多数を占めていた。
また高齢者向けのボランティアの中で、買い物・用足しでは16.2%、安否確認であれば23.7%、話し相手では21.4%の者が無償の活動であったとしても興味を持っており、日常生活の延長として負荷の比較的かからないボランティア活動に対しては、潜在的な参加者が一定数いると考えることができる。
図表23 ボランティア活動への参加可能性と希望する最低限の報酬
2.ボランティアの活動しやすい環境の創出(p40)
ボランティア参加希望者のうち、重要視していた者が多かったボランティア環境とその割合は、「ボランティアが勤務内容に関して、上司や管理者にあたる者と気軽に相談できる体制が整っている」で82.8%、「上司や管理者にあたる者は紹介後もボランティアと密に連絡を取り、利用者について事前の話と異なる状況がないか・想定外の行動がないかをフォローする」で80.6%、「ボランティアが実施できるサービスややりたくないサービスを事前に上司や管理者にあたる者がヒアリングしたうえで、それに合わせて利用者を紹介する」で79.8%となっていた。
図表35 ボランティア活動を行うにあたって重要と思うこと
家事援助というと、利用者はお金を支払えば無条件でどのような家事でも実施してもらえると捉える可能性がある。また、実際に、介護保険の生活援助においても本来介護保険で実施できないことまで依頼されるといった事例は多い。このような状況では、ボランティアは非常に苦痛に満ちたものになることが予想される。
また、家事援助のボランティアという言葉を聞き、ボランティアの潜在的な希望者も、家事援助のボランティアがそのような苦痛に満ちたものであるとイメージすることで、ボランティアへの参加を躊躇している可能性もある。そして、家事援助のボランティアを知らない一般の人は、家事援助のボランティアを実施している人の動機というものを、そもそも理解できていない可能性もある。
自立援助の考え方については、各インタビュー先で、様々な考え方に触れたが、基本的には、「利用者ができないことだけを、ボランティアが行う」という考え方である。これにより、利用者はボランティアに対して感謝の気持ちが生まれ、ボランティアはその感謝の気持ちを受け取ることで、ボランティアをする喜びが生まれると考えられている。
図表4 ボランティアの動機について(インタビューから)
事例①インタビューから
活動申請者は最初に1000円を払わねばならず、対価の謝礼金が低いことも知っており、金銭目的で応募しない。よって人に喜んでもらうことの価値を大事にする活動者が多い。そのため事務局は遠慮せず仕事を頼むことが責務だと考える。社協は会員を集めるだけでコーディネートをせず仕事を頼んでいない。そのため活動者のモチベーションが生まれていないと考えられる。活動者にとっての報酬はむしろ利用者からの感謝の言葉であり、そのために大変な仕事が頼まれるべきと思われる。心の宝物がそこで得られると活動者には説明している。
よって謝礼金の意味はお金ではなく、無償でないということを示すことによる利用者側にとっての精神の平等感である。無償であるとただ一方的に援助されているだけと感じられる可能性がある。
(報告書本編は以下のPDFファイル「H24_EBP老健事業報告書.pdf」になります)