6月の講座

Post date: Jun 24, 2010 2:24:57 PM

6月26日(土)、小池昌代先生を講師にお迎えした講座が開かれました。

受講生から提出された三篇のテキストに、小池先生は丁寧な講評を加えてくださいました。

和やかな雰囲気の中、これからの小説や詩の表現について、電子書籍の普及による技術的な進化も視野に入れたお話を、聞くことができました。

◆受講生によるルポ

http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20100626

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本日は、仙台文学館で小池昌代先生を講師に迎えた「小説家・ライター講座」を受けてまいりました。

この講座では、受講生から提出されたテキストを教材として使っています。今回のテキストの中には、やや構成がわかりづらいものがあったのですが、小池先生はその「わかりづらさ」に、惹かれるものを感じたそうです。

文章を書く場合、まず第一に「読みやすい」文章を心がけるのが当たり前ですが、そこにとらわれない、読みやすさのテンプレからこぼれる部分に、その人の個性があるというんですね。この辺は詩人でもある小池先生ならではの感覚で、いつも参考になります。

また、短歌や俳句などの定型詩は、その型が変わることによって、表現される感覚も変わってきます。近年は電子書籍の普及による出版業界の変容が話題になりますが、創作者の視点から見た電子書籍は、紙の本ではできない表現が新たにできるようになる、魅力的な媒体でもあるわけです。

たとえば、小池先生の最新作『わたしたちはまだ、その場所を知らない』は詩を朗読する中学生たちの話です。ここに朗読の音声を挿入すれば、文字だけでは表現できない感覚が生まれてくるんですね。

これまでにも、活字の本と音声を組み合わせたカセットブックなどが存在しましたが、本を読みながら再生機器を操作するのは面倒でした。それが、電子端末で本を読むことになれば、ひとつの機器で楽しめるわけです。そうなると、作家に要求される資質や技術も変わってくるでしょう。かつてマーシャル・マクルーハンが提唱した「メディアはメッセージである」というメディア論が、ここにも生きているということですね。

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◆小池昌代(こいけ・まさよ)氏

詩人・小説家・エッセイスト

1959年東京生まれ。津田塾大学国際関係学科卒。

1997(平成9)年詩集『永遠に来ないバス』で現代詩花椿賞、2000年詩集『もっとも官能的な部屋』で高見順賞、2001年『屋上への誘惑』で講談社エッセイ賞、2007年短篇「タタド」で川端康成文学賞、2009年詩集『ババ、バサラ、サラバ』で小野十三郎賞を受賞。その他に小説作品として『感光生活』『ルーガ』『裁縫師』『ことば汁』『転生回遊女』『怪訝山』がある。