つくりびとの住まう村構想より 〜ものづくりから見る、自然回帰の生き方の提言〜

投稿日: Apr 04, 2010 8:54:1 AM

2009年にスタートした新潟県妙高市小濁地区での地域おこしプロジェクト「アルネ小濁」。

自然回帰の生き方のビジョンについて、「やきもの」(つくることとアート)にフォーカスした提言をまとめた文書について解説する。

なんぶルネサンス提言 「つくりびとの住まう村」構想

(2009年4月)

《序文》

アルネは、「アートが生まれる」=すなわち人が自然に表現できることが人や社会を豊かにする事を示そうというプロジェクトです。

「つくりびとが住まう村」構想はそんな環境を理解する仲間が住み合い、プロジェクトを実現に向けるプランです。

1.本来のバランスを失ってしまった現代

自然に逆らわず、自然とともに生活してきた過去の生活があった。

第一に自然があり、そこに存在する植物、虫、動物、そして人間。自然の驚異の中でいかにして生きぬくか。そして、いかにして暮らしやすく、豊かな生活を営むか工夫して進化してきた。

環境のサイクルを「自然の都合」と呼ぶ。人間の自己実現を「自分の都合」と呼ぶ。自然の中で生きて生活していくことを「社会の都合」と呼ぶ。(図左の流れ)

しかし、現代の形(図右の流れ)は、経済重視の仕組みにより本来の順番を崩している。社会の都合を優先し、続いて自分の都合、自然の都合はそれに当てはめるようになってしまってはいないだろうか。

キーワードは「時間」。

時間=コスト。そのため、考える時間、消化する時間を失い、社会の都合によって「決めつけられてしまっている」ことに気付かず過ごしている。自ずと社会通念の価値観によって、ものの価値を決めつけざるを得ず、環境のサイクルを乱す結果となっているのではないか。

2.アンバランスによって見失いがちなもの

心で感じ、表現するもの・・「おいしい」「美しい」「嬉しい」「幸せ」「ありがとう」は文字や数字で表せない。評価をしずらいものは短い時間の中で、感じたり、表現したり、伝えたりがさらに難しくなり、共有する機会も減り気づきが薄れる。

3.農山村での暮らし(滞留、滞在、居住)により学ぶ

人はそれぞれの時計を持っていると思う。同時に人間本来の生き方のリズムもあるはずだ。

農山村では、農業林業、四季の気候、水や火の環境と近い関係にあり物理的に人間の行動が制約を受け、自然の都合の中で生きている事が実感できる。滞留より、滞在、居住ほどその体感度が大きい。

4.暮らしの中で、つくることの価値を見出す

自然との暮らしの中で気づくことは、同じ方法でパターン化されたものが通用しにくいということだ。つまり、自ら考えて工夫すること、知恵を学ぶことにより創造性が養われる。創造によって新しい価値観が生まれる。ただ単に用途のために作られた物と、表現物の差に気づくことにもつながっていく。

5.暮らしと最も親密な造形=「やきもの」

やきものは、昔から調理器具、食器、保存容器、装飾品として存在した。材料も粘土や植物で、薪を使い炎で焼く。暮らしに最も身近なものであった。つくるテーマの一つとして提案したい。

6.人間にとってアート(表現)とは何であるか導く

現代において、見失われてしまったゆっくりとした時間をとり戻しつつものづくりをすることで、生活のために必要な”もの”と自分の関係に、新たな接点が生まれるはずである。それにより、今まで感じることができなかった新しい価値観を生み、未来の社会に向けて、表現することの重要性を導き出すことができると確信し、つくりびとの住まう村構想を提言する。

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