原子力産業は食品にまで放射線を照射する気だ

内閣府の原子力委員会と全日本スパイス協会は、野菜を含むスパイス94種類への放射線照射を認めるよう厚生労働省に働きかけてきました。

厚生労働省は民間の三菱総合研究所(以下、三菱総研)に約3千万円(29925000円)を払って資料を集めさせていたのですが、ようやく最近報告書ができ上がったようです。ところが、照射食品に反対する消費者の意見が報告書には記載されていないのです。厚生労働省は三菱総研の報告書を基に薬事食品衛生審議会に諮るようです。消費者団体は厚生労働省と審議会に反対の申し入れをしましたが、照射食品が許可されるか、されないかの瀬戸際になりました。ぜひ皆さんも反対の声をあげてください。そして照射食品反対連絡会の運動に参加してください。

照射すると新しい危険な物質ができる

放射線を照射すると新しい化学物質ができるのが問題となります。特に「シクロブタノン」と呼ばれる物質が問題になっています。ネズミに半年間与えると大腸に急激に大きなガンがたくさんできることをフランスのパスツール大学が報告したからです。たった半年間の短い実験ですから、きちんと慢性毒性をすればほかの臓器にもガンを作る可能性があります。また、妊娠したネズミで子どもへの影響も見る必要があります。

こうした実験を厚生労働省に行うよう申し入れたのですが、厚生労働省は食品安全委員会が必要といえば考えるというのです。でも、現在の食品安全委員会は厚生労働省が準備した資料の範囲内で照射食品の健康評価をするのですから、安全となってしまう可能性があります。こうした欠陥資料で審議されてはたまりません。この欠陥を承知しながら照射食品を諮問するかしないかを審議していくことに反対の声をあげる必要があります。

ニーズ調査の評価基準を明確にし、審議前に公表すること

照射食品反対連絡会は、参加する消費者団体等が分担して5万人に照射食品のアンケート用紙を配布しました。回収できたのは11,700枚でした。「照射に反対しますか」という問に10,371人(88・6%)が反対と回答しました。「反対しない」が182人(1・56%)でした。多くの消費者は照射食品に反対しています。

また、38県の学校給食で働く栄養士、調理員への調査では286人(栄養士145人、調理員125人 その他16人)が「食品に照射することについてどう思いますか」の問に「使ってもよい」と回答した人は0人でした。「使うべきではない」と回答した人は235人(82・1%)でした。また、「食中毒防止にはどのような方法がよいと思いますか」の問に「放射線照射」は1人(調理員)、「殺菌・消毒剤、食品添加物などの薬剤使用」は16人(5・6%)、「加熱やコールドチェーンなどの従来の方法の活用」が183人(64%)、「ハサップ(照射しない宇宙食を作るために開発された方法)」が154人(54%)でした。このように学校給食現場の人たちも照射食品に反対しています。

原子力産業だけが推進する照射食品

2004年、世界の状況について食品安全委員会が調査しています。報告書は、「欧州では一時推進されたが、今は照射食品は減少し、輸出用や外食産業など直接自国の消費者の目にふれないところで少し使われ、大手スーパーや食品産業も照射食品を使うことをさけている。照射食品拡大の見通しはたっていない」(要旨)と報告しています。

米国でも市場に出回っているのは、スパイスと冷凍牛ひき肉で(その流通量は牛肉市場の1%以下)、それ以外の照射食品は現在ほとんど流通していないと報告しています。

米国食品医薬品庁(FDA)も「消費者は、照射食品に対して一般的には否定的な見解を持っている」、農務省は「正直に言って、米国内の消費者は照射食品に対して否定的な意識が強い」と受け入れられていないことを報告しています。

米国の消費者の反対は強く、ハンバーグ用のひき肉を照射してきた会社(Surebeam社)は倒産しました。米国でも照射食品は受け入れられていないのです。

報告書は「スパイスの認可が発端になり、それから他の食品へ広がっていった」と照射スパイスが拡大のきっかけを作る食品であることを指摘しています。スパイスはまさにトロイの木馬です。

日本に押し寄せる照射食品

日本で照射食品が許可になるようだという動きの背後で、海外からは違法な照射食品が日本に入ってきています。昨年からすでに4件も違反が起きています。キッコーマンが米国から輸入した健康食品原料(ソイアクト:大豆イソフラボン)、ドイツの日本企業が輸入したパプリカへの照射、大分の会社が中国から輸入した乾燥しいたけ、名古屋の健康食品会社がペルーから輸入したマカへの照射が判明しています。日本に輸出するとき照射して輸出すれば防腐や鮮度保持ができるので利益が出るのです。

また、食品にあてられた線量を測る方法がないため、ドイツ企業のように「当該パプリカには照射していない」と全面否定するという事態が起き、日本での摘発は宙に浮き、監視も管理もお手上げという実態があります。

表示をすれば消費者が選べると言うのは推進派です。これだけ食品の偽装や不当表示が氾濫している状況では、まったく説得力はありません。

照射食品反対の声をあげてください。照射食品の推進の動きを止めましょう!! 原子力の技術で生まれた照射食品に「NO!」と言いましょう!!


放射線照射による食品衛生法違反事例(1996年~2008年)

厚生労働省「輸入食品監視統計」等より作成