035 軌跡を辿る

(2002年5月18日作成、2012年6月11日修正)

みんなが人生って呼ぶものが

もし長くて暇で退屈に満ちたものなら、

たまには恋に落ちてみたり

何かを、誰かを、好きになってみるのもいいかもしれない。

退屈だってことを考えなくていいから。

暇だってことを考えなくていいから。

・・・

その人は何かを求めて歩いていた。

私はその人が歩くのを見たくて後を追った。

でも、

その人が何を追いかけているのかはよくわからなかった。

一緒に歩いているだけで満足だった。

満たされた。幸せだった。

あるとき、私はその人が何を追いかけているのかを

かいま見た気がした。

あれを追えばあの人と同じものを追えるのだろうか。

同じ気持ちになれるのだろうか。

あの人の心をトレースできるのだろうか。

歩いている意味が近づくのだろうか。

私はかいま見えたものを追おうと思った。

そして次第にそれを追うのに夢中になっていった。

気がついたらあの人はいなかった。

残ったのはあの時に一緒に歩いたという事実。

共有したという事実。

それだけだ。

そう。

それだけ。

人生ってほんとそれだけ。

それだけが全てで、全てがそれだけ。