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(2003-06-27 頃作成、2004-08-02頃修正、2012-06-04頃修正)

心の中で、めちゃくちゃに恥ずかしいと思いながら言った。

「抱きしめて欲しい」なんて言ってしまった。

心と体が悲鳴をあげて、

ばらばらになりそう、

というのは事実なのだ。

なんで精神的に辛いときに心臓を握り締められるように、

肺を外から締め付けられるように、

感じられるのだろう。

それはそういう身体の機能?

心だけが苦しいだけじゃ現実感がなくて、

身体まで苦しめるの?

体が震えて寒い。

泣き出しそうな‐現に涙も出ているのだが‐気持ち。

全てをぶち壊して、

死んでしまいたい感情だって嘘じゃない。

でも、

こんな苦しいんだから、

秘めていた想いもドサクサにまぎれて暴露してしまえ、

という変な自分がいて、

それを恥ずかしい、

と思う自分もいる。

ひとまず一区切りしたんだから、

おまけというか、ご褒美というか

デザートが欲しいというか、って・・・

あぁ・・・かなり恥ずかしいこと考えている。

心の中の自分の一部は、

赤面して前を見ることもままならない。

涙を流しなら激昂するときも、

いつも冷静な自分やずうずうしい自分が

私の言動・振る舞いをじっと見ている。

「変なの」って、自分でも時々思うけど。

「まぁ少し変なのかな」って、少し納得するけど。

別に「それがなんなの?」って、感じもするし。

「悪い?」っていう風にも思ってしまうし。

「どうでもいいじゃないかよぅ」って、気もするしね。

苦しい苦しい、これもほんとなんだ。

分かって欲しい。

けど絶望的に分かってもらえない、と知っている。

あぁ・・・、無理な願いをしている。

「私の心を分かって」なんて。

無理なんだ。

知っているよ。

傷は自分で癒すもの。傷は勝手に癒えるもの。

同時に3つくらいの感情か思考か妄想か、

分からないけど脳の中で処理されているみたい。

分けて認識できるものが3つくらいなのかな?

脳はもっと複雑だろう。

でも熱暴走しているみたいに、

実際熱を持っているようで熱くてくらくらするんだけど、

ぼーっとしてしまうようなところもある。

彼は黙って抱きしめてくれた。

そして片腕で髪をゆっくり梳いてくれた。

抱きしめてもらうと、

少し苦しみが和らいだ気がした。

本当に和らいだのかもしれない。

人間の思考は体が元になっているんだし、

体に刺激・変化があれば

心にも影響を与えるのは当たり前だよね。

でもそんなことを想定・期待して

抱きしめてもらうことを望んだわけではないのだ。

細切れになりそうな意識を支えたくて、

ばらばらになりそうな心を

ばらばらにならないようにしたくて、

止まれず求めてしまった。

打算はあるのだけど、心には正直。

あぁ、でも恥ずかしいこと言ってしまった。

私の人生の恥ずかしい台詞ベスト3に堂々入るんじゃないかな。

まさか、私がそんなことを言う立場に立とうとは誰が予測できたかしら。

少なくとも私は予測できなかったね。

もう、その恥ずかしさでさっきまでのことはどうでもよくなる、

というほどでもないけど、顔の皮膚が熱を持っているのがわかり、

明るいところで顔をみたら真っ赤だろうなって思ってみたりする。

やるべきではないことをしてしまったのが、恥ずかしいことを彼に言ってしまったことの引き金だ。

内在する動機はいままであったとはいえ、「抱きしめて欲しい」なんて今言う事か?って気もする。

やるべきではないこと、というのは・・・。

わたしは殺さなくてもよい人を、結果的に殺してしまったのだ。

能動的に殺したと言うよりも、助ければ死ななかったのに、わたしはなにもしなかった。

見殺しにしたといってもよい。

いつも「他の道はなかったか?」って考えるけど、

道は常に一つで抗うことができるとも思えなかった。

殺しても殺さなくても後悔するようにできていたかもしれない。

新たに知った事実は絶対だと信じていた私の正しさを揺るがすもの。

今まで仲間に当然として求めていたものを、自分がそもそも失っていたことに気がついたこと。

真実の重み。

心臓が握りつぶされるようだ・・・。

目をギュッと瞑る。

もうすこし生きていける、

呼吸を落ち着かせて、

ゆっくりと息をはき、

ゆっくりと吸う。

彼の温かさ、

匂いに、

心が安らぐ。

思えば、彼とはずっと一緒に旅してきたんだね。

いつも私を支えてくれたんだね。

熱い涙。

また心の中に別の感情が誘起される。

悲しみ、

痛み、

苦しみ、

安堵感、

虚脱感、

安心感、

希望、

絶望、

憎しみ、

欲求不満、

笑い、

その他言葉にならない想いたち。

心って、

脳ってどうなっているのかしらって思う。

もう本当にごちゃごちゃ。

彼の温もりを感じながら

そのごちゃごちゃが

ゆっくりと緩和していく過程を

感じていようと思う。

これが何かが終わったってことなのかな。

涙が頬を伝う。

ぎゅっと私は彼を握り締め返す。

こう、

力を出すと、

なんとなく安心な気がして。

抱き枕なんかとは比べ物にならないほどの。

明日はきっと、

いや遅くてもあさってには自分の足で立っていける。

進むことができるかも。

今は、休みが必要だけど。

そんな最後の確認をして、

わずかな涙とわずかな笑みとともに、

私はゆっくりと眠りに落ちていった。

おやすみなさい。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

その後・・・

朝、目が覚めて・・・

一瞬で眠る前のことを思い出し・・・

とても恥ずかしい思いが・・・

でも・・・

とてもすっきりしていた・・・

体はまだ少し重いけど

手を握り締めてみる・・・

あぁ、私の体だ

私が動かすことができる

・・・

深呼吸

・・・

もう一度、目を閉じる

私の足は歩きたがっている?

もちろんそうだよ。

もう一度深呼吸、

目をあけ、

飛び起き、

ちょっとした身づくろい、

顔を洗って、

髪を梳かしキュッと後ろで結える。

単純で

複雑で

現金で

無欲で

怠惰で

勤勉で

明るく

暗い私。

後悔してもいいと思う、

それを次に活かせるなら。

活かす為には、

活かそうと思わないと活かせない。

目的は達成したというか、

逸したというかよくわからない。

私を昨日まで歩ませていたものは

なくなってしまったのだ。

少しの残余はあるかもしれないけど、

それは些細なもの。

新しい目的は?

私は静々と歩いていく。どこへ?

これ以上言わせないで欲しいな。

恥ずかしいから。