近年、日本のエネルギー自給率は10%程度で推移しています。また、電気料金やガソリン価格の高騰など、私たちの生活とは切っても切れないエネルギー問題について、あらためて考えさせられる機会が増えてきました。
当研究室では、変動性再生可能エネルギーを最大限活用するカーボンニュートラル社会を想定して、太陽光・風力発電などと協働する小型原子力システムの基礎研究に取り組んでいます。電力需給のバランスと二酸化炭素排出削減を達成するエネルギーミックスを実現させるため、原子炉にはベースロード電源としての従来の役割に加えて、負荷追従電源としての新たな役割も必要です。原子炉には固有の反応度フィードバック特性が備わっているため、これを活かした原子炉の自律的負荷追運転法の特性を、通常の負荷追従運転法の特性と比較しながら研究しています。
キーワード
原子炉動特性解析、原子炉熱流動解析、負荷追従、コジェネレーション、小型モジュラー原子炉、マイクロリアクター、原子炉シミュレーター、可視化
研究テーマ例
1.再生可能エネルギーと協働する多用途な小型原子炉システムの概念研究
2.単純な原子炉モデルに基づく原子炉シミュレーターの開発
研究業績
福島第一原子力発電所2号機
東京電力 燃料デブリポータルサイトから引用https://www.tepco.co.jp/en/decommission/progress/fuel-debris/index-e.html
東京電力福島第一原子力発電所では、溶融した核燃料と構造材が混ざり冷え固まった燃料デブリを損傷した原子炉格納容器から取出す作業が計画されています。この作業は、福島第一原子力発電所廃止措置の中核工程です。燃料デブリは通常の核燃料とは組成・形状・分布が根本的に異なるため、作業時の未臨界確保と万が一の臨界到達への備えも不可欠です。
当研究室では、燃料デブリ取出し作業員の安全確保方策の確立に必要な基盤技術として、燃料デブリ多粒子体系に特化した臨界影響解析技術を国プロ共同研究や産学連携共同研究の枠組みで開発しています。
キーワード
臨界安全解析、空間依存動特性解析、MIK2.0コード、MVP、Serpent、確率論的幾何形状モデル、中性子輸送モンテカルロ計算、ハイパフォーマンスコンピューティング、燃料デブリ、福島第一原子力発電所廃止措置
研究テーマ例
1.積分型動特性モデルに基づく空間依存動特性解析コード Multi-region Integral Kinetic コード ver. 2.0(MIK2.0)の開発(文部科学省・JAEA CLADS英知事業 2019-2023)
2.MIK2.0コード・MPS法の弱連成とハイパフォーマンスコンピューティングを駆使した燃料デブリ取出し作業の臨界影響解析(産学連携共研2024-)
研究業績
直接充電型放射線電池における電子輸送
放射性廃棄物(いわゆる「核のゴミ」)を社会に役立てる方策として、放射線のエネルギーを電気に変換する電池に着目しています。このような電池は、エネルギー変換方式に応じて主に2種類に分類されます。
1.熱電エネルギー変換
・RTG
2.直接エネルギー変換
・半導体を用いるβ・γ電池など(太陽電池と同じ原理)
・直接充電型放射線電池
当研究室では、RTGやβ・γ電池よりも高い変換効率が期待できる直接充電型放射線電池に着目し、これを地下空間や深海において活躍するインフラ設備のための長寿命・低電力電源として応用する技術を開発しています。
キーワード
放射線電池、原子力電池、RTG、β電池、γ電池、直接充電型放射線電池、直接エネルギー変換、粒子輸送モンテカルロ計算、PHITS、EGS、Geant、放射性廃棄物
研究テーマ例
1.直接充電型放射線電池の概念設計(科学研究費助成事業基盤研究(C)2025-2028)
2.放射性同位元素を活用した各種電池の変換効率解析手法の開発
研究業績