Research theme / data
研究内容について紹介します
研究テーマ1: サンゴと褐虫藻の細胞内共生関係の解明
下の図はサンゴと褐虫藻の共生関係について説明した図になります。サンゴの触手に茶色く見える点が共生する褐虫藻です。サンゴは褐虫藻に窒素やリンなどの老廃物を提供し、褐虫藻の増殖を助けています。一方で、褐虫藻はサンゴ体内で光合成を行い、光合成産物であるグルコースや、グリセロール、アミノ酸 などをサンゴに提供することが知られています。そしてサンゴは褐虫藻から得られる栄養を骨格形成や粘液の合成に利用しています。サンゴと褐虫藻の共生関係は、互いに利益のある相利共生関係であると考えられています。研究室ではこの共生関係の仕組みを分子レベルで明らかにすることを目標に研究をしています。
共生関係を明らかにするために、褐虫藻が共生したサンゴと共生していないサンゴを飼育して実験に使用し、褐虫藻が共生することでサンゴ体内でどのような変化が起きているのかを調べています。下の写真が実験に使用しているサンゴです。野生のサンゴは飼育が難しく、実験室内では扱いにくいため、また、褐虫藻がいない非共生状態での維持が難しいため、本研究では褐虫藻を持たない生まれたばかりのサンゴを使用します。
ミドリイシ属のサンゴは受精卵の状態では褐虫藻が共生していません。そのため、褐虫藻がいない海水中で飼育をすると、褐虫藻を持たないサンゴになります。このサンゴに褐虫藻培養株を共生させて、非共生状態と比較することで、褐虫藻の共生過程や共生による効果を調べています。
研究テーマ2: 褐虫藻各タイプの特徴の解明
褐虫藻(Symbiodiniaceae family)には7つの属(Symbiodinium, Breviolum, Cladocopium, Durusdinium, Effrenium, Fugacium, Gerakladium)を含む様々な遺伝的タイプが存在します。*以前はSymbiodinium 属とされ、9つの遺伝的タイプ(clade A~I)が同定されていました。
全ての褐虫藻がサンゴに共生できるわけではなく、特定の褐虫藻のみサンゴに共生することができます。サンゴで多く検出されるのは、Cladocopium属の褐虫藻です。しかし、水温が高い夏季や白化現象がおきた後のサンゴでは、Durusdinium属の褐虫藻が検出されることから、Durusdinium属は温度ストレスに強い特徴を持つのではないかと考えられています。
これまで、サンゴにCladocopium, Durusdiniu, Symbiodinium属の褐虫藻を共生させて、それぞれの褐虫藻が共生したときのサンゴの応答を調べています
褐虫藻が共生することで、サンゴの成長速度が速くなり、サンゴの蛍光色素の発色が変わるなど、共生により起きる多様な変化を見ることができます。また、様々な褐虫藻を共生させてきたことで、共生する褐虫藻の種類によって、サンゴの成長やストレス耐性に違いがあることがわかってきました。また、サンゴ体内での褐虫藻の増加速度が褐虫藻の種類により異なることもわかってきました。
サンゴ体内での褐虫藻の増加速度は褐虫藻の種類により異なります。Cladocopiumはdurusdinium属よりもサンゴ体内での増加のタイミングが遅れる傾向があります。
サンゴで多く検出されるCladocopium属の褐虫藻は、サンゴ体内での増加速度が遅く、共生後のサンゴの蛍光色素の発色が強いことがわかっています。また、Durusdinium属の褐虫藻が共生したサンゴは、ストレスに強い傾向があります。
研究室では、異なる褐虫藻が共生したサンゴのストレス耐性の違いやサンゴの白化現象の過程を明らかにするために、サンゴにストレスを暴露して人工的に白化させ、白化途中の変化を調べています。
これまでの実験結果から、Durusdinium属の褐虫藻が共生したサンゴは、ストレスに強い傾向があることがわかっています。研究室では、異なる褐虫藻が共生したサンゴのストレス耐性の違いやサンゴの白化現象の過程を明らかにするために、サンゴにストレスを暴露して人工的に白化させ、白化途中の変化を調べています。
研究室での主な実験手法:上記のような飼育実験、RNA-seq, Real-time PCRなどの遺伝子発現解析、組織学的解析など
その他のテーマ(解説文準備中)
・サンゴ骨格形成の仕組みの解明
・サンゴの硫酸イオントランスポーターの機能推定
・サンゴの給餌が高温ストレス応答にもたらす影響