仙台 ゆりが丘の家」2020~2021

冬の実測レポート 「南東北の高断熱住宅 第4号より」

For General Users vol.3

高断熱高気密住宅専門の雑誌本『南東北の高断熱住宅第4号』に掲載されている特集記事です。

 2020年5月に発刊した『南東北の高断熱住宅第3号』巻頭で特集したQ1.0住宅『ゆりが丘の家』は、筆者の自邸である。8ページにわたり設計の概要やプロセス・熱計算プログラムQPEXを使った省エネ設計手法等について紹介したところ、読書からの問い合わせが多く集まり、多くの一般ユーザーが来訪し、見学されています。

 そこで、2021年5月発刊の『南東北の高断熱住宅第4号』では、2回目のとなる冬(20年~21年)の冬の暮らしについて、紹介したい。住宅の概要については、雑誌第3号あるいは当HP内の、ユーザー用その1やその2を参照してください。

ゆりが丘の家_動画解説_顔写真入り.mp4
動画解説(15min)

◆キューワン住宅の快適アップデート

 2020年~21年の冬(以降20年冬と表記)は、前年よりも気温が大幅に低く降雪も多い、近年では、最も寒さの厳しい年の一年でしt。

 初年度の暖房灯油消費量は、QPEXでの設定室温通り20℃一定で生活し、ほぼシミュレーション通りの実測結果が得られたことは先に紹介済みです。そこで、今年は、厳冬になる長期予報も見越して、設定室温を1℃上げ、試験的に21℃(19℃になったら点火・21℃になったら消火するエコモード運転)で暮らしてみることとしました。言うまでもなく、室温を1℃上昇させるためのエネルギーが余計に必要になります。消費量は前年度の同3か月(112ℓ)と比較して、35ℓ増となりました(表1参照)。低い外気温の影響も考えるとほぼ試算通りの想定内です。本来設定室温を上げて生活することは省エネに逆行する行為です。

 でも、昨年の生活での実感として、家事などで動いている日常では全く感じませんが、長時間静かに読書を続けたりするといった時、薄い上着を羽織りたくなる感覚もあったため、設定を変更しました。結果、室温たった1℃の違いではありますが、20年冬は、それをほとんど感じることはなく、快適性の安心感が更に増し、冬の暮らし方が確立したと思います。

 低断熱な木賃アパートから、高断熱に移ると、所謂『暖かさ』の質が変わるので、よくあるケースです。アパート生活で行っていたのは、実は暖房ではなく採暖だったとわかります。

表1 20年冬の暖房灯油消費量

◆1℃高くして30%増の持つ意味

 一方、昨年同期と比較した灯油の消費量は35ℓの増加、率にして約30%です。(146ℓ:114ℓ)

 これは室温を1℃高くしたことと外気温が昨年より低かったことに起因します。ただ、金額にすれば3,000円であるから多くはありません。これがもし、省エネ基準レベルの住宅だったら年間5万円以上はかかるので30%の増加分は15,000円になります。こうなると大きな金額アップです。性能が高いということは何かにつけて有利に働くことがわかります。

◆暮らしデータ

 20年冬の3か月間灯油消費量と平均外気温をまとめたのが、グラフ1です。高い断熱性能によって自然温度差分の室温分のエネルギーを持っているため、暖房が必要な分は、赤色の面積分で済みます。省エネ設計は即ちこの面積を小さくする事に他なりません。加えて、日射の多い日では、暖房が少なくて済んでいることも読み取ることが出来るでしょう。

 室内の温湿度環境は、12月20日から1週間の様子をグラフ2で示しています。温度について(グラフ2-1)は、日中外気温が高く日射があるときは、ストーブが停止し、日射によってのみ室温が上昇していますが、ほとんどが不在です。24時間連続暖房とは言え、日中は自動的に無暖房になってしまうのがキューワン住宅である。湿度(グラフ2-2)はおおむね40~50%で推移しています。入浴後、2階のサニタリー湿度が跳ね上がりますが、オープンなプランのため、すぐに水蒸気は拡散して平準化します。ちなみに浴室の換気扇は入浴後停止して開放しているだけです。尚、湿度が高めの日は洗濯室内干しを行った日です。生活で自然発生する水蒸気を積極的に利用して、加湿を行うと乾燥感はほとんど感じません。

南面の大きな窓からの日射による明るい室内と暖房エネルギー削減の一挙両得の気持ちの良い吹抜リビングである。

◆さいごに

 まずはきちんとした高断熱住宅が基本ですが、さらに高性能はQ1.0住宅にすると、住まい手は、極めて自由に自分で快適を求めて、豊かな暮らしができるようになります。これから高断熱住宅を建てる方には、是非、我慢から解放された十人十色のキューワン住宅を手にして欲しいとおもいます。