アブストラクト

アブストラクト

深澤知山形大学):New examples of tangentially degenerate curves 

空間曲線に対して, 一般点での接線が再びもとの曲線と交わるとき, その曲線は tangentially degenerate であるという. 標数零のとき, このような曲線は存在しないであろうと予想されるが, 初めて証明を与えたのは楫元氏であり, 1986年のことである. さらに, これは Terracini が 1932年に提出した問題であった. 楫氏の結果には"unramified"という仮定が必要であり, その後にいくつか一般化が得られているが, tangentially degenerate space curve の非存在は現在でも未解決である (即ち, 90年解かれていない). 一方, 正標数においては, この種の例はたくさん存在する. その原因のひとつとして, 曲線上のガウス写像を非分離にすることにより, 接線に関して正標数特有の挙動が可能であるということが挙げられる. 1994年, E. Esteves と本間正明氏は「ガウス写像が分離的であるようなtangentially degenerate space curve」(以下,(*)) の例を初めて構成した. その後27年間, この例以外には, (*)の例は知られていなかった. Esteves-Homma の例は, "non-classical automorphism" の存在を利用しているとも考えられる (この概念は Levcovitz により 1991年に導入されている). 講演者はこの "non-classical automorphism" に注目し, (*)の構成方法を見出した. これにより, Artin-Schreier 曲線のかなり広いクラスに対して, (*)の空間モデルの存在を証明できた. 付随して, 一般点での接線との交わりが接点以外に2点以上あるような非特異空間曲線の例を構成することができた. 本講演では, これらの構成方法について報告したい.

那須弘和(東海大学):楕円曲線束の構成とエンリケス・ファノ三様体のヒルベルトスキーム

マンフォード(1962)はP^3内の非特異連結曲線のヒルベルトスキームが生成点において被約でない既約成分をもつことを示した。この例は向井-N (2009)において、多くの滑らかな単線織三様体のヒルベルトスキームの場合に一般化されたが、近年エンリケス・ファノ三様体(EF3)と呼ばれる特異ファノ三様体のヒルベルトスキームに対してもマンフォードの例の類似の存在(非被約成分の例)が示された。その証明の一つの鍵は、EF3の非特異ファノ二重被覆に含まれるあるK3曲面上の楕円曲線束の存在を示すことにある。本講演ではEF3の種数gがg=6,9,13の場合にそのような楕円曲線束の具体的構成について紹介する。

岸本崇(埼玉大学)Forms of smooth prime Fano threefolds of degree 22 with infinite automorphism groups

The smooth prime Fano threefolds of degree 22 form a moduli of dimension six, however the ones with infinite automorphism groups are known to be very few. Indeed, Kuznetsov-Prokhorov-Shramov classified all of them by an essential use of the deep results on Hilbert schemes of lines and conics on such Fano threefolds. In the talk, we will mention a completely self-contained alternative proof for this classification depending on some specificities of the smooth quintic del Pezzo threefold and an explicit description of the normalization of certain non-normal hyperplane sections on it. This is based on the joint work with Adrien Dubouloz and Kento Fujita.