・松井 紘樹(徳島大学)完全導来圏のスペクトラムと代数多様体の復元問題
与えられた代数多様体Xの完全導来圏からXに関する情報をどの程度復元できるかと言う問題は,双有理幾何学において主要な問題の一つである.2005年,Paul Balmer氏はテンソル三角圏に対して「Balmerスペクトラム」と呼ばれる環付き空間を構成し,それを用いてテンソル三角圏を幾何学的手法で研究するという理論を提唱した.その応用として,完全導来圏のBalmerスペクトラムがもとの代数多様体と同型になることを示し,代数多様体が完全導来圏からテンソル三角圏構造を用いることで復元できることを示した.しかしながら,テンソル構造は非常に強い構造のため,代数幾何学へ応用には困難が伴う.例えば,代数多様体の完全導来圏の間のFourier-向井変換は一般的にテンソル構造を保たず,Balmerの理論をFourier-向井対の研究に直接用いることはできない.本講演ではBalmerの理論の拡張として一般の三角圏に対してテンソル構造を用いずに環付き空間を構成し,その応用として種々の復元定理に対する別証明を与える.