物理学の研究には様々なテーマがあります。その中の一つに、力の統一という大きなテーマがあります。自然界には現在、電磁力、強い力、弱い力、重力という4つの力が存在することが知られています。この4つの力を統一的に記述できる理論の探求が量子力学誕生後より盛んに行われています。量子力学はミクロな世界を支配する力学法則として知られており様々なミクロな現象を説明してきました。
一方で、重力はマクロなスケールで、あらゆる物体に作用する普遍的な力です。では、重力と量子力学はどこまで整合的なのでしょうか?量子力学が検証されている領域はng(ナノグラム)程度までです。しかし、重力はそれよりも約6桁程重たいmg(ミリグラム)程度です。すなわち、この6桁の間は両者(量子力学と重力)が成立するか実験的に明らかとなっていません。重力と量子力学を融合した理論は量子重力理論と呼ばれています。量子重力の効果は、ブラックホールの中心付近や初期宇宙などの非常に小さな領域(プランクスケール)を考える時に、顕著に現れると期待されています。
私は、この重力に由来する量子効果が実験室(よりも少し高エネルギー)で現れないか、現れるとしたらどのような効果か、という観点で研究を行いました。以下、博士課程でメインで取り組んでいた研究テーマとその解説を以下ざっと掲載します。
⼒の量⼦⼒学的性質を実際の実験で検出するための理論模型の構築を⾏いました。特に、今後到達可能と考えられている mg スケールの巨視的物体間の量⼦もつれ⽣成や量⼦制御の理論模型を構築しました。振り⼦(機械振動⼦)と光が相互作⽤する実験系を想定し、[6]では、2つの懸架鏡間の量⼦もつれ⽣成が可能であることを⽰しました。
更に[4,5]では、[6]の模型の鏡を更に精密にモデル化しました。これにより、鏡と懸架線の内部⾃由度や空気抵抗に由来する揺動⼒を含めた理論模型の構築に成功しました。巨視的な振り⼦の量⼦制御理論の構築により、重⼒の量⼦⼒学的性質を検証することができるようになると期待しています。
準備中
記念すべきデビュー作。リンドラー時空とカスナー時空と呼ばれる時空中の重力波の量子的な側面を調べました。特殊なゲージ変換(Regge-Wheelerゲージ)を施すと、重力波の2つのモードの運動方程式がKlein-Gordon方程式に従うことを示しました。更にそこから、Unruh効果と呼ばれる加速運動する観測者が示す熱的な性質を導出しました。
・非平衡系のダイナミクス (Floquet engineering、Schwinger効果)
・不純物問題 (Kondo problem、モノポール)
・Non-Fermi liquid
・非エルミートな理の理論
・量子アノマリー
・トポロジカル絶縁体