公益財団法人 国際文化会館
アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)/地経学研究所 主任研究員
1983年生まれ。民間企業、国連、外務省などを経て現職。専門は国際政治経済、経済安全保障、国際紛争・紛争解決論。国連ではニューヨーク本部とスーダンで勤務しアフガニスタンでも短期勤務。慶應義塾大学法学部卒、東京大学公共政策大学院修了。筑波大学と明治学院大学で非常勤講師も務める。
主な著書に、『国際政治経済学 第二版』(共著、名古屋大学出版会、2024年)、『新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)調査・検証報告書』(共著、2020年)。最近の執筆として、「健康・医療領域の経済安全保障」地経学研究所編『経済安全保障とは何か』(東洋経済新報社、2024年)、「日本の新型コロナウイルス対策」「諸外国の感染症対策組織」日本公共政策学会 編『公共政策学事典』(丸善出版、2024年)、Building Resilience through a whole-of-society approach: COVID-19 pandemic response in East Asia(共著、2022年)、「危機管理としての日本のコロナ対応」『アステイオン』第94号(2021年5月)他。佐藤栄作記念国連大学協賛財団第27回「佐藤栄作賞」優秀賞受賞(「紛争解決における国際NGOの重層的活動」)
所属学会
国際政治学会、国際安全保障学会、日本安全保障貿易学会、グローバル・ガバナンス学会
略歴
2005-2011 株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA):事業開発やプロジェクトマネジメントを担当。
2012-2013 国際協力機構(JICA)農村開発部:中南米カリブ地域の農村・水産開発案件を担当。
2013-2015 国際移住機関(IOM)スーダン:選挙支援担当官を務めたのち、事務所長室にて新規プロジェクト開発やドナーリレーションを担当。首都ハルツームに拠点を置きつつ、ダルフールや南コルドファン州など紛争影響地域における平和構築や人道復興支援案件の立ち上げや実施に携わる。
2015-2018 国連事務局(NY本部)政務局 政策・調停部:ナイジェリア、イラク、アフガニスタン等における国連平和活動のベストプラクティス及び教訓の分析・検証、ナレッジマネジメントを担当。国連アフガニスタン支援ミッション(UNAMA)が展開するカブールでも短期勤務。
2018-2020 外務省アジア大洋州局北東アジア第二課。北朝鮮に関する外交政策に携わる。
2020年からAPI主任研究員。2022年から地経学研究所 主任研究員を兼務。
委員歴
内閣府委託事業「我が国が戦略的に育てるべき安全・安心の確保に係る重要技術等の検討業務」委員(2022年ー2023年)
経団連 21世紀政策研究所「ポストコロナ時代の国際秩序」研究委員(2020年ー2023年)
2025年4月25日 地経学ブリーフィング
DOGEとイーロン・マスク
ストックよりフローを重視するトランプ
先例としてのアルゼンチン
土光臨調「個人は質素に社会は豊かに」
「米国の信頼性」の危機
2024年5月2日 地経学ブリーフィング
日本の産業政策の変遷
民主的で、VC的で、アジャイルな産業政策
2024年2月29日 委託研究
慶應義塾大学慶應グローバルリサーチインスティチュート戦略構想センター(KCS)
「安心・安全シンクタンク」令和5年度委託事業「シンクタンク機能育成事業」
北朝鮮により引き起こされるリスクシナリオとして、1)日米韓へのミサイル攻撃、2)懸念国・組織とのハイブリッドな武器開発・取引及び決済、3)健康危機(生物・化学兵器使用と新興再興感染症)、4)電磁パルス(EMP)攻撃の四つを提示した。国民の生命・身体・財産の安全を確保するため研究開発を進めるべき重要技術として、省レアメタル・非レアメタル化技術、暗号資産取引の解析技術、下水サーベイランス技術の推進を提言した。
2024年2月29日
経営共創基盤(IGPI)主催「CX×経済安全保障」
地経学・地経学リスクとしての米中対立、日米各国政府の政策、サプライチェーン強靭化、重要新興技術の育成について講演。
2024年2月19日 Forbes JAPAN
デカップリングとは何だったのか
中国リスク
サプライチェーン強靭化のためのデリスキング(Derisking for supply chain resilience)
イノベーションのためのデリスキング (Derisking for innovation)
2024年1月24日 地経学ブリーフィング
選挙プロパガンダ2024 米国大統領選をめぐる偽情報とソーシャルメディア
プロパガンダ
選挙プロパガンダ2024
選挙プロパガンダ対策
対テロ作戦における過激化対策の経験
選挙プロパガンダと対峙する民主主義
2023年12月13日 地経学ブリーフィング
犠牲になる文民(civilians)
国連安保理と方針変更した米国
停戦と人道的休止
停戦監視・検証のための平和活動
人道的惨禍に引き裂かれる世論
人間の尊厳
2023年8月21日 東洋経済オンライン
「使える」大量破壊兵器という脅威
CBRN(化学・生物・放射性物質・核)脅威を見える化するセンシング技術
CBRN脅威のセンシング技術のモバイル化・スマート化
特定重要技術
マルチユース技術としての社会実装と国際展開
2023年5月17日
「デジタル人民元は国境を越えるのか」『アステイオン』98号、サントリー文化財団
中国は「一帯一路」の旗を掲げグローバルサウスの新興国や途上国で港や鉄道などインフラ建設を支援してきた。その中国が進めてきたのが、中央銀行デジタル通貨(CBDC)としてのデジタル人民元の発行準備である。経済安全保障上の新たな脅威として見られがちなデジタル人民元も、港や鉄道のように、中国を越え、世界へ広がっていくのだろうか。本稿ではCBDCやデジタル人民元の現状を概観したうえで、デジタル人民元が中国を越えていくシナリオをいくつか提示してみたい。
1月30日 東洋経済オンライン
医薬品サプライチェーンの急所を握る中国
毒にも薬にもなるバイオ
日米貿易摩擦の教訓
サプライチェーン・マッピングと特定重要物資のアップデート
日本も直面する「毒の抜き方と薬の煎じ方」
1月6日 フォーサイト
安保3文書の運用で鍵となる「政策の統合」と「国力としての技術力」
防衛力の統合から「総合的な国力」の統合へ
経済安全保障という新機軸
国力としての技術力に不可欠なマルチユース技術と社会実装力
荒れるインド太平洋を生き抜くために
12月22日 地経学研究所
2022年12月16日、岸田政権が閣議決定した3文書、なかでも国家安全保障戦略に盛り込まれた経済安全保障について、ポイントを論じた。
11月2日 実業之日本フォーラム
電磁波によるインフラ破壊--北朝鮮からのEMP攻撃という「最悪のシナリオ」に備えよ
北朝鮮の日本上空を超える弾道ミサイル発射を踏まえた、核弾頭によるEMP(電磁パルス)攻撃のシナリオ。EMP攻撃は自衛隊のみならず、重要インフラにも影響を及ぼす経済安全保障上の脅威。民間の基幹インフラにおいても電磁パルス防護は喫緊の課題である。
9月10日 フォーサイト
「先進国」になる前に高齢社会を迎える国々
「豊田市モデル」が支えた医薬品コールドチェーン
ワクチン「ラスト・ワン・マイル支援」の対象は77カ国・地域に
7月27日 フォーサイト
ポンぺオ元米国務長官の警護が現在も続いている理由
日本から包括的検証報告が出ていない「地下鉄サリン事件」
国外に正確な情報発信を
6月8日 フォーサイト
日本は次のパンデミックに耐えられるか|健康危機管理の司令塔創設により情報と政策を「統合」せよ
新型コロナウイルス感染症は日本でこれまで3万人以上の国民の命を奪ってきた。この国家的危機における最大の教訓は、パンデミックをはじめ健康危機に対峙するための戦略もオペレーションも、そしてそれを稼働させるガバナンスも、事前に十分な備えがなかったこと。平時モードから有事モードに切り替えようにも、その切り替えるべき有事の仕組みそのものが脆弱だった。
日本はこれまでのコロナ対応を包括的に検証し、備えが欠けていた日本の健康危機管理を抜本的に強化していかなければならない。パンデミックをはじめ健康危機にアジャイル(機動的かつ柔軟)に対応できる司令塔機能の強化は、喫緊の課題。
司令塔機能の在り方としては健康危機管理庁のみならず、健康危機管理局、健康危機管理室といったオプションがあり得る。いずれの場合も鍵となるのは、政府中枢で情報と政策を「統合」し、対応の重心を決める統治機構改革が実現できるか。
我が国の健康危機管理体制において司令塔が果たすべき役割は三つ。
1)平時から情報と政策を統合し、有事には危機対応の重心をアジャイル(機動的かつ柔軟)に決めること
2)中央政府と地方自治体で緊密に連携し、有事には危機対応の集権化をはかり、中央による現地支援を迅速に展開すること
3)健康危機の発生や脅威の変化にも柔軟に対応できるよう、国としてレジリエンス(強靭性)を確保すること
国家安全保障局(NSS)を前例に
5月16日 実業之日本フォーラム
いつまで持つ?強力な経済制裁の中でも攻撃を続ける「プーチンの限界」
5月17日 実業之日本フォーラム
強まるロシアへの経済制裁に「核保有国・北朝鮮」が密かに注目するワケ
4月18日 フォーサイト
対ロシア経済制裁が「勝利の方程式」になる条件:侵略終結プロセスはどこまで進んだと言えるのか
経済制裁は、軍事力や外交交渉とともに、対外政策における手段のひとつ。軍事力や外交交渉と組み合わせたメカニズム構築が重要。ロシアのウクライナ侵略終結に向けた戦略、つまり勝利の方程式(theory of victory)のなかで経済制裁の使い方を考えなければいけない。
経済制裁が効果を発揮してウクライナ侵略が終結するまでは、3つのステップを踏んだプロセス。すなわち、1)ロシアに経済的な痛みを与え、2)その痛みからプーチン大統領および政権幹部が政治的な目標や立場を修正し、最終的には3)戦争継続にともなう痛みに耐えられずウクライナ侵略の終結を決意する、というプロセス。
第一のステップは、制裁によりロシアの政治・政府へ経済的な痛みを与えること。
経済制裁は、経済のストックへの制裁と、フローへの制裁と、大きく二つにわけられる。
ストックへの制裁は外貨準備凍結、プーチン大統領や政権幹部、オリガルヒの資産凍結。
経済のフローへの制裁。西側諸国はカネ(金融)とモノ(貿易)と技術の流れを止めることで、ロシア経済の孤立化をめざしている。代表的なものがSWIFT排除。ロシアの外貨建て国債は事実上のデフォルト。モノと技術の輸出規制。
第二のステップは、経済的な痛みを感じたプーチン大統領および政権幹部が、ウクライナの中立化や非軍事化など、政治的な目標(ends)や立場を修正すること。
第三のステップは、戦争が続くことで痛みが耐えがたい膠着状態に至り、ロシアの政治指導者がウクライナ侵略の終結を決断すること。
楽観的なシナリオは交渉による和平合意。過去に経済制裁が効いて交渉が進んだケースは2013年から2015年までのイラン核合意、2003年に核計画を放棄したリビア。JCPOAでバイデン政権幹部がコアメンバーだった点は要注目。
悲観的なシナリオはプーチンの侵略の継続。制裁が長期化しインフレは制御不能に。しかし今のロシアで民主的な政権交代や「革命」は期待できない。プーチン体制の転換、レジームチェンジが起こるとすれば、戦争継続はロシアのためにならないと判断した政権幹部グループが国内の騒乱に乗じて下剋上。
いまはプーチン大統領および政権幹部に、政治的な目標や立場を修正させるステップ2の道半ばというところ。欧州や中国、日本がロシアからエネルギー資源の輸入を続けており、ロシアへの資金のフローが止まっていない。EUは1日あたり約10億ユーロ(約1300億円)をロシアへ支払ってきた。
重要なことは、石油や天然ガスを全面禁輸するか、しないかの二択ではなく、現下のエネルギー依存度を踏まえつつ、どこまでの制裁強化なら可能かを定量的に検討すること。
3月16日 フォーサイト
ロシアのウクライナ侵略はどのように終わるのか
情勢が不透明であればこそ、起こりうるシナリオを楽観的なものから悲観的なものまで、できるだけ幅広く想定する。それがなければ進行中の危機に対処できない。
米国を中心にG7と欧州など西側諸国は、政治的・外交的にはウクライナ支援で結束し、経済的には強力な経済制裁を発動しもはや当事者であるが、軍事的には直接の当事者となることを避けている。
紛争を理解する際には、その激化と沈静化を左右する「ドライバー」(主たる変数)を把握することが不可欠。ロシアのウクライナ侵略において最大のドライバーは、プーチン大統領の意図。
プーチンが経済制裁の痛みや中長期的な展望の暗さを合理的に判断し、どこかのタイミングで侵略を中止し、和平交渉が進展するのが楽観シナリオ。
ロシアとウクライナが交渉により和平合意をめざす場合、協議の争点は停戦、ロシア軍撤退、ドンバスとクリミアなどロシア実効支配地域の「国家」承認など多岐にわたる。ロシアは軍事侵攻をつづけており単なる「停戦協議」には関心がない。
経済制裁とは、相手国の方針の転換をはかるため、経済的な痛みを与える政策。対ロシア制裁は、その対象の広範さと迅速さにおいて過去に類を見ない強烈なもの。ウクライナの抵抗が長引き、さらにロシア経済が悪化すれば、プーチン政権の正統性が根幹から揺らぐ可能性もある。
和平交渉が進展するには紛争の機が熟す(ripe)ことが必要。ゼレンスキー大統領とプーチン大統領の両方が、あまりに戦争を続けることの痛みが大きく、もう続けられないと判断すれば、妥協点を探る作業に進むことになる。そこではじめて交渉による和平合意への道が開く。
人道回廊とは和平合意どころか、停戦にすら手が届かない、きわめてハードルの低い合意事項。シリアやイエメンのような絶望的な内戦で、せめてこれだけは設定してくれ、というものでしかない。攻勢を強めていたロシアにとって切れる一番簡単なカードのひとつ。
仲介や和平調停も期待ができない。着実に進撃を続けてきたロシアにとって、仲介者をいれて交渉するメリットがない。
中長期的に考えて仲介より重要な点は、どこかのタイミングでロシアと西側諸国との多国間交渉が必要になること。この戦争はロシアとウクライナの二国間交渉だけでは終わらない。アメリカや欧州、そして日本など西側諸国が強力な経済制裁をかけており、もはや実質的な当事者になっているため。
悲観的なシナリオはプーチンの侵略の継続。ロシア経済が崩壊しようがオリガルヒが離反しようがためらうことなく、目標完遂に向け一心不乱に突き進む。5つのパターン:泥沼化、NATO軍事介入によるエスカレーション、東西分裂、ゼレンスキー政権の降伏、プーチン大統領の失脚あるいは死去
3月3日 実業之日本フォーラム
グローバルヘルスを支える医薬品サプライチェーンと健康危機管理専門家
グローバルな医薬品のサプライチェーン強靭化
ラスト・ワン・マイル支援と豊田市モデル
健康危機に即応できるグローバルヘルス分野の人材育成
2月7日 東洋経済オンライン
はじまりは武漢モデル
中国の「ゼロコロナ政策」
ゼロコロナ政策という言葉が使われた3つの要因
ゼロコロナ政策の軌道修正
北京冬季五輪のクローズドループ方式
2つのエコーチェンバー
2021年12月20日 東洋経済オンライン
日本人の健康を守り切る為に求めたい6つの提言 ― 健康危機領域の経済安全保障に必要なことは何か
国家的危機としての「健康危機」:感染症とCBRN
健康危機領域の重要品目
医薬品開発製造の現状
政・官・産・学が平時から連携を深化すべき
情報と政策を統合する健康危機管理の司令塔
平時から脅威となりえる健康危機とともに「経済安全保障重要技術・品目」をターゲティング(特定)
コアキャパシティとサージキャパシティで備えを変える
プル型インセンティブ(有事の買上、平時の備蓄と生産設備維持)を軸にして、日本が競争優位を持つ技術・品目を死守するとともに、サプライチェーンの脆弱性解消を目指す
勝ち筋になる技術を目利きでき、政官産学を結び付けられる人材が不可欠
2021年11月29日 実業之日本フォーラム
軍の支配強まるスーダン、エコノミック・ステイトクラフトと予防外交に活路
バシール前大統領の独裁と、その崩壊
主権評議会議長の文民への移行を待てなかった軍と治安部門
エコノミック・ステイトクラフト
周辺国や地域機構を巻き込んだ予防外交
2021年11月9日 実業之日本フォーラム
ASEANという戦略的パートナー
ワクチン供与大国となりつつある日本
小口保冷配送は日本が世界に誇るお家芸
ワクチン現物供与とコールドチェーン整備の「ラスト・ワン・マイル支援」は、日本のワクチン外交の二枚看板
日本の健康危機管理のためにも重要なASEAN感染症対策センター
2021年9月22日 実業之日本フォーラム
アフガン退避オペレーション
武漢と南スーダンの退避オペレーション
NATO加盟国や韓国と、日本
成否を分けた紛争国の「相場観」
アフガン人現地職員の退避が外交に及ぼすインパクト
今こそ検証を
2021年9月1日 実業之日本フォーラム
アフガニスタンという巨象:タリバンのカブール制圧、求められる外交の復権
カブール陥落
アフガニスタンという「巨象」
タリバン、3つの勝因ーーガニ政権の自壊、米軍撤退による力の真空、タリバンの軍事オペレーション
タリバンにどう向き合うべきか――今こそ外交復権のとき
2021年7月30日 実業之日本フォーラム
東京五輪をめぐる危機管理:リスク管理とリスクコミュニケーション
「バブル方式」の誤解と課題
リスクコミュニケーションにどう取り組むべきか
11 June 2021 Japan Times
How Japan can help tackle East Asia's coronavirus surge
East Asian countries have managed to keep COVID-19 fatalities remarkably low compared to Europe and the U.S. through strict border and movement control measures. Recently, these countries are seeing a surge in infections due to highly contagious variants transcending borders -- challenges Japan has been struggling with. As East Asian countries had succeeded in containing infections, they are, ironically, less aware of the threat of the virus compared to Europe and the United States and as a result have been slow to provide vaccines. This has been creating an East Asian COVID-19 paradox.
2021年6月28日 東洋経済オンライン
東アジア「ここへ来てコロナ感染急増」に映る難題ーー国境突破された各国に対し日本は何ができるか
感染力が強い変異株に国境を突破された東アジア各国が直面しているのは、日本が経験してきた課題。飲食店など街中に隠れた感染連鎖、国民のコロナ疲れ、そしてワクチン接種の遅れ。日本は東アジアにおいてコロナ対策の課題先進国。
東アジアでは感染を抑制してきたがために、皮肉にも欧米に比べ相対的にコロナへの脅威認識が薄く、ワクチン供給は後回しにされ、「東アジア・パラドックス」ともいえる状況が生じている。
mRNAワクチン「大中国市場」という台湾排除の論理:イノベーションのコア技術を保有するベンチャー企業が、中国企業に製造権や販売権を独占的に与える場合、その契約書に記された「中国市場」が台湾を含む「大中国市場」と見なされると、結果的に、台湾は革新的な製品へのアクセスから排除されてしまう。ワクチンや医薬品のみならず、今後、台湾が関わる全てのサプライチェーンにおいて極めて深刻な脆弱性になり得る脅威である。
今こそ、G7と豪印を主軸とする民主主義勢力は結束し、自由で開かれた、より良い多国間主義を再興しなければならない。その重要な一歩が、安全で有効性の高いワクチンを、世界中へ公平に分配することである。日本には、東アジア・パラドックスを乗り越えるため域内でコロナ対応の教訓を共有しつつ、コールドチェーン整備支援と日本製ワクチン供与を主軸とした、ワクチン・サプライチェーン強靭化という日本ならではのワクチン外交の推進が強く求められている。
11 June 2021 Japan Times
Robust vaccine supply chain is key to ending the pandemic
Building a resilient vaccine supply chain in Japan and the world to step up vaccinations is necessary to not only prevent the spread of infections but also stop the novel coronavirus from mutating.
2021年5月21日
「危機管理としての日本のコロナ対応」『アステイオン』94号、サントリー文化財団
要旨:2012年、危機突破内閣を宣言して立ち上がった第二次安倍晋三政権が、憲政史上最長7年8か月の終盤に直面したのが、新型コロナという感染症危機であった。激甚災害、北朝鮮のミサイル発射、中国の領海侵入など危機管理を経験してきた安倍政権が、どうコロナ危機に対峙したのか。「コロナ民間臨調報告書」の内容を再構成しつつ、局所的なものにとどまった備え、「得体の知れない感染症」への初動、官邸の危機管理体制、国際機関経験者の活躍などについて論じる。
2021年5月10日 東洋経済オンライン
日本に「ワクチン供給網強化」が何より必要な訳ーー感染拡大、変異を止めるために何ができるか
危機管理としてワクチン接種を急いだイスラエル
サプライチェーンのリング(輪っか)を繋ぐ難しさ
ウイルスベクターワクチンの強み
日本はワクチン・サプライチェーンの強靭化を急げ
安全保障にふさわしい予算の編成が必要
April 4, 2021 Japan Times
China sets sights on a digital currency to challenge the U.S. dollar
March 23, 2021 Japan Times(co-author)
Japan needs a stronger crisis review system
2021年3月8日 東洋経済オンライン(共著)
日本の危機を繰り返さない為に検証が担う重責ーー学びを途切れさせない「結び目」繋ぎ次に備えよ
危機から学ぶことの難しさ
国家的危機からの学びが苦手な日本
国会でも政策評価の機能が十分に発揮されず
民間・独立のシンクタンクだからこそ
February 7, 2021 Japan Times
What is needed to bring back freedom of movement
2021年1月18日 東洋経済オンライン
コロナ後「移動の自由」取り戻す為に必要なことーー必要なのは的確なリスク評価と迅速果断な政策
コロナに奪われた「移動の自由」
変異ウイルスが閉める国境
「移動の自由」は戻るのか
地経学の時代の国境管理、3つの対策
出入国制限、すなわち入国拒否と渡航中止勧告、査証の制限等の措置
検疫と感染流入のサーベイランス(監視)の強化
入国後待機のモニタリング
台湾から学ぶ
「移動の自由」を取り戻すため、政府には的確なリスク評価と、迅速果断な政策の執行が求められる
January 8, 2021 Japan Times
Japan’s COVID-19 response: What it did right, what it has to learn
Sep 1, 2020 Japan Times
How to reopen national borders
2020年7月20日 東洋経済オンライン
コロナで閉じた国境の「再開放」望ましい処方箋ーー感染拡大地域からの受け入れをどうしたら
一度は閉鎖した国境が再び開放局面に
自国よりも感染拡大が深刻な国との間ではどうする
要人往来は今後さらに進む
人の移動のルール掲載に国際協調は必須
インド太平洋地域でCPTPPに加盟する6カ国(ベトナム、ニュージーランド、オーストラリア、ブルネイ、マレーシア、シンガポール)および台湾は、日本以上に感染封じ込めに成果を上げてきている。日本は価値を共有するこうした国・地域と手を携えながら、人の移動の分野で本来、主導的な役割を果たしてきたアメリカとも緊密に連携し、国際的な人の往来再開のルール形成に積極的に参画するのが望ましい。
2016年12月
国際移住機関(IOM)駐日事務所
スーダンでのフィールド経験: ダルフールにおける人道支援と平和構築、民間企業から国際機関へ
2021年7月20日 NewsPicks
「新型コロナウイルス感染症の「出口」を考える上で、切り札として期待されているワクチン。そんなワクチンは、国際政治の道具となりつつある。中国を皮切りに、インド、アメリカなど、大国が他国に対してワクチンを大量に供給。影響力の拡大を図る「ワクチン外交」を進めているからだ。現在、ワクチン外交はどのように進展しているのか。変異株の存在は、その勢力図をどう塗り替えるのか。危機管理や経済安全保障が専門の、アジア・パシフィック・イニシアティブ主任研究員の相良祥之氏に解説してもらった。」
Dec 30, 2020 Japan Times
Tokyo’s pandemic border policy highlights insecure status of foreign residents
“Introducing an entry ban has long been considered a prohibited strategy, out of concern that such a move could be considered discriminatory,” said Yoshiyuki Sagara, a member of the Asia Pacific Initiative, a Tokyo-based global think tank that examined government countermeasures to the pandemic, in a recent telephone interview.
2016年5月25日
Vol.1 国連事務局 政務局(DPA)相良祥之
2016年4月9日
国連フォーラム勉強会
"Change the World" ~国連職員の横顔・JPO応募直前企画
「国連が作られたのは、われわれを天国に連れて行くためではなく、地獄に落ちるのを救うためだ」という有名な言葉がある(注:第二代事務総長ダグ・ハマーショルドの演説)。国連ができることは限られているものの、二つの事例を紹介したい。一つ目は2015年のナイジェリア大統領・総選挙における選挙支援。ナイジェリアでは前回(2011年)の選挙がきっかけとなった戦闘で数百人規模の死者が出ており、2015年も同様の懸念があったため、DPA(国連政務局)がフィールドの特別政治ミッションや国連諸機関と連携して選挙支援をおこなった。たとえば事務総長を筆頭にハイレベルでの政治的関与をおこない、選挙結果が遵守されるよう事前に候補者間で合意を取り付けた。現職大統領や与党側の敗北は、それを受け入れられない政府側と反政府側との紛争の引き金になることもあるからだ。UNDPは現地のNGOと連携して都市だけではなく地方でも選挙が平穏に実施されるよう取り組んだ。結果、選挙により政権交代が起きたにもかかわらず、大規模な戦闘が起こることは避けられた。二つ目は私がIOMスーダンで担当していたダルフールでの職業訓練事業。ダルフールでは10年ほど続く紛争のために国内避難民(IDP)が200万人以上もいる。その中には、自分が産まれた場所すら知らず、物心ついたときから国際機関の人道支援によって生き延びてきた子どもや若者も多い。こういった子供たちが10代20代になると、自分が何のために生きているのか、わからなくなることもある。そうすると生きる手段として兵士になるなど、紛争に巻き込まれやすくなってしまう。こうした若者たちに生きる意味を見出してもらうために職業訓練を支援した。男性にはレンガ家屋の造り方、女性には裁縫などの訓練を提供することで、人道支援に頼らず、自らの手でお金を稼いで生活できるようになって欲しいと考えた。生計を立てる手段を持つことは人間としての尊厳を得ることに繋がり、紛争に巻き込まれる可能性も低くなる。地獄に落ちるのを救うという意味で、国連はこのような活動を世界中で行っている。