バイオミネラリゼーションという言葉は、日常生活でなかなか耳にする機会はなく、「何のこと?」と疑問に思う方が多いと思います。
一言で説明するなら、「生物が鉱物を作ること」です。日常生活で馴染み深いものでいうと、アコヤガイ(真珠貝)が天然の美しい真珠を作り出したり、食卓にあがることも多いアサリやサザエ、アワビ、カキなどの貝の殻、沖縄などの優雅なサンゴ礁、ウニなどの骨格、ヒトの骨なども挙げられます。このように生物が石灰化現象により硬組織を形成するプロセスは、幅広い生物種で見られます。
その中でも私は、軟体動物(貝類)の硬組織に焦点を当てています。
軟体動物は、主に貝殻と呼ばれる硬組織を作り出します。貝殻は、無機鉱物である炭酸カルシウムに自身の外套膜と呼ばれる組織から分泌される有機物を組み合わせることで形成されます。このようなバイオミネラリゼーション現象は、進化の過程で、いつ、どのように獲得され、現在のような我々を魅了するような多彩な硬組織へと、歩みを進めたのでしょう?
『研究テーマ1』ヒザラガイ類における硬組織形成(貝殻、骨針)
軟体動物の分子系統解析を用いて描写した系統樹は、
左図のようになります。(Kocot et al., 2020)
以前は、骨片・骨針だけを持つ無板類が basal (祖先的)だと考えられており、棘が軟体動物の祖先形質だと考えられていました。
しかし、最新の系統解析により、最節約的に軟体動物の硬組織の起源を復元したとしても、貝殻と骨針のどちらが祖先的な形質かは、解けなくなってしまいました。
さて、軟体動物の硬組織は、どのような形から進化してきたのでしょう???
そこで、私は、ヒザラガイ類に着目しました。ヒザラガイは、貝殻と骨針、両方の硬組織を有する軟体動物です。ヒザラガイの硬組織の形成機構を解明することで、軟体動物の形態進化の1ピースになると考えています。軟体動物の進化の歴史について、硬組織の側面から解明できればと考えています。
『研究テーマ2』巻貝類における貝殻形成
サザエ、アワビなどで知られる貝殻を背側に1枚もつ巻貝類(腹足類)を用いて、貝殻形成に関する研究もしています。
軟体動物は幼生期(トロコフォア幼生)という浮遊性の時期を経て、大人になります。
トロコフォア幼生期から、shell fieldは形成され始め、目に見えるような貝殻が形成されます。
この幼生が作りだす貝殻形成機構と成体が作りだす貝殻には、類似性があるのでしょうか。
海産無脊椎動物における硬組織の進化 (カンブリア紀の大爆発なども)
軟体動物が貝殻を形成する過程において、どのような分子メカニズムが関与しているのか?
環境に負荷の与えない「丈夫で硬い」新規バイオマテリアルの開発
生物石灰化機構解明によるカーボンニュートラルの実現
サイエンス&●●といったSTEAM教育
2024 04 - 2025 03 次世代研究者挑戦的プログラム 研究奨励費 ( 500,000円 )
「軟体動物における成体および幼生期の貝殻形成機構の比較」
2022 04 - 2023 03 日本科学協会 笹川研究助成 ( 700,000円 )
「軟体動物における硬組織形成の進化的起源の解明」
2020 04 - (現在) 軟体動物 多板綱(ヒザラガイ類)に着目した硬組織の進化的起源の解明
4) 2025 03 Supanat Phuangphong*, Hiroki Yoshikawa*, Yune Kojima, Hiroshi Wada, Yoshiaki Morino. Characterization of shell field populations in gastropods and its autonomous specification mechanism independent of inter-quartet interactions. , Development(2025), https://doi.org/10.1242/dev.204538
3) 2024 12 Hiroki Yoshikawa*, Yoshiaki Morino, Hiroshi Wada.
Early development of the mineralized external skeleton of the polyplacophoran mollusk, with insight into the evolutionary history of shell plates and spicules. , Development, Growth & Differentiation (2024) ,
https://doi.org/10.1111/dgd.12956
2) 2024 05 Supanat Phuangphong*, Hiroki Yoshikawa*, Yune Kojima, Hiroshi Wada, Yoshiaki Morino. Development of shell field populations in gastropods. , BioRxiv(2024), https://doi.org/10.1101/2024.05.16.592602
1) 2023 06 Morino Yoshiaki*, Yoshikawa Hiroki.
Role of maternal spiralian-specific homeobox gene SPILE-E in the specification of blastomeres along the animal-vegetal axis during the early cleavage stages of mollusks. Development, Growth & Differentiation (2023) , https://doi.org/10.1111/dgd.12874
11) 2024 12 JSTの研究集会にて、Comparison of shell formation mechanisms in adult and larval stages of mollusks というテーマで発表しました
10) 2024 09 日本動物学会 第95回 長崎大会 で 口頭発表を行いました
「軟体動物腹足類における幼生期および成体の貝殻形成機構の比較」
9) 2024 08 進化学会 第26回神奈川大会 でポスター発表を行いました
「軟体動物における貝殻形態の進化的起源」 ( 優秀ポスター賞を授与しました。)
8) 2024 05 マリンバイオテクノロジー学会 第24回筑波大会 で口頭発表を行いました
「シングルセルRNA-seq解析を用いたクサイロアオガイ成体及び幼生期における貝殻形成メカニズムの探索」
7) 2023 09 日本動物学会 第94回 山形大会 で 口頭発表を行いました
「Single-cell RNA-seq解析を用いた軟体動物腹足類幼生期における貝殻形成に関与する遺伝子レパートリーの同定」
6) 2023 05 マリンバイオテクノロジー学会 第23回金沢大会 でポスター発表を行いました
「Single-cell RNA-seq解析を用いた軟体動物腹足類幼生期における貝殻形成に関与する遺伝子レパートリーの
網羅的同定の試み」
5) 2022 11 バイオミネラリゼーション研究会 第17回 バイオミネラリゼーションワークショップ で口頭発表を行いました
「ヒザラガイ類から探る軟体動物における硬組織の進化的起源」( 若手発表賞を授与しました。 )
4) 2022 05 マリンバイオテクノロジー学会 第22回 オンライン大会 でポスター発表を行いました
「軟体動物多板綱を用いた貝殻および骨片の進化的起源の解明」
3) 2022 03 日本動物学会 関東支部大会 でポスター発表を行いました ( 共同研究 )
「二枚貝における閉殻筋獲得機構の解明」
2) 2021 09 日本動物学会 第92回 オンライン米子大会 でポスター発表を行いました
「遺伝子発現解析を用いた軟体動物多板綱における貝殻および骨片の進化的起源の探索」
1) 2021 03 日本動物学会 関東支部大会 でポスター発表を行いました
「軟体動物多板綱における骨片形成遺伝子の探索」