研究概要 

隕石によって運ばれる生命分子  

生命の起源となる分子は「地球で生成した」という説と「地球外からもたらされた」という説があります.地球外起源説の証拠として、隕石に含まれる有機物は長年にわたって研究が行われてきました.一方で、生命に不可欠な分子でも隕石からは見つかっていない分子もありました.私たちのグループは、オーストラリアに落下した隕石などから、リボースなどの生命を構成する糖を初めて検出しました.リボースはRNAを構成する唯一の糖で、このことは、生命誕生前の地球にRNAの材料となる糖が、地球外から運ばれてきていたことを示しています.

Furukawa et al., PNAS 116, 24440-24445 (2019) 

Furukawa, Iwasa, and Chikaraishi, Sci. Adv. 7 eabd3575 (2021)

小惑星の衝突による生物有機分子の生成 

生命誕生前の地球にどのようにして生物を構成する有機分子が生成したのでしょうか?

私のグループの研究では、小惑星や巨大隕石の衝突を模擬した実験によって、タンパク質を構成するアミノ酸や核酸(DNA, RNA)を構成する核酸塩基が生成することを明らかにしてきました.

Furukawa et al., Nature Geoscience 2, 62-66 (2009)

Furukawa et al., EPSL 429, 216-222 (2015)

Takeuchi et al., Scientific Reports 10, 9220 (2020) 

RNAの起源解明に向けて 

RNAは遺伝情報の一部を持つ分子であると同時に酵素のように触媒としての働きも持つ生命誕生にとって非常に重要な分子と考えられています.しかし、生命誕生前の地球でのその生成過程と生成環境は謎に包まれています.私のグループの研究では、初期地球環境に存在するホウ酸がRNA形成にどのように働くかを研究し、ホウ酸によるリボースの安定化やヌクレオチドの選択的形成を明らかにしてきました.

Furukawa et al., OLEB 43, 353-361 (2013)

Furukawa et al., Astrobiology 15, 259-267 (2015)

Kim et al., JACS 55, 15816-15820 (2016)

Furukawa and Kakegawa, Elements 13, 261-265 (2017) 

Hirakawa et al., Scientific Reports 12, 11828 (2022)

タンパク質の起源解明に向けて 

タンパク質はアミノ酸が重合した分子で、様々な生体反応を触媒する酵素として働いています.生命誕生前にタンパク質が生成したのか、生成したとすればどのような環境で生成し生命の誕生につながったのかという疑問があります.私の研究グルでは、初期地球の乾燥環境でどのようにアミノ酸の重合が起こり、原始タンパク質が生成したのかを研究しています

Sumie et al., Communications Chemistry 6, 89 (2023)