生命分子の起源を探る
大学院理学研究科 地学専攻
資源・環境地球化学分野
生命誕生前の地球ではどのようにして生物を構成する有機分子が誕生したのでしょうか?
この謎を解明するために、地球科学的な知見・手法と有機化学的・分析化学的手法を組み合わせて研究を行っています.
Topics
2024.04.17
編集と執筆に関わった「生命起源の事典」が出版されます.生命の起源に関わる幅広い事柄について、日本の多くの研究者が専門とする項目について執筆した力作です。
2024.03.07
博士課程学生の平川君が青葉理学振興会賞を受賞しました.
2024.01.02
博士課程学生の平川君の論文がScientific Reports誌に掲載されました.
初期地球でグルコースとグルコン酸の位置選択的リン酸化がホウ酸によって可能になることを示した研究です.
Hexose phosphorylation for a non-enzymatic glycolysis and pentose phosphate pathway on early Earth
2023.10.01
二酸化炭素に富む初期地球で、鉱物をリン酸源としたリボース5'リン酸の選択的生成が可能であったことを示唆する論文がGeochemical Journal誌に掲載されました.
2023.05.12
ホウ酸の働きによって、中性のアミノ酸溶液を乾燥させるだけで39量体までのペプチドが生成することを明らかにしました.
原始タンパク質の生成には乾燥環境とホウ酸が必要であったことを示唆しています.論文はCommunications Chemistry誌に掲載されました(プレスリリース).
Boron-assisted abiotic polypeptide synthesis
2023.04.24
隕石の有機分子分布を高空間・高質量分解能で明らかにした新しい分析方法に関する論文がScientific Reports誌に掲載されました.
Distributions of CHN compounds in meteorites record organic syntheses in the early solar system
2023.03.06-09
カナダのBannffで開催された第2回日加先端科学シンポジウムに参加しました.
2023.03.09
大阪大学などとの共同研究の尿路結石の結晶成長に関する論文がPLOS ONE誌に掲載されました.
2022.07.19
博士課程学生の平川君の論文がScientific Reports誌に掲載されました.
リボースの位置選択的リン酸化がホウ酸によって可能になることを示した研究です(プレスリリース)。
Borate-guided ribose phosphorylation for prebiotic nucleotide synthesis
研究概要
小惑星の衝突による生物有機分子の生成
生命誕生前の地球にどのようにして生物を構成する有機分子が生成したのでしょうか?
私たちのグループは、小惑星や巨大隕石の衝突を模擬した実験によって、タンパク質を構成するアミノ酸や核酸(DNA, RNA)を構成する核酸塩基が生成することを明らかにしてきました.
隕石によって運ばれる生命分子
生命の起源となる分子は「地球で生成した」という説と「地球外からもたらされた」という説があります.地球外起源説の証拠として、隕石に含まれる有機物は長年にわたって研究が行われてきました.一方で、生命に不可欠な分子でも隕石からは見つかっていない分子もありました.私たちのグループは、オーストラリアに落下した隕石など複数の隕石から、リボースなどの生命を構成する糖を初めて検出しました.リボースはRNAを構成する唯一の糖で、このことは、生命誕生前の地球にRNAの材料となる糖が、地球外から運ばれてきていたことを示しています.
初期地球・初期火星でのリボースの生成
RNAは遺伝情報の一部を持つ分子であると同時に、酵素のように触媒としての働きも持つ生命誕生にとって非常に重要な分子と考えられています.しかし、その生成過程は謎に包まれています.私たちのグループでは、初期地球環境に存在する鉱物やイオン特にホウ酸イオンがRNA形成にどのように働くかを研究しています.