運動不足は生活習慣病や加齢性疾患の進行と密接に関わる喫緊の課題であると同時に、子や孫の将来の健康リスクにも繋がる可能性があります。本研究室では、妊娠以前の両親の運動不足が後天的な遺伝情報として、次世代の子どもに伝播される仕組みを解き明かすことで、真に実用的な健康対策の研究・開発に取り組みます。本邦においてこれまで存在しなかった「世代を超えた生涯に渡る健康対策」を実現することを目指し、日々研究に取り組んでいます。
同じ運動を行っても、得られる効果には個人差や性差があることが知られていますが、その分子レベルでの原因はまだ十分に解明されていません。私たちの研究室(ゼミナール)では、モデル動物を用いた基礎研究から、競技スポーツや健康増進といった応用研究に至るまで、運動生理学の視点からさまざまな“なぜ?”に挑戦しています。特に近年は、「発育期の運動習慣が将来の健康や身体機能にどのような影響を与えるのか?」という問いに注目しています。たとえば、発育期における長期間の自発走運動やカロリー制限が、雌ラットの骨格筋における細胞内シグナル伝達へ及ぼす影響を解析することで、成長期の生活習慣が骨格筋の適応に及ぼす性差メカニズムを明らかにしようとしています。また、若年期の活動制限(いわゆる運動不足)が高脂肪食摂取による代謝異常や骨格筋のオートファジー機構に与える影響についても研究を進めており、生活習慣病のリスクや筋機能の低下に関わる分子経路を探っています。さらに、「子どものときの運動経験は、その後のライフステージでどのように活かされるのか?」という視点から、骨格筋の“運動記憶”(マッスルメモリー)に着目し、サルコペニアの予防に資するトレーニング戦略や運動プログラムの開発にも取り組んでいます。
<2025年度>
・発育期における長期間の自発走運動とカロリー制限が雌ラット骨格筋の細胞内シグナル伝達に及ぼす影響
小川 咲桜, 長谷川 雄彦, 吉原 利典
2025 年74 巻3 号 p. 155-170
発行日: 2025/06/01
公開日: 2025/05/13
DOI: https://doi.org/10.7600/jspfsm.74.155
<2024年度>
・若年期の活動制限が高脂肪食摂取ラットの骨格筋におけるオートファジーに及ぼす影響
2024 年73 巻3 号 p. 97-110
発行日: 2024/06/01
公開日: 2024/05/15
<2025年度>※現在進行中
・乳酸摂取が一過性のレジスタンス運動後のmTORシグナル伝達系に及ぼす影響
・大学男子フットサル選手における遺伝子多型と体組成の変化との関連
・乳酸摂取がレジスタンストレーニング後のラット骨格筋におけるタンパク質合成速度に及ぼす影響
・乳酸摂取がレジスタンストレーニングによるラットヒラメ筋の筋核増加に及ぼす影響
・乳酸摂取が一過性および慢性のレジスタンス運動後のミトコンドリア生合成関連因子に及ぼす影響
<2024年度>
・一過性の温熱負荷後の低温刺激がラット足底筋におけるストレスタンパク質発現に及ぼす影響
・短期間低用量のクレアチンと分岐鎖アミノ酸の同時摂取が超最大運動パフォーマンスに及ぼす影響
<2023年度>
・女子バスケットボール選手の筋硬度に関連する因子の探索 -遺伝子多型や月経周期に着目して-
・重心位置の異なる重いバットの使用が大学野球選手のスイングスピードに及ぼす影響
<2022年度>
・大学生男子陸上競技跳躍選手における体組成の左右差と競技パフォーマンスの関係
※随時更新予定!!
・ 宇田 宗弘 先生 弘前学院大学
・ 柿木 亮 先生 城西国際大学
・ 熊谷 仁 先生 The University of Southern California(南カリフォルニア大学)
・ 関根紀子 先生 放送大学
・ 張 碩文 先生 国立台南大学
・ 土橋祥平 先生 筑波大学
・ 都築孝允 先生 名城大学
・ 内藤久士 先生 順天堂大学
・ 福 典之 先生 順天堂大学
・ 宮本恵里 先生 順天堂大学