私は、InSAR・GNSS (GPS)・水準測量などの測地学的に観測される地殻変動データを用いて、地震に関する研究を幅広く行っています。特に、地震発生の長期予測に興味があり、測地データを用いた地震発生確率の推定精度向上に貢献することを研究の目標にしています。
干渉合成開口レーダー (InSAR) は、人工衛星のデータを用いて地表の変動を面的に観測する技術です。地表に観測点を設置する必要がないため、立ち入りが困難な山間部においても変位場を検出することができます。これまでの研究では、ALOS-2衛星とSentinel-1衛星のデータを用いて、2022年Yuli地震 (台湾)、2022年Chihshang地震 (台湾)、2024年能登半島地震、2024年Hualien地震 (台湾) のInSAR解析を行ってきました。2024年7月には新たにALOS-4衛星 (だいち4号) が打ち上げられ、高精度かつ高頻度な観測が期待されています。
2024年能登半島地震の干渉画像
測地学的に検出した地表の変動データを用いて、地下に存在する断層の変動量を推定することができます。これまで、弾性体媒質の断層運動について数値計算を行ってきました。この手法を粘弾性体に拡張すると、地表変動の時間発展を計算することができます。また、地震後に発生する粘弾性緩和や間隙弾性反発などの断層運動を伴わない変動についても数値計算を行うことができます。
地震時の断層運動によって、断層の周囲の応力場が変化します。この応力変化によって地震活動が活発化したり静穏化したりすることが報告されています。台湾東部などの大断層が近接する場所では、この応力変化が地震の発生に重要な役割を果たしていると考えられます。ある地震が他の地震の発生にどのような影響を与えているのかを解明することを目指しています。