研究概要 (Research Overview)
研究概要 (Research Overview)
希土類化合物の磁性と伝導に興味を持って研究をしています。希土類元素のもつ内殻の f 電子は、その希土類イオンの周りによく局在するため、たとえ金属であっても、その磁気モーメントによる磁性が現れます。中でも、セリウムなどの一部の元素は、その f 電子のエネルギーがフェルミエネルギーと近く、f 電子と伝導電子と量子力学的に混ざり合うため、非従来型の超伝導などの強い電子相関による量子凝縮相が実現します。また近年、遷移金属化合物において、スピン軌道相互作用に基づく新しい物理が続々と展開されていますが、4f 電子系はスピン軌道相互作用の強極限として知られています。この強いスピン軌道相互作用がもたらす一例として、f 電子の異方的な電荷/磁荷分布である多極子モーメントが秩序変数になることがあります。
私は、希土類化合物の簡単な単結晶育成から、 0.1 K 以下までの低温、磁場中での磁化や比熱などの物性測定を中心に行っており、そこから普遍性や多様性に迫ることを意識しています。最近では、所属研究室や広島大学の物性研究グループの知見を活かして、よりテクニカルな結晶育成や、異方的圧力の下での物性測定、国内外の大型施設での微視的実験など、自分の軸を大切にしつつも、研究の裾野を少しづつ広げていこうと考えています。
研究者として心掛けていること (Message as Scientist)
異分野を意識すること
現在、様々な分野の研究が先鋭化しており、そこで新しい発見をするには、並々ならぬ努力や才能、運が必要なことが多いでしょう。そこで、私のような凡人が新しい価値を生み出すには、異分野のコミュニケーションが重要だと考えています。そこで、自分の専門とは関連の薄い分野の常識が、自分の研究内容とどのようにリンクしているかを考えるよう心掛けています。 そして、自分にとって非常識だったとしても、むしろ非常識なところにこそ、ブレイクスルーに繋がる発見が眠っているかもしれません。
人と違うこと
すでにその重要性が認知されている分野に新しく飛び込むのは危険だと考えています。なぜなら往々にして、そのような分野は競争が激しく、優秀な人間が数多く参入しており、すでにレッドオーシャンであることが多いように思えます。むしろ逆に、そんなことをやっても意味ないよ、何やってんの?と怪しまれるところにこそ、新しい発見があると考えています。既存の価値感に乗っかるのではなく、新しい価値を創り出すためには、皆が右を向いて走っているときに、ひとりだけ左に向かって突っ走るような覚悟こそ大事ではないでしょうか?
楽しむこと
近年、AIを始めとしたテクノロジーの発達が著しく、昨日まで価値のあったものが急に失われることが起こり得ます。そんなときでも、自分自身が楽しんで納得感をもって研究できれば、何があっても後悔は少ないでしょう。また研究は失敗も多く、思ったとおりの結果が得られないことも多々あります。そんな失敗の過程や、回り道をしたことも含めて楽しむことが、長く研究を続けるコツではないでしょうか? そして、その楽しそうな姿を見せることも、研究者の重要な役割だと考えています。
人のこだわりを尊重すること
研究への取り組み方や、その成果である論文には、その研究者の個性や人生観が詰まっています。それは、ちょっとした実験の所作や、データの見方などの細部にも、現れている気がします。それは研究に限らず、その人の数多の失敗や成功体験、人生経験に基づくものであり、その背景を理解し、尊重するようにしています。一方で、自分自身も、他人から見ると無駄にこだわっている部分があるかもしれませんが、それを押し付けないよう心掛けています。