研究内容 (Research Work)

 希土類化合物の磁性と伝導に興味を持って研究をしています。希土類元素のもつ内殻の f 電子は、その希土類イオンの周りによく局在するため、たとえ金属であっても、その磁気モーメントによる磁性が現れます。中でも、セリウムなどの一部の元素は、その f 電子のエネルギーがフェルミエネルギーと近く、f 電子と伝導電子と量子力学的に混ざり合うため、非従来型の超伝導などの強い電子相関による量子凝縮相が実現します。また近年、遷移金属化合物において、スピン軌道相互作用に基づく新しい物理が続々と展開されていますが、4f 電子系はスピン軌道相互作用の強極限として知られています。この強いスピン軌道相互作用がもたらす一例として、f 電子の異方的な電荷/磁荷分布である多極子モーメントが秩序変数になることがあります。

 私は、希土類化合物の簡単な単結晶育成から、 0.1 K 以下までの低温、磁場中での磁化や比熱などの物性測定を中心に行っており、そこから普遍性や多様性に迫ることを意識しています。最近では、所属研究室や広島大学の物性研究グループの知見を活かして、よりテクニカルな結晶育成や、異方的圧力の下での物性測定、国内外の大型施設での微視的実験など、自分の軸を大切にしつつも、研究の裾野を少しづつ広げていこうと考えています。

研究活動において大切にしていること

 強相関 f 電子系は1980年代から続いている比較的成熟した分野です。そのため、今からそれだけでブレイクスルーを起こすのは、大変かもしれません。そこで、自分の専門とは関連の薄い分野を浅くとも理解し、そこでの常識が、自分の研究内容とどのようにリンクしているかを考えるようにしています。 そして、自分にとって非常識だったとしても、むしろ非常識なところにこそ、新しいモノの見方や物理が眠っているかもしれません。

 研究への取り組み方や、その成果である論文には、その研究者の個性や人生観が詰まっています。それは、ちょっとした実験の所作や、データの見方などの細部にも、現れている気がします。それは研究に限らず、その人の数多の失敗や成功体験、人生経験に基づくものであり、その背景を理解し、尊重するようにしています。一方で、自分自身も、他人から見ると無駄にこだわっている部分があるかもしれませんが、それを押し付けないよう心掛けています。

 研究はうまくいかないことがほとんどです。また、締め切りに間に合いそうもないこともありますし、トラブルが発生し、周りのみんなが動揺することもあるでしょう。そんな時にこそ、冷静に、無茶をせずに取り組むことが大切です。すると、ピンチをチャンスに変える良いアイデアが出てくるかもしれません。