YANS2019 ナイトセッションNLP若手の悩めるキャリア
YANS2019では、懇親会後のナイトセッションのひとつとして「NLP若手の悩めるキャリア」というタイトルのパネルディスカッションを開催しました。
本パネルディスカッションでは2時間の時間を設け、若手学生・研究者・技術者の方を対象とした「将来のキャリア」に関する疑問・不安な点の解消の手助けとなるよう以下のNLP分野の最前線で活躍する5名の方々(敬称略)にパネリストとして登壇して頂きました。
- 高瀬 翔(東工大)
- 梶原 智之(阪大)
- 欅 惇志(デンソーアイティーラボラトリ)
- 舟木 類佳(LegalForce)
- 萩行 正嗣(ウェザーニューズ)
当日は前半の1時間で各パネリストの自己紹介と各々の現在・将来のキャリアに関する思いを披露していただき、後半の1時間では事前に収集したキャリアに関する質問と会場の皆様からの質問をその場で取り上げ議論を行いました。当日の様子について全てとまではいきませんが議事録をまとめましたので、以下で公開いたします。
自己紹介
【高瀬】
・なぜ博士?
- そもそも開発が自分に合わなかった。評価として「研究をして論文を書く」というのはハックしやすいから良かった
・なぜ博士取得後にNTT CS研?
- インターンをしていた頃のメンター(鈴木潤さん)に誘われたから
- 研究がしたい(大学は忙しそう)
・なぜNTT CS研をやめてアカデミアへ?
- 人:鈴木潤さんが異動したから
- キャリア:選択肢を増やしておきたかった。大学教員になりたい場合、CS研では授業経験、研究資金集めの経験をしづらい。人の多い東京へ
- 生活:職場の立地が厳しい
・NTT CS研のいい点悪い点
- 賢い人がいっぱいいる、資金が潤沢
・ビッグラボ(大学)のいい点悪い点
- 人:よくも悪くも学生が多い
- 資金:予算が取れないと維持できない
- 制度:労働契約がガバガバ
・研究所と大学の違い
- 研究するなら研究所、教員(教育をしたい)になりたいなら大学
・学生へのアドバイス:
- 研究したいなら研究所に研究インターンがおすすめ
【欅】
・これまで典型的なアカデミックキャリアを歩んできた。この頃はNLPではなく情報検索の研究に従事
・なぜアカデミアから現在の企業に転職したか?
- 人:尊敬する同僚、関連領域のすごい人と研究がしたい
- 環境:社風が自由で研究者をリスペクトしている
・裏を返すと以前の職場では上記が満たされない
- 時間:大学は学会活動が多すぎる、謎の事務処理(研究が全然できない)
- 人:一人でできることの限界
- 環境:アカデミア特有の閉塞感
【舟木】
・就職前
- たくさんのインターンシップとアルバイトをした
- 趣味でたくさんのシステムを作った
- ゼロから新しいものを作ることの楽しさ。この頃から起業も考えていた。
- 社会人博士を少し検討して諦めた
- EMNLP(トップ国際会議)に採択されて自信がついた
・就職後
- はじめに入社したリクルートで研究とビジネスとのギャップが深いことを学んだ
- LegalForceへ加わる決断
- 同時に社会人博士に(理由はディスカッションで)
【梶原】
・これまでの進路選択の決め手
- 高専:勉強と趣味(剣道)のレベルが両方高い
- 長岡技科大:学費無料、山本研の先輩の目が輝いていた
- 首都大学東京:トップ会議が当たり前みたいな研究室がよかったので首都大の小町研へ。東北大の乾研も検討したがやっていく自信がなかった。都内だと剣道に通いやすい
- 阪大:阪大の荒瀬研が一番研究テーマの好みが合いそうだった。乾研も検討したがやはり自信がなかった。大阪も剣道に通いやすい
- 将来:最終的には地元(四国)の剣道の道場を継ぎたい。四国にNLPできる企業がある保証がないが大学は残っていると思うので今はアカデミアでキャリアを積んでいる
【萩行】
・AI冬の時代はつらい
・なぜ企業へ就職?
- D生活を通じて研究職に向いてないと思った。論文を書くにも発表をするにも英語ができないとそもそも話にならないが自分は得意な方ではなかった
- 「論文を書くため」の研究が自分にはできない
- 将来への不安(任期付ポストを渡り歩く不安)、そもそも研究のアイデアが出続けるか?
- アカデミックを飛び出した研究室の先輩の存在
・そもそもなぜD進?
- 金銭的心配はあまりなかったから
- 修士の肩書きだけではNLPを飯の種にするのは無理だと思った
・今となってみて研究職じゃなくてよかった?
- YES。NLPをずっとやるのは厳しい。他のこともできる
【博士号は取っておいた方がいい?】
高瀬:仕事による(研究職したいならとるといいと思う。でも日本は微妙。余裕があればとったらいいと思う)
欅:取ってた方がいい。就活で有利。
舟木:取れるなら取っておいた方がいい。ビジネスやってると博士号が欲しい時がある。
梶原:博士号が必要な選択肢をとる可能性があればとればいい。
萩行:博士号よりもアカデミックライティングのようなのを身につければどっちでもいいと思う。海外での反応は「博士号すごい!」となるので新鮮。
・修士号のみとの待遇と区別はある?
萩行:変わらない。実力。
欅:取ってなくてもデメリットはない。→給与のベースは上がる。
舟木:待遇の区別はない。実力。
高瀬:NTTのポスドクは博士取らないと無理(ポストドクターなので)。ポスドクの給料は高い。
・社会人になった後に博士号を目指す場合、社会人ドクターか、会社をやめて入り直すか。
舟木:社会に一回出て就職する方がビジネスの場面を知れていいと思う。安全(お金)をとって自身は社会人ドクターに。
→高瀬から質問:「会社から費用負担してくれる?」
舟木:LegalForceは出してくれない。リクルートは出してくれる人もいる。
萩行:出ない。どのくらい研究に費やしても許されるかは会社による。
【NLPは今後継続して需要は高い?】
萩行:思ったほど高くないと思う。人とコンピュータのインタラクトは言語が全てじゃない。人と人とは言語だけど人とコンピュータのインタラクトを考えると言語だけじゃなくね?ってなる。どっかで需要ががくっと落ちるのでは?
梶原:需要が無くなってもいいように大学教員を目指してる。
高瀬:専門ではない人が思っている以上にNLPは出来ているわけじゃない。(研究としては?)粛々とできること出来ないことを考えてやっていくだけ。
欅:いい自然言語処理を扱っていくのは必要。
舟木:物を作る方がNLPよりも重要。NLPだけはつらい。
萩行:何でNLPでやるのかおろそかにしがち。なぜ自然言語がいいのか考えるべき。
・研究におけるNLPとビジネスにおけるNLPの違いは?
萩行:稼げるかどうか。研究ではSOTAとの微妙な差を求めればいい。ビジネスでは歴史(ルールベースから)を知る必要がある。
舟木:ビジネスでは速くすぐ作ることが重要。あとはお金になるか?(数%精度が変わるだけだと微妙)営業も自分でやらないといけない。
欅:まだ実務していないのでコメント控える
【はじめは大企業に入るべき?それともベンチャー?】
舟木:能力重視で伸びるとこがいい。実力(なのでベンチャー)。大企業は転職が有利。
萩行:大企業は中途は難しいので、両方したいなら大企業→ベンチャー。大企業はお金が多いので自身の能力を過信しがちになる。
梶原:大学最高。ビジネスとかを考えなくていい。自分が価値があると信じていることができる。
高瀬:資金等は大企業の方が大学より良い。大学は国からもらえる少額のお金の中でやりくりしないといけないので。
・周りにNLPができる人が多いとこに入る方がいいか?それとも布教していくのがいいか?
萩行:自分はぼっち派。ぼっちでもいいから来てくれというとこがいい。
舟木:成長を目的とするなら周りにいた方がいい(リクルートでの経験)成果を出すのは難しい。いないとこだと頑張れる。自分でやっていく意思があるならぼっち派でもやっていくことはできる。
【会場からの質問】
・現在の年収は?(具体的な数字はぼかしました)
高瀬:XXXくらい。自分の場合は教授に裁量があったので交渉次第?
欅:東工大でも独身男性なら十分な額もらえる。現職はそれ以上
舟木:リクルートの新卒+XXX以上
梶原:XXX万
萩行:XXX万弱
佐藤(PFN):PFNは収入を周知しないよう言われている。人生はお金じゃない。
・博士課程でのストレス発散、メンタル管理
萩行:行きつけの居酒屋で飲んで博士課程知らない人に「すごいね」と褒めてもらう。
梶原:趣味を持つ。同じ年代の人たちと交流する(例:NLP東京Dの会)
欅:助教の面倒見がよかった。
・トップカンファレンスにバンバン通せるような研究室にするのは?
高瀬:教授、准教授、助教が拙いとまずい。
萩行:思ったことを素直に言える環境は大事。
赤崎(司会):普段のミーティングなどで教員だけでなく学生が積極的にコメントしたり、投稿前の論文を添削し合うような環境が大事。
梶原:研究室の外に師匠をつくるのは大事(インターンとかで作る)
・日本語NLPに取り組むに当たって
萩行:日本語NLPをやると国際会議に通らないは嘘。「日本語にはこういう難しさがある」みたいなのをと主張してちゃんと書くべき。なぜ日本語で研究しているのかを明確に。
高瀬:日本語NLPの論文は「こういうモデルをやってみました」が多い。日本語特有の問題に着目してやるべき。
欅:情報検索では各国の特性(文化)ごとに振る舞いが異なることが報告されていて、NLPでもその辺りのことも考慮してロジックを考えることも重要だと思う。