私たちの研究室では、「教育を通じて社会や個人の課題を解決する」ことを共通の基盤としています。
教育とは、知識や技術の伝達にとどまらず、人間の成長・関係・社会構造をつなぐ営みです。とくに、医療従事者に対する効果的な教育は、人々の健康と福祉の向上に直結すると考えています。その一方、EBE(Evidence based education)のの観点から見ると、医療専門職教育の領域には、なお多くの課題が残されています。 医療従事者の教育を科学的に探究することは、人々の健康を支える新しい形の「社会的予防」でもあります。
こうした教育の多層的な性質を明らかにするために、実践の課題解決を基盤としながら、教育を次の三つの視点から探究しています。
主題:学生のモチベーション、多様な動機づけの理解、非認知能力の形成
キーワード:自己決定理論、レジリエンス、学修者の内的成長、自己調整学習
学ぶ意欲の背景には、自己理解・社会的関係・成功体験など、心理的要因が複雑に関わっています。
大学全入時代を迎えた現代では、一意的に知的教育を施すだけでなく、学生の状態を把握し、適切に指導する技能が大学教員にも求められています。
本研究では、理学療法学生を中心に、入学動機・学修意欲・主観的満足度の変化を追跡し、学生が「なぜ学ぶのか」を科学的に明らかにしています。 こうした研究を通じて、学生の内的動機づけを理解し、より効果的な学修支援の在り方を探っています。
代表的な論文
坂本祐太,藤田大輔,玉木徹,駒形純也,三科貴博,髙村浩司. 臨床実習実後の主観的満足度は学生のMotivationのタイプにより関連する尺度が異なる-主観的満足度とAcademic motivation scaleを用いた縦断的観察研究-. リハビリテーション教育研究,2020;26,72-77.
主題:相互評価(peer assessment)、貢献度の可視化、協働学習の分析、主体的学修
キーワード:教育評価、アクティブラーニング、グループダイナミクス、学修成果の見える化
学生がどのように学び、どのように他者と関わっているかを「見える化」することは、教育改善の出発点です。
本研究では、ドット投票法を用いた学生相互評価(Contribution-PAAS)を開発し、グループ学習における貢献度の分布や協働の質を定量的に分析しています。目的は、単なる点数化ではなく、協働学習の中で「互いに成長を支え合う学び」を設計することです。
代表的な論文
Sakamoto Y, Komagata J, Otsuka A, Fukuda K
Visualizing contribution levels in group programs: a dot-voting peer-assessment approach.
Journal of Applied Research in Higher Education. 2025: on line. https://doi.org/10.1108/JARHE-07-2025-0556.
教育心理学、教育評価は、我々の研究における相互に関連する側面を表しています。それぞれが人間の学修の異なるレベルを探求する一方で、これらの領域は共通の基盤を共有しています。それは、個人の成長、集団的学習、社会的幸福を結びつける教育実践の追求です。
心理学的、評価的、文化的視点の統合を通じて、当研究室は専門的能力と人間の繁栄の両方を育む教育の設計を目指しています。