研究室の生体・免疫研究では、食生活と免疫反応の関係に焦点を当てています。現代の食環境では、高脂肪食が慢性炎症や生活習慣病の発症に関係していることが知られています。
私たちはそのメカニズムを明らかにするため、高脂肪食が腸管免疫にどのような影響を及ぼすかを研究しています。
主題:高脂肪食が腸管免疫に及ぼす影響の形態学的・免疫組織化学的解析
キーワード:高脂肪食、肥満、糖尿病、腸管免疫、B細胞、形質細胞、In vivo cryo technic、免疫組織化学、臓器連関
主に、腸管の組織変化や、腸管のリンパ球を中心とした分布と局在変化を解析しています。
研究では、In vivo cryo technic(生体凍結固定法)を用いて、組織を迅速に固定することで、体内に近い状態での免疫細胞の配置を観察しています。これにより、従来の化学固定法では捉えにくかった生理的な免疫応答の「現場」をより正確に評価することができます。
組織解析には免疫組織化学的手法を用い、B細胞や形質細胞、マクロファージなどのマーカーを染色し、腸管粘膜および関連リンパ組織の反応を可視化しています。
特に関心をもっているのは、腸管という局所的な免疫の場が、どのようにして上流のシグナル(神経・代謝・脾臓など)と連動し、全身の免疫バランスに影響を与えるのかという点です。腸と他の臓器との臓器連関(organ crosstalk)を通じて、「食」と「免疫」の接点を分子・組織レベルから探っています。
代表的な論文
Yuta Sakamoto, Masatoshi Niwa, Ken Muramatsu, Satoshi Shimo. Effect of high-fat diet on IgA+ cells and BAFF/APRIL in small intestinal villous lamina propria of mice. Cellular Immunology. 2025, 409–410,104911. https://doi.org/10.1016/j.cellimm.2024.104911
Sakamoto Y, Niwa M, Muramatsu K, Shimo S. High-Fat Diet and Age-Dependent Effects of IgA-Bearing Cell Populations in the Small Intestinal Lamina Propria in Mice. International Journal of Molecular Sciences. 2021; 22(3):1165. https://doi.org/10.3390/ijms22031165
この研究は、「食べること」と「免疫機能」の関係を基礎的な視点から理解する試みです。
日常的な生活習慣が体の防御システムにどのように影響するかを明らかにすることで、将来的には生活習慣病や慢性炎症の予防につながる基礎的知見を提供することを目指しています。