特別講演

力覚フィードバックを用いた人及びロボット間の遠隔協調と支援」

石橋 豊 氏

名古屋工業大学 教授

略歴

1981年3月 名古屋工業大学工学部情報工学科卒業
1983年3月 名古屋工業大学大学院工学研究科修士課程修了
1983年4月 日本電信電話公社(現NTT)武蔵野電気通信研究所
1993年4月 名古屋工業大学工学部 助教授
2000年6月 文部省在外研究員として10ヶ月間にわたりUniversity of South Floridaへ出張
2001年8月 名古屋工業大学工学部 教授
2003年4月 名古屋工業大学大学院工学研究科 教授
2005年4月~2006年3月 名古屋工業大学大学院工学研究科情報工学専攻長
2007年4月~2009年3月 名古屋工業大学工学部情報工学教育類長
2016年4月~2020年3月 名古屋工業大学しくみ領域長
2017年1月~2018年12月 IEEE Nagoya Section Chair
2020年6月~2021年5月 映像情報メディア学会東海支部長
2020年6月~2022年5月 映像情報メディア学会副会長

概要:
近年, ロボットの能力は大きく改善されてきており, 自律的に動作することが可能になりつつある. しかし, ロボット単独では作業できなかったり, 人の支援が必要であったりする場面も多い. 例えば, 高精度な手術を行う手術ロボット, リハビリを支援するロボット, 危険で人が容易に入れない, 宇宙, 深海, 廃炉となった原子炉などで働くロボット, 地震で被災した人や集中豪雨によって孤立した人を救済し, 物資(食料, 水, 衣類等)などを届けるレスキューロボットやドローン等は, そのような場面で活躍することが期待されている. これらのロボットは, 作業があらかじめ決まっていたり, 予想可能であるならば, 単独で高効率に作業することが可能である. しかし, 予想できないような状況においては, 人との協調や人による支援を必要とする. このとき, 視聴覚情報に加えて, 触力覚情報を用いることによって, ロボットの能力を大きく改善することができると考えられる. 本講演では, 力覚フィードバックを用いて人と遠隔のロボットとの協調やロボットの支援に焦点をあてる. 力覚フィードバックを用いることによって, 人は, 力覚センサを有するロボットが当たったり, 触ったりする物体からの反力を触覚インタフェース装置を介して感じることができるため, 作業の高効率化と高精度化を実現することが可能である. 特に, 複数のロボットを用いることによって, 人やロボットだけでは不可能な様々な作業を行うことができる. しかし, 触力覚情報がインターネットのようなネットワークを介して転送されるとき, サービス品質(QoS: Quality of Service)やシステムの安定性が大きく劣化する可能性がある. 力覚フィードバックを用いた人とロボット間の高品質で高安定な協調と支援を実現するためには, これまで独立に研究されてきたQoS制御と安定化制御を統合して行うとともに, 拡張する必要がある. 本講演では, これらの研究のために構築した, 力覚フィードバックを用いた遠隔ロボットシステムを紹介し, これまでの研究状況と今後の研究の方向性について解説する.