「これでどうでしょう?」
自身の顔よりも大きなタブレットを掲げ、ルールーが画面を見せてくる。
【後世へとこの世界を繋いでいこうキャンペーン!】と元気に飛び出した文字の周りにはキャッチーなキャラクターが笑顔で宇宙船に乗った人々を送り出している。
正直言うと趣味が悪い。
ルールーが悪いのではない。このキャラクターの顔が気味悪くて俺はどうにも好きになれないというだけだ。
「うん、中々に上々なのではないだろうか?」とはウェルス。
こいつの話すことの6割が中身のないことを俺は知っている。
「また適当なことを言ってますか!今に見ていてください。いずれ国際宇宙法違反になります!いいえ、明日にでも!」
ルールーはこう言うが、脅したところで態度が変わることはない。
今も「元気がいいね」だの空虚な言葉を述べている。
作成しなければならない課題を放置して喧嘩を始めた彼らから視線を外し、一応ルールーの直属の上司として目を通す。
俺たちの所属するこの組織は人民のためのわかりやすい文書を!(人民に読めぬ文書は文書にあらず)ということでここ数年はキャッチーでポップな見た目になるよう、イラストを多く入れるなどの小細工をする必要があった。
俺が作らなければならなかった当初はクソッタレだの思わないことはなかった。当然、ルールーが入ってきてから全てを押し付けている。
おかげで憑き物が取れた。(要約:横の俺の望まない隣人が茶々を入れる極めて無駄な時間が減った)
俺の趣味に合わないと言うだけで、上からの数多のしょうもない命令の内では比較的嫌いではない。趣味に合わない上俺の得意分野ではないというだけで伝えることを諦めずに創意工夫をするその点は寧ろ気に入っていた。
「誤字脱字、だな。こことここ。とっとと修正しておけ」
ルールーはセンスがいい。お上がこれを棄却するようであれば脅したって誰も文句は言わないだろう。
まぁ、冗談だが。