2026年度は以下のセミナー、イベントを企画しております。詳細は、本サイトのほかメーリングリスト、Facebookでお知らせいたします。過去の開催情報は「過去のセミナー」と「要旨」ページをご覧ください。
7月 歌才湿原講演会
9月 湿地巡見
10月 セミナー
12月 セミナー・忘年会
2月 大沼研究発表会
3月 セミナー
第156回ウェットランドセミナー
※なお、講演後に懇親会を予定しています。参加ご希望の方は当日聞き取りさせていただきますので、お申し出ください。
【日時】2026年10月30日 (金) 18:00-19:30(延長時20:00まで)
((ご注意!))18:30以降は大学施設が完全施錠となります。参加される方は、18:30までにご入室ください。
【場所(予定)】北海道大学 農学部 N13階段教室
泥炭形成湿原の南限域の非石灰質地質上に分布する北海道低地湿原におけるリッチフェンの存在の検証
矢部和夫 札幌市立大学・名誉教授
要約
ヨーロッパおよび北米の泥炭形成湿原の群落は、pH と Ca–重炭酸塩アルカリ度により駆動される ボッグ–プアフェン–リッチフェンの勾配に沿って典型的に配列する。これに対し、北海道の低地湿原は非石灰質の火山性・堆積性基盤上に成立し、Caと Mg 濃度が極めて低い。そのため、リッチフェンの存在はこれまで確認されていなかった。本研究では、北海道にリッチフェンが存在するか、また湿原群落が世界的なフェン–ボッグ勾配とどのように対応するかを明らかにするため、7 地域の低地湿原における 400 の植生プロットと関連する水質化学変数を解析した。クラスター分析と nMDS オーディネーションにより、草状単子葉植物群落からミズゴケ群落へと連続する明瞭な群落勾配が示された。この勾配は pH、アニオン欠損、Ca および Mg 濃度の低下と強く関連しており、石灰質地質が存在しないにもかかわらず、北海道でも pH と Ca–重炭酸塩アルカリ度に基づく群落構造化システムが成立していることが示された。さらに、ヨーロッパの指標種を用いて北海道の群落を世界的なフェン–ボッグの枠組みに位置づけたところ、ボッグ指標種はチャミズゴケ群落に集中し、プアフェン指標種は草状単子葉植物群落の一部およびミズゴケ群落に出現した。一方これら以外の草状単子葉植物群落はボッグ、プアフェン、リッチフェンのいずれの指標種も含まず、Ca、Mg、HCO₃ 濃度(最高値)はヨーロッパの「中程度リッチフェン(moderately rich fens)」に相当したが、ヨーロッパや北米のリッチフェンの最高濃度値には大きく及ばなかった。優占種の種多様性や生産力のパターンも、リッチフェンの不在を支持した。以上より、北海道の鉱質性フェンは リッチフェンの化学的・植物相的特徴には到達せず、非石灰質条件下で形成される「中栄養フェンの地域的変異型」であると結論づけた。これらの群落を表す用語として Less-Calcareous Minerogenous Fens(LCMFs:低石灰質鉱質性フェン) を提案し、非石灰質基盤上で形成されるフェンを包含する世界的なフェン-ボッグ体系の枠組みの必要性を強調する