原子や分子、金属結晶などの物質は、電子がフェルミ粒子であることにより、量子論において波動関数が座標の入れ替えに対して反対称な多変数関数で表されます。このような性質を持つ最も単純な波動関数はいわゆるスレーター行列式で、ハートリーフォック法での計算に用いられます。その一方で、金属の超伝導相はいわゆるBCS状態で記述されるとされていますが、この状態に粒子数の固定を行ったものの一つにいわゆるAntisymmetrized Geminal Power(AGP)状態があります。AGP状態はその特殊な場合としてスレーター行列式を含むとされ、より広い波動関数の空間を記述していると考えられます。われわれは多数のAGP状態の重ね合わせで多電子系の記述を行う理論を提案し、分子系やハバードモデルでの計算を実際に行いました。十分多くのAGP状態を用いれば、大抵の多電子系は十分正確に記述できるとわれわれは主張しています。
これまでの発表論文:
Wataru Uemura and Takahito Nakajima, Phys. Rev. A 99, 012519 (2019)
Wataru Uemura, Shusuke Kasamatsu, and Osamu Sugino, Phys. Rev. A 91, 062504 (2015)
Wataru Uemura and Osamu Sugino, Phys. Rev. Lett. 109, 253001 (2012)