はじめに
「にほんごわせだの森」(以下、「わせだの森」)は、早稲田大学大学院日本語教育研究科(以下、日研)の科目の一つ、「日本語教育実践研究(1)」を履修する大学院生がつくる学びの場の呼称で、ここではゼロから教室を設計し、実際に活動を行います。時には、正式な履修ではないけれど日研に所属し「わせだの森」に興味を持つ大学院生も設計に加わります。そのため、この「はじめに」では、「わせだの森」という学びの場を設計して活動を行う主体をすべて実践者と呼ぶことにします。この実践者がつくる「わせだの森」には、これまで大学内外から日本人外国人を問わず多様な背景を持つ人たちが大勢参加してきました。よって、「わせだの森」の実践者たちは、この多様性に対応できるように、知恵を出し合い、時には異なる意見をすり合わせることに多大な努力をし、活動をつくりあげてきました。
「わせだの森」は、2006年秋に誕生し、2020年秋に15周年を迎えました。そこで、「わせだの森」で感じてきた実践者の想いをこの機により多くの方々と共有すべく、有志でweb版『もりぼん −「にほんごわせだの森」の実り−』を作ることにしました。そして、16編の原稿が集まりました。第一部は、「日本語教育実践研究(1)」指導教官であり、「わせだの森」を導き見守り続けた池上摩希子先生による「わせだの森」を生み出した経緯や想いを綴ったものとなります。第二部は、「「わせだの森」の実践」編です。第二部の執筆者たちは、当時の実践から見つけた、自分が大事にしたいことを振り返って語っています。第三部は、「「わせだの森」と今の私とのつながり」編です。第三部の執筆者たちは、それぞれの今の活動(教育実践、仕事、社会活動など)と「わせだの森」のつながりについて語っています。
編集部スタッフを含む執筆者にとっても、この『もりぼん −「にほんごわせだの森」の実り−』を作るプロセスは、「わせだの森」の過去と未来をつなぐ活動となりました。執筆者たちがどのような想いを抱き、実践にどのように取り組んだのか、そこにどのような意味を見出したのかを、ここにアクセスしてくださった読者の皆さんと共有したいと思います。「わせだの森」の過去と未来をつなぐ執筆者たちの活動に触れることが、皆さんご自身の実践を振り返り、前に進むきっかけとなるとしたら、これ以上嬉しいことはありません。
「わせだの森」は2019年度までは早稲田大学内の教室で対面で活動していましたが、2020年以降は新型コロナウィルス感染防止の面から、オンラインで活動をすることになり、遠方にいる参加者同士によるコミュニケーションの場に発展しました。実践は、状況に合わせながら常に更新していかなければなりません。今後も「わせだの森」はよりよい実践を考え続ける実践者に引き継がれ、多様性に対応する中で成長していくことでしょう。
「わせだの森」が誕生した経緯、コンセプト、活動についての詳細は以下を参考にしてください。
1.池上摩希子・いじょんみ・小島佳子(2017)「「教える/教えられる」関係を越える教室」川上郁雄(編)『公共日本語教育学−社会をつくる日本語教育』くろしお出版、pp.165-170
2.池上摩希子「日本語教育専門家の養成に求められるもの−「日本語教育実践研究(1);わせだの森」の実践から−」『早稲田日本語教育学』30, pp.23-27
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編集部一同より感謝をこめて
<編集部員>
いじょんみ、大戸雄太郎、大野のどか、大森優、小島佳子、塩島弥生、福村真紀子
<執筆者>
いじょんみ、伊吹香織、江森悦子、大戸雄太郎、大野のどか、大森優、岡田朋美、加藤駿、小島佳子、塩島弥生、寺浦久仁香、伝城里美、
中野裕美子、萩原ちはる、福村真紀子、山本由美子