情報デザインとは、「ほしい情報をわかりやすく手に入るようにする」ことです。
地下鉄の路線図、本の目次、お店のメニューなどでは、
必要な時に
適切な情報が
理解しやすいように
配置、表現されています。
それを実現するのが情報デザインです。
何かやりたいことがある、何か知りたいことがある。
その実現のためには情報が必要です。そしてその情報は以下の条件を満たす必要があります。
1. 見つかること
2. わかりやすいこと
3. 目的が達成できること
図にまとめるとこんな感じ。
例えば、九段下の駅を降りて武道館に向かおうとする人がいるとします。
その人が各場面でどんなことを考えるかというと、
シーン1 九段下の駅までは何線に乗ればいいのか知りたい。
シーン2 電車の中で、降りるのがこの駅でいいかどうか知りたい。
シーン3 ホームに降り、どっちに向かって歩けばいいか知りたい。
シーン4 改札を出て、どの出口に向かえばいいか知りたい。
シーン5 出口を出て、どの方向に向かえばいいか知りたい。
といったところ。それぞれのシーンでその人は、
シーン1 乗る路線を、駅のきっぷ売り場にある路線図で見つける
シーン2 ドア上部に表示される案内で、今着いた駅名「九段下」を見つける
シーン3 武道館のある改札口の方向を、ホームに掲示されている案内板で見つける
シーン4 改札を出て、日本武道館の文字と矢印を柱や壁のあちこちに見つける
シーン5 地上への出口を出て、日本武道館の文字と矢印を、目の前にある案内板で見つける
といったように、必要なシーンでそのときに必要な情報を見つけることができます。
どんなによくできた情報でも、その存在を認知できなければ価値なしです。
まずは必要な時に必要な人に届くこと。これが第一歩です。
それがなんなのか?何を表現しているのか?なんと書いてあるのか?
これらをぱっと見で理解できて初めて、人は有用な情報っぽいぞと判断します。
先ほどのシーンでいくと
シーン1 乗る路線が東西線だとすぐわかる
シーン2 今着いた駅が「九段下」だとすぐわかる
シーン3 ホームでは改札の方向が「日本武道館」の名称と矢印つきでよくわかる
シーン4 改札の外では武道館の方向が「日本武道館」の名称と矢印つきでよくわかる
シーン5 地上出口では武道館の方向が「日本武道館」の名称と矢印つきでよくわかる
といった具合です。乗る路線、降りる駅、目的地の方向。これらを、誰でもすぐにわかるように表現する。
移動しながら情報を入手したいという状況ですから、矢印や正確な名称を大きな文字で掲示するなどの工夫も必要になってきます。
ぱっと見ですぐわかる。これも重要なステップとなります。
これ、ちょっと聞くと当たり前に思えるのであまり注力されづらいことなんですが、最後の詰めでありそもそもの存在意義。最重要です。
その情報によって目的が達成できること。
どういうことかといいますと。
シーン1 路線図の文字が小さくて字が読み取れなかったら?
シーン2 駅名が表示されるタイミングが遅くて気づいたらドアが閉まってしまったら?
シーン3 ホーム内の案内表示の設置数が少なくて見当たる範囲になかったら?
シーン4 改札の外の案内表示の掲示位置が低く、ほかのお客さんの影で見えなかったら?
シーン5 地上出口の案内板がひどく汚れてて字が読めなかったり、台風で飛んできた枝で矢印の向きがとんでもない方向に曲がってしまっていたら?
いずれも、せっかくの情報が惜しくも肝心の目的達成に貢献できないのです。
どんなにわかりやすい表現でも、例えば以下のような観点をクリアしないと、肝心の目標達成に至らないのです。
1. 読み手が確実に読み取れるサイズであること
2. その情報を得たあとに行動し、十分に間に合う適切なタイミングで提供されること
3. ホームに数か所あればいい、ではなく、どの車両からであっても、降りた人が見渡した範囲内に見つかるような間隔で掲示があること
4. 混んでいる状況のであっても、視界に入る位置に掲示があること
5. メンテナンスがなされ、常に正しく表示されていること
情報の提供する側の人間は、つい
「これだけわかりやすければ伝わるだろう」
「こう提供すればいいはずだ」
と、情報自体や提供すること自体に目を向けてしまいがちです。
でも、視点をむけるべきは
「実際、その情報役に立ったの?」
「その人、武道館にいけたの?」
なのです。
情報デザインとは、人の「これをしたい」に対して役に立つ情報を届くようにすること。
情報そのものに目を向けるのでなく、人のしたいことに、その成否に、目を向け続ける必要があります。