ボルテックスフォーラム

The vortex forum of  Japan

フォーラムについて

 超伝導体における渦糸状態(混合状態)やこれに係る磁場中超伝導現象は、超伝導を基礎的な観点から理解する上で不可欠な情報を提供します。また、そこから得られる様々な超伝導パラメータの温度、磁場、物質、構造、形状等に対する依存性は新規超伝導現象の発見だけでなく超伝導機構解明にも重要な役割を果たすと考えられます。一方で、渦糸のピン止め機構解明や臨界磁場の上昇は、臨界電流の上昇を目指する線材応用にもつながり、磁束(渦糸)の量子化や渦糸流による電圧を記述するジョセフソン関係式はSQUIDやジョセフソン発振素子をはじめとする超伝導接合デバイスの主導原理でもあります。このような関係性より、超伝導研究は古くから、基礎・応用の垣根をこえてともに発展してきました。

 1986年の銅酸化物高温超伝導体の発見を契機として、新たな超伝導機構解明に対する研究が進展する一方で、渦糸状態の現象論的研究においても、銅酸化物の有する強い異方性、短いコヒーレンス長(長い磁場侵入長)、高い超伝導転移温度に起因する巨大熱ゆらぎの効果、およびこれに伴う従来にない渦糸相図が精力的に調べられ、これらを中心とした一連の研究は、「渦糸物理学(Vortex matter physics)」という独自の分野を形成しながら世界的に発展を遂げてきました。この間日本国内では、1992年より超伝導渦糸分野の基礎・応用に関わる研究者コニュニティーにより「渦糸物理国内会議」が毎年各大学・研究機関持ち回りで開催され、そこで生まれる議論や連携が日本の渦糸物理学の発展を支えてきました。このコミュニティーのメンバーは同時期(1994年)から開催されるようになった渦糸物理国際会議(International Workshop on Vortex Matter)にも多大な寄与をしています。

 近年、渦糸物理とこれに係る磁場中超伝導の研究対象物質や試料構造は、当初の中心であった銅酸化物超伝導体から、鉄系超伝導体、2次元超伝導体、メゾスコーピック超伝導体、ナノ構造超伝導体、トポロジカル超伝導体、微小接合等へと広がり、取り扱う物理現象も静的3次元渦糸相図や渦糸ピンニング、熱クリープ現象に加え、2次元磁束相図、量子クリープ現象、渦糸系動的相転移、ジョセフソンプラズマ、渦糸芯の微視的構造、マヨラナフェルミオン、空間変調超伝導等へと裾野をひろげつつあります。これと同時に研究者コミュニティーの顔ぶれも、それまでの銅酸化物超伝導研究者を中心とした人員から大きく変化し始めました。このような状況下、かつてのように基礎と応用研究者がその垣根をこえて自由に参画でき、密接な協力関係を維持しながら、研究分野の活性化と進展を図るための母体となる組織の必要性が要望されるようになってきました。2013年仙台で開催された渦糸物理国内会議において、このような目的を果たす組織として「ボルテックスフォーラム(準備会)」が試行的に組織され、2018年福島で開催された同会議において「ボルテックスフォーラム」として正式に発足することとなりました。

 本フォーラムは上記の目的に加え、研究分野の継続・発展を担う次世代の人材を育成することも目指しながら、渦糸物理ワークショップ等研究会の開催を中心とした活動を行います。