本サイトの運営を一部とする研究課題「科学における《価値中立性》理念に対する科学哲学的観点からの再検討」では、科学は社会的価値や政治的価値の影響を受けないとする《科学の価値中立性理念》の是非を主題的に検討します。科学哲学分野ではこの理念を十全に引き受けることは難しいという理解がおおむね標準化していますが、本研究課題では、この見解をひとまず受け入れた上で、《どのような価値判断の関与であれば許容可能か》という価値マネジメント問題に焦点化し、科学研究分野の多様性を踏まえた現状分析と規範的提言を目指します。
本サイトは、 日本学術振興会による「科学研究費助成事業(課題名「科学における《価値中立性》理念に対する科学哲学的観点からの再検討」2024.04.01-2029.03.31)」の助成を受けています。
本サイトでは価値中立性に関する重要文献のレジュメを公開しております。毎月2~3本ほど追加していく予定です。
代表 :井頭昌彦(一橋大学)
分担 :二瓶真理子(岩手大学)
分担 :清水右郷(宮崎大学)
研究員:征矢法子(一橋大学)(2025年5月~)
研究員:佐藤達之(北海道大学)(2025年5月~)
研究員:守博紀(一橋大学)(2024年5月~2025年3月末)
研究員:伊沢亘洋(京都大学)(2024年5月~2025年3月末)
[価値中立性文献1](公開日:2025/07/24)
Bradburn, Norman M., Nancy L. Cartwright, and Jonathan Fuller “A theory of Measurement” In McClimans, Leah, ed. 2017. Measurement in Medicine: Philosophical Essays on Assessment and Evaluation. London, England: Rowman & Littlefield International.
社会科学、特に医学の分野における測定と評価に関連する哲学的問題を扱った論文集『Measurement in Medicine: Philosophical Essays on Assessment and Evaluation.』の一つ。本論では社会科学、医学分野で特有の混雑概念(a ballung concept)を測定する際の問題を扱っている。
[価値中立性文献2](公開日:2025/07/24)
Leah M. McClimans pp. 89-107 “Ch6 Psychological Measures, risk, and values” In McClimans, Leah, ed. 2017. Measurement in Medicine: Philosophical Essays on Assessment and Evaluation. London, England: Rowman & Littlefield International.
社会科学、特に医学の分野における測定と評価に関連する哲学的問題を扱った論文集『Measurement in Medicine: Philosophical Essays on Assessment and Evaluation.』の一つ。近年測定理論分野においては実在論的立場が取られており、認識的価値の観点から古典的テスト理論が批判されているのに対して、本論では古典的テスト理論だけが持つ非認識的価値に基づく良さがあり、このことが患者報告による臨床アウトカム評価の文脈で認識的価値と衝突していることを指摘する。
[価値中立性文献4](公開日:2025/08/13)
Alexandrova, A. 2018. “Can the Science of Well-Being Be Objective?” The British Journal for the Philosophy of Science 69 (2): 421–45
社会科学では、特定の規範的前提を採用することがある。このような規範的前提に基づく主張(混合主張)が客観的であることを説明するような、既存の客観性概念はない。本論では混合主張の客観性として熟議的手続きによる客観性を提案する。
[価値中立性文献5](公開日:2025/08/13)
Wijsen, Lisa D., Denny Borsboom, and Anna Alexandrova. 2022. “Values in Psychometrics.” Perspectives on Psychological Science: A Journal of the Association for Psychological Science 17 (3): 788–804.
本論では心理測定における4つの価値負荷性を明確する。
質的ではなく量的な個人差の概念化
測定における客観性の追求
測定における公平性(fairness)の追求
真理よりも有用性を優先すること
どのような価値が影響しているのかについての議論へ繋げることで、心理測定学が心理学と社会において、より思慮深いものになるために建設的な提案を行う。
[価値中立性文献16](公開日:2025/05/20)
Kincaid, Harold, John Dupré, and Alison Wylie (2007), 'Introduction', in Harold Kincaid, John Dupré, and Alison Wylie (eds.), Value-Free Science? Ideals and Illusions, New York: Oxford University Press, 3–24.
2007年に出版された論集『価値自由な科学?――理想と幻想』の編者たちによる序論。論集のタイトルに付された疑問符に示されているように、本論集所収の論文はすべて価値自由な科学という理想に疑問を投げかけており、本序章では〈価値自由という理想を問題にする理由〉、〈価値自由という理想をめぐる議論の歴史〉、〈価値自由という理想の批判の論点と議論タイプ〉をまとめ、最後に所収論文の議論を紹介している。
[価値中立性文献17](公開日:2025/05/20)
Dupré, John (2007), 'Fact and Value', in Harold Kincaid, John Dupré, and Alison Wylie (eds.), Value-Free Science? Ideals and Illusions, New York: Oxford University Press, 27–41.
2007年に出版された論集『価値自由な科学?――理想と幻想』所収の第一論文。論集全体のなかでは、事例研究を主として扱う第一部の議論に位置付けられ、とくに、生物学と経済学の概念の価値負荷性の観点から事実と価値の区別の妥当性を批判的に吟味している。
ジョン・デュプレ(John Dupré)は主に生物学の哲学を研究する科学哲学者。1981年にケンブリッジ大学で博士号を取得し、スタンフォード大学哲学科の教員を経て、1996年にロンドン大学バークベック・カレッジ哲学教授およびエクセター大学上級研究員のポストに着任する。2000年にイギリスのエクセター大学で哲学の学士課程が新設されたときにエクセター大学の科学哲学教授に任命された。2002年、生命科学研究センターであるエジニス(Egenis)の専任ディレクターに就任し、2022年まで務めた。2010年アメリカ科学振興協会フェロー、2011年から13年まで英国科学哲学会会長、2021年から22年まで科学哲学会会長(参照:https://experts.exeter.ac.uk/86-john-dupre(2025年1月3日最終閲覧)。
[価値中立性文献18](公開日:2025/05/20)
Root, Michael (2007), 'Social Problems', in Harold Kincaid, John Dupré, and Alison Wylie (eds.), Value-Free Science? Ideals and Illusions, New York: Oxford University Press, pp. 42–57.
2007年に出版された論集『価値自由な科学?――理想と幻想』所収の第二論文。論集全体のなかでは、事例研究を主として扱う第一部の議論に位置付けられ、とくに、社会問題の研究をめぐる社会学史を概略したうえで、社会的に有意義な社会問題の研究にはその問題について社会学者自身が下す価値判断が不可欠である、と主張する。本論の大きな部分は《社会問題の社会学史》にあてられる。まず、《社会学者は社会問題を扱うときに価値判断を下すべきかどうか》という問いについて、ウェーバーの価値自由およびその継承者であるマートンとブルーマーの見解を概略したうえで、さらに、ウールガーとポーラッチの論文によるブルーマーの定義主義的アプローチ批判を解説し、最後に、両者の見解に反して価値判断を下したがゆえに社会的意義をもちえた研究の事例を紹介して、合理的選択理論のモデルにしたがって、社会学者が調査対象者の善悪の態度を記述するだけでなく評価もできること、またそのためには、研究者自身の道徳的コミットメントが不可欠であることを主張する。
著者のマイケル・ルート(Michael Root)は形而上学、認識論、社会科学の哲学を専門とする哲学者で、ミネソタ大学の哲学科教授を務めた。生物学や医学における人種の影響についても研究している。主な著書に、Root, M. 1993. Philosophy of Social Science: The Methods, Ideals, and Politics of Social Inquiry. Oxford: Blackwell. がある。
2007年に出版された論集『価値自由な科学?――理想と幻想』所収の第三論文。論集全体のなかでは、《事実と価値の区別の再検討を促す事例研究》を提示する第一部の議論に位置付けられ、とくに、共著者それぞれが専門にしている考古学と生物学の事例から、(1)価値コミットメントが認識的価値の観点からの貢献を果たしている事例および(2)フェミニスト・コミットメントによって文脈的価値の役割が示された事例をそれぞれ提示している。
アリソン・ワイリー(Alison Wylie)はカナダのブリティッシュコロンビア大学哲学科教授で、社会科学の哲学、フェミニスト科学哲学、考古学の哲学、研究倫理などを専門とする哲学者。事例研究を主たるアプローチとして、考古学における証拠に基づく推論、客観性の理想、研究者の説明責任といった問題に焦点を当てている。
リン・ハンキンソン・ネルソン(Lynn Hankinson Nelson)は米国のワシントン大学哲学科の名誉教授で、認識論、フェミニズム、生物学の哲学などを専門とする哲学者。
また、両者は2009年に『ヒュパティア』誌の「フェミニズムと科学」特集号の共同編集を担当している(https://onlinelibrary.wiley.com/toc/15272001/2004/19/1)。
2024年5月29日(水)10:00-11:00 2024年度第1回レジュメミーティング
2024年6月25日(火)17:30-18:30 2024年度第2回レジュメミーティング
2024年8月26日(月)10:00-11:00 2024年度第3回レジュメミーティング
2024年10月2日(水)10:00-11:00 2024年度第4回レジュメミーティング
2024年10月28日(月)13:00-14:00 2024年度第5回レジュメミーティング
2024年11月25日(月)14:00-15:00 2024年度第6回レジュメミーティング
2024年12月16日(月)16:00-17:00 2024年度第7回レジュメミーティング
2025年1月29日(水)10:00-11:00 2024年度第8回レジュメミーティング
2025年2月24日(月)10:00-11:00 2024年度第9回レジュメミーティング
2025年3月27日(木)14:00-17:00 研究会(開催場所:一橋大学国立東キャンパス第3研究館3F研究会議室/報告者:清水右郷,井頭昌彦)
2025年3月31日(月)14:00-15:00 2024年度第10回レジュメミーティング
2024年5月19日(月)11:00-12:00 2025年度第1回レジュメミーティング
2024年6月24日(火)15:00-16:00 2025年度第2回レジュメミーティング
2024年7月22日(火)13:00-14:00 2025年度第3回レジュメミーティング
準備中
守博紀 (morihiromori.nori*gmail.com)と伊沢亘洋(koyomikoyo*gmail.com)が管理しています。
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