新規汚染物質(Contaminants of Emerging Concern, CECs)は、その多くが水質基準に含まれていませんが、近年の研究で人の健康や生態系に悪影響を及ぼす可能性が指摘されている物質で、医薬品類、抗生物質、人工甘味料、有機フッ素化合物(PFAS)など、多種の化学物質が含まれます。また、一部の医薬品類や人工甘味料等は人間のみが使用するため、水環境中において人間由来の汚染を示す優秀な汚染マーカーとしても役立ちます。当研究室では、CECsの水環境や水システムにおける存在実態と光分解・微生物分解といった環境中挙動の解明や、CECsを汚染マーカーとした水域汚染機構の調査に取り組んでいます。フィールド調査、室内実験、環境動態モデルといった複数のアプローチにより、水中CECsの管理・制御に向けた研究を行っています。
学校やスポーツクラブなどのプールは、子供や高齢者など感染症上のハイリスク群の利用が多く、糞便汚染等によりプール水を介した集団感染が発生することがあります。また、プール水は冬季などの非使用時でも非常時の生活用水に使われることがあります。このため当研究室では、平時・非常時両方のプール水利用における安全・安心の確保のため、プールの水質とその季節変化の実態や、屋外プール・屋内プール・ジャグジーといった施設特性や利用者の特性が水質に及ぼす影響を明らかにする研究を行っています。医薬品・人工甘味料等、これまで我が国で報告のない物質をプール水中の人為的汚染のマーカーに用いています。調査結果はプールの管理者にフィードバックしながら、施設や利用者の特性に応じた注意喚起や汚染防止対策、水質管理方法、災害時使用における安全確保方法等を提案していきます。
光触媒による水処理技術は、光触媒が光のエネルギーを使って水中で生成する各種の活性酸素種によって、汚染物質を酸化・分解するものです。これまで、光触媒による反応には紫外線(UV)が利用されてきましたが、近年は可視光線を利用できる光触媒の開発が進んだことで、光触媒が活躍できる場がより増えています。当研究室では、光触媒や各種の高機能素材、オゾン等を利用し、有機色素、ヒ素、医薬品・抗生物質といった幅広い物質を分解・吸着する技術を研究しています。浄水や下水の高度処理に相当する促進酸化処理や、途上国などの小規模水システムといった様々な場面を想定し、経済的で環境負荷が小さく、かつハイパフォーマンスな水処理技術の開発に取り組んでいます。