アーカイブ

本イベントは、おかげさまで大盛況ののちに無事終了いたしました。
Youtube にてアーカイブ動画が残っていますので、ご覧になりたい方はアクセスしてみてください。

https://www.youtube.com/watch?v=6Yij2rj59do&feature=youtu.be

総長祝辞

東京大学総長の五神です。

このたび、学士・修士・博士の学位を取得した皆さんに、東京大学の教職員を代表し、心からお祝いを申し上げます。また、ここに至るまで皆さんの成長を支えてこられたご家族やご友人の皆様方にもお祝いを申しあげるとともに、これまでのご支援に対し、感謝の意を表します。

新型コロナウイルス感染症はまたたく間に世界全体にひろがり、経済や社会に大きな影響を与えています。国内外でこの感染によって多くの方々が亡くなられました。謹んでご冥福をお祈りすると共に、ご家族の方々にお悔やみを申し上げます。
この感染拡大に伴い、各種行事の中止・縮小が相次いでいます。本学でも、卒業式と学位記授与式を大幅に規模縮小した上で実施いたしました。また、世界では渡航が制限され、外出禁止にまで至った地域もあります。

一方で対策として、様々な会議がオンラインで開催されたり、また在宅や遠隔で仕事をしたり学習したりする機会も増えています。しかしそれらを実際に活用するなかで、創造的に会話をすることや、実際に大勢で集まった時のような、熱気を共有する感覚を持つことが難しいことなど、既存のシステムが抱える困難も明らかになってきました。

そうしたなかで、本学の卒業生・修了生の有志による、最先端のバーチャルリアリティ技術を駆使した、今回の卒業記念のライトニングトークイベントの企画は、大変野心的で意欲的な挑戦です。総長として大変頼もしく感じています。

東京大学では、平成30年2月に連携研究機構「バーチャルリアリティ教育研究センター」を設置しました。VRの世界最先端の研究をリードすると共に、新技術の普及、VRを活用した先進的な教育システム導入を促進したいと考えています。

今、世界はデジタル革新によるパラダイムシフトのまっただなかにあり、まさに激動の時代です。皆さんはこれからの人生で、想定外の課題に直面することもあるでしょう。変化を恐れるのではなく、むしろチャンスとして楽しんで下さい。皆さんが東京大学で培った「知のプロフェッショナル」としての力を大いに発揮し、元気に明るい未来を切り拓くことを祈念します。

本日は誠におめでとうございます。

令和2年3月25日

東京大学総長 五神真

廣瀬 通孝 教授 祝辞(東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長)

卒業生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。バーチャルリアリティ教育研究センターの廣瀬です。バーチャルで卒業式をしようということで、バーチャルリアリティの関係者として一言ご挨拶を申し上げようと駆けつけて参りました。

もっとも、僕が大学を卒業した1977年の当時は、全学の卒業式というものがありませんでした。学科の卒業式はありましたが、来ない人も多くいました。そういう世代からのメッセージといたしましては、今回盛大な卒業式は残念ながら流れてしまいましたが、皆さんが大学を卒業したのは紛れもない事実ですので、実質を大事に、自信を持っていただきたいということです。

バーチャルとは、物事のエッセンスという意味です。僕自身バーチャルリアリティの研究者として思うに、バーチャルリアリティ技術で大切なのは、物事における本質が何かというのを調べることです。今回の新型コロナ禍は、リアルとバーチャルの関係について、本質的に重要なことは何なのか、よく考える機会を与えてくれたと思います。

僕の経験でいうと、今の時代は1970年代のオイルショックによく似ていると思います。あの時、日本は非常に大変なピンチを迎えました。当時は、産業の拡大とエネルギ消費の拡大はイコールでした。その時に石油の値段が高くなり、エネルギが止められたために、産業の拡大ができなくなったのです。それを救ったのが情報化などの産業のハイテクでした。ハイテクを使った新しい産業が作り出されたことで、今の我々がいるのです。

翻って今のことを考えてみれば、国と国の間の行き来が止められたり、サプライチェーンが止められたりなど、大変な事態になっています。我々はこれまで、人と人との接触、物と物との接触が、産業や社会の成長に密接に関係していると信じてきました。そういった価値観が根底から脅かされ、我々は大きな不安を覚えているわけです。

バーチャルとかテレプレゼンスなどといったキーワードは、そうした問題を一気に解決する大きな役割を持っている可能性があります。卒業式ができないからバーチャルでやるということは後から、我々が今考えているよりずっと大きな意味を持つのかもしれません。バーチャルリアリティ技術の重要性は、新型コロナ以前と以後では全く異なったものになるでしょう。この会に参加されている皆さんの中には、VRの研究をしようと考えている人もいるのではないでしょうか。この難関を乗り越えるため、皆さんがそれぞれの場所で研究を推し進めてくださると、大変ありがたく思います。

塞翁が馬という言葉を、若い皆さんはご存知でしょうか。禍を転じて福と為すなどといった意味があります。いま大きなマイナスに我々は苦しんでいますが、後で考えてみると、このマイナスはプラスに転ずるための非常に重要な機会だったのだと、そう思えるように期待を込めて、祝辞とさせていただきます。

皆さん、ご卒業おめでとうございました。

令和2年3月25日

東京大学VR教育研究センター長 廣瀬 通孝

稲見 昌彦 教授 祝辞(東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター 応用展開部門長)

東京大学VR教育研究センターの稲見です。学士・修士・博士の学位を取得した皆さんおめでとうございます。本日はプレゼン用の巨大アバタを着用しております。高いところから失礼いたします。

私もいまから30年前、1990年に学部に入学した年に、友人らと手作りでVRシステムを制作を開始し、21年前に物理空間の方の安田講堂で拡張現実感(Augmented Reality:AR)に関する研究で博士の学位を授与されました。

当時はまさか皆さんに、物理でなくバーチャルな安田講堂前広場で祝辞を送ることになるとは夢にも思っておりませんでした。

さて、私は敢えて現実空間でなく物理空間の方の安田講堂という言葉を使いました。なぜなら、今皆さんが集い、その熱気を感じられるこの場は紛れもなく私たちにとってリアルだからです。

私が学生の頃は物理空間とVR空間という対比で語っていました。

今後は物理空間、遠隔空間、そして多数のVR空間を行き来する、ユニバースでもメタバースでもなく、うまく表現する言葉がないのですが、たとえばインターバースともいえる時代になると思っています。

皆さんも今現在言葉にないものを紡ぐ、まだ名前のついていない未知の何かに挑戦する、皆さんしか想像できない何かを具現化して人々に届けてください。

今日のイベントのような未来の普通を実践する場こそが大学ともいえます。今後はそれを深め社会に広げてほしいと強く願っています。

本日は誠におめでとうございます。


令和2年3月25日

東京大学VR教育研究センター 稲見昌彦

記念写真

アーカイブ写真