ユネスコ憲章 (前文)
この憲章の当事国政府は、この国民に代わって次のとおり宣言する。
戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない。
相互の風習と生活を知らないことは、人類の歴史を通じて世界の諸人民の間に疑惑と不信を起こした共通の原因であり、この疑惑と不信の為に、諸人民の不一致があまりにもしばしば戦争となった。
ここに終わりを告げた恐るべき大戦争は、人間の尊厳・平等・相互の尊重という民主主義の原理を否認し、これらの原理の代りに、無知と偏見を通じて人種の不平等という教養を広めることによって可能にされた戦争であった。
文化の広い普及と正義・自由・平和のための人類の教育とは、人間の尊厳に欠くことのできないものであり、 かつ、すべての国民が相互の援助及び相互の関心の精神を持って、果たさなければならない神聖な義務である。
政府の政治的及び経済的取り決めのみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない。
これらの理由によって、この憲章の当事国は、すべての人に教育の十分で平和な機会が与えられ、客観的真理が拘束を受けずに研究され、かつ、思想と知識が自由に交換されるべきことを信じて、その国民の間における伝達の方法を用いることに一致し及び決意している。
その結果、当事国は、世界の諸人民の教育、科学及び文化上の関係を通じて、国際連合の設立の目的であり、かつ、その憲章が宣言している国際平和と人類の共通の福祉という目的を促進するために、ここに国際連合教育科学文化機関を創設する。
ユネスコとは
ユネスコは1946年に設立され、異なる文明、文化、国民の間の対話をもたらす条件を創り出すための活動をする。一般に共有する価値観を尊重することに基づき、持続可能な開発、平和の文化、人権の順守、貧困の削減を目指す。ユネスコの活動領域の中でとくにに力を入れていることは、すべての人々が教育を受けられるようにし、自然科学と社会科学の研究を促進し、文化的アイデンティティの表明を支援し、世界の自然遺産や文化遺産を保護し、情報の自由な流れと報道の自由を促進し、かつ開発途上国のコミュニケーション能力を強化することである。現在二つのグローバルな優先課題がある。アフリカとジェンダーの平等である。2015年5月、韓国で開催された世界教育フォーラムで「インチョン宣言」が採択されたことを受けて、ユネスコはグローバルな教育2030アジェンダの調整と監視を進めるという新たな役割を担うことになった。これは持続可能な開発目標4に掲げられているものである。
ユネスコには199の国内委員会があり、また100カ国以上の国のおよそ4,000のユネスコ協会やユネスコ・センター、ユネスコ・クラブの支援を受ける。また、何百もの国際的な非政府組織やさまざまな財団や同様の機関と公的な協力関係を維持している。128カ国の10,000の学校や700以上の高等教育研究機関のネットワークとも連携している。ユネスコの管理機関はユネスコ総会で、195の加盟国で構成される。執行理事会は、総会が選ぶ58カ国で構成され、総会が採択した事業計画の実施を監督する。