一月往ぬる二月逃げる三月去る、とはよく言ったものだ。振り返れば、一月から今まで、時間が経つのはあっという間だったように感じる。新年を迎えたのが、まるで昨日のことのようだ。
しかし、実際はもう新年から丸三カ月が立とうとしている。今日は終業式。これをもって俺の高校一年生としての課程は全て終了だ。短い春休みの後に、二年生になる。
午前中に終業式が終わり、教室に戻った後には通知表が配られる。俺はオール三。マジで不思議だ。オール三なんて狙って取れるようなものではないと思うのだが。やはりこれは俺にだけ備わった才能なのだろうか……? 『平凡・レベル百』みたいなスキルを実は持っているのだろうか?
ちなみに、水無瀬は、三学期は毎日登校していたからなのか、副教科が三、他の筆記科目は全て五。そして、五十嵐は数学が四で、それ以外が全て五、という凄まじい成績を叩き出していた。平均評定がほぼ五とかヤバすぎるだろ。
「それでは、一年間ありがとうございました~」
そして、堀河先生の挨拶とともに、解散。一年C組も、これで終了だ。なんだかんだ居心地のいいクラスだったので、名残惜しい。来年も、仲がいい人と同じクラスになれたらいいな……。
「あー、ちょっと待った!」
すると、もっちーが声を出して引き留める。引き留めた相手は、先生の解散の合図とともに即座に帰ろうとした水無瀬。
「……我に何か用?」
「大アリだ。花見の件なんだけど……五十嵐さんも慧も、ちょっと待ってくれ」
「おう」
「はーい」
席を立ちかけた俺たちは再び席に座る。
「この前言った花見の件なんだけど、ニュースによると三月末くらいに満開になりそうなんだ」
「へ~」
確かに、学校の前の桜並木は徐々に咲き始めているから、あと一週間くらいで満開になりそうな予感がする。
「というわけで、三月三十日の金曜日に開催するのはどうかな?」
「わたしは大丈夫だよ」
「俺も」
「……ひかりについて行くわよ!」
「水無瀬はどうだ?」
「……弥生の晦日……ふふふ、ギリギリ行けそう」
「ギリギリ?」
その言葉に俺は少し引っ掛かって、水無瀬に聞き返した。
「我は今宵、この国を出で発ち、遥か西方の彼方の土地へ向かう……」
「へー、海外旅行に行くのか。どこに行くんだ、ヨーロッパ?」
「フランセーズとドイチュラント……」
「フランスとドイツか。いいなぁ」
「ふふふ……貴様ら、土産を楽しみにしておけ……」
「う、うん。ありがとう!」
「では、準備ある故、さらばだ!」
そう言うと、水無瀬はダダダダと慌ただしく教室を去っていった。
そして、俺たちの花見も、三月三十日に決定したのだった。