「えぇ……どうしよう……望月君はどっちにするの?」
「オレは数学が得意だから、理系にするよ」
五十嵐は参考までに、ともっちーにも文理選択の意向を尋ねる。だが、五十嵐よ、もっちーはお前とは違って数学が得意な人間だから、あまり参考にはならないぞ……。
もっちーのを聞いてもまだまだ悩み顔の五十嵐。そんな彼女に向かって、水無瀬は、
「フフフ……我が学力をもって」
「「「それはさっき聞いた(よ)」」」
「うぅ……」
さっきと同じことを言おうとして途中で遮られた。
全く目立ちたがり屋だなぁ、この中二病患者は。
それに、『どっちも選べる』って結局答えになっていない。いつかは水無瀬もどっちかに決めなきゃならない訳だし、五十嵐の参考にはならないだろう。というかなるはずがない。
次に五十嵐は隣の席に目を向ける。
「アリスはどうするの? 文系、それとも理系?」
「ひかりの行くところにどこまでもついていくわよ!」
アリスは目をハート型にして、ハッキリとそう宣った。五十嵐はそんな痛々しい発言をしたアリスからそっと目を逸らした。
……ダメだこりゃ。というか、一番ダメな例じゃねぇか! 全く参考にならないし、反面教師にするくらいしか活用法しかない。
と思ったら、続きがあった。
「……でも、あたしは多分理系ね……」
「え? 理系⁉」
「ちょっ、大声で言わないで!」
ほうほう、アリスは理系なのか……。
そういえば、俺ってアリスの成績をよく知らないな……。何が得意で何が苦手なのか全然知らない。
まあ、理系を選ぶってことは、きっと理系が得意なのだろう。
「か、勘違いしないでよね! 理系を選んだのって、あんたが理系を選んだからとかじゃないから! 決してひかりちゃんもアンタについていくと思って理系を選んだんじゃないから!」
「本音がダダ漏れだなオイ」
思いっきり志望動機を語ってんじゃねぇか!
というかコイツ……本当に五十嵐のことが好きなんだな。『一緒のクラスになりたいから』とかなんなの? 五十嵐のストーカーですか? 警察に通報しますよ? というか実際、前に俺たちをストーカーしていたよな⁉
「文理選択って二年生のクラス編成に関係あるの?」
「さあ……」
五十嵐がそんなことを聞いてくるが、そんな話は聞いたことが無い。でも、学校側からしてみれば、同じ科目を学ぶ生徒を同じクラスに集めた方が都合がいいかもな。
「んまあ、どっちにしろ期限までまだ時間はあるし、そんなに焦って決めない方がいいだろ。納得いくまでじっくり考えれば良いさ」
「……そうだね」
ここまで話した直後、キーンコーンカーンコーンとチャイムが鳴り、先生が教室の前から入ってくる。
あ、一時間目の準備をするのを忘れてた……。