病院を後にして、俺と母さんは薬を貰って家に帰った。
時計を見ると、もう午後二時近くになっていた。そろそろ五時間目が終わる頃だろう。
そういえば、なんだかんだ言って、俺はまだ昼飯を食べていないんだよなぁ……。
そんなことを考えた瞬間、呼応するように俺のお腹がぐうぅ……と鳴る。あー、腹減ったー……。
「何か食べるかしら?」
「あー、弁当食べるから大丈夫」
俺はソファーの上に投げっぱなしだった鞄の中を漁ると、今朝自分で作った弁当を取り出す。
「いただきます」
皆から遅れること約二時間、俺は弁当を食べ始める。あー美味しくねえ。というか熱と体のだるさのせいでじっくり味わう余裕がない。
と、俺の向かいで母さんがカップラーメンを食べ始めた。母さんもご飯を食べていなかったらしい。俺がインフルエンザに罹ったせいで迷惑をかけてしまったのだ。
そして、俺がインフルエンザに罹った原因と言えば……水無瀬で間違いないだろう。一昨日、猛烈に咳をしていたもんなぁ……。インフルエンザって言っていたし、ほぼ確実に感染源はコイツだ。
それにしても、母さんはカップラーメン以外のものを食べた方がいいと思う。まあ、好みなんだろうけどさ、もうちょっと栄養バランスを考えないと、定期健診で引っかかるよ?
すると突然、母さんのスマホがけたたましい音を鳴らし始めた。母さんは右手で箸を持って麺をズルズル吸いながら、左手で電話に出る。
「はい、雨宮です……はい、はい。……はい、分かりました。すぐに行きます」
「どうしたの?」
「これから会社に行かなきゃいけなくなったのよ……」
「お疲れ様です」
母さんは疲れたようにそう言うと、カップラーメンの汁を一気に飲み干すと、傍らに置いてあったバッグを手に取る。カップラーメンの汁を全部飲み干すとか、健康に悪すぎだろ!
「それじゃあ、ちょっと行ってくるわね。もしかしたら帰って来るのが夜になるかもしれないから、ひかりちゃんと舞には申し訳ないけど、学校から帰ってきたら夕飯はコンビニで買ってきて、って言っておいてくれるかしら」
「分かった。いってらっしゃい」
「行ってきます」
ガシャン、と玄関のドアが閉まり、慌ただしく靴音が遠ざかっていく。
急に静かになった家で、俺は一人飯を食う。
……寂しい。
やることもない。とりあえず寝るか……。
俺は弁当を食べ終わると、空になった容器をシンクに持っていく。そして、階段を上がると自分の部屋のドアを開ける。そしてベッドにダイブした。
おやすみ……。