新学期恒例の始業式の後、教室に戻ってきた。
休み時間を挟み、チャイムが鳴ると、ガラガラと教室前方のドアが開いて、今年もゆる~い感じが絶好調の担任、堀河先生が入ってくる。
「皆さん、あけましておめでとうございま~す。それでは早速ですが、留学生を紹介しま~す」
本当に早速だな! やっぱりもっちーの見立て通り、一つ机が増えているのは、クラスメイトが一人増えるというのを意味しているようだ。転校生じゃなくて、留学生だったけど。
そしてクラスは留学生と聞いて、男女ともに色めき立つ。今の時点では性別も出身国も分からないが、各々勝手に想像をしているのだろう。
先生はパンパンと手を鳴らして、うるさくなったクラスと静かにさせる。
「は~い、静かにして下さ~い。それでは、留学生を紹介しま~す。どうぞ~」
先生がそう言うと、教室前方のドアから、この学校の制服を身に纏った生徒が一人入ってくる。
まず目をひくのは、その金髪のロングヘアー。そして整った顔立ち。肌は雪のように白い。
そしてどう見ても……どう見ても、俺と五十嵐がこの前会ったストーカーだった。
男子たちがざわざわと騒ぎ、俺と五十嵐があっけにとられる中、先生はカンペを取り出して見ながら紹介する。
「え~っと、カナダからの留学生で、アリス・ミシェーレさんで~す。それでは一言どうぞ~」
「Enchantée, Je m'appelle Alice Michel」
何を言っているのかよく分かりませんね……? いったい何語だ? 隣の水無瀬はうんうんと頷いているが、本当に分かっているのだろうか?
そんなことを考えていると、突然ペラペラの日本語で喋り始めた。
「初めまして、アリス・ミシェーレです。よろしくお願いします」
彼女はその場で一礼すると、教室からは歓迎の拍手。俺もクラスメイトとは温度差があるものの一応拍手をした。
「え~っと、それでは、アリスさんには窓際から二番目の列の、一番後ろの席に座ってもらいま~す。皆さん仲良くしてくださいね~」
先生の指示に従って、彼女は俺の右斜め後ろ、つまり五十嵐の右隣の席に座る。
本当なら今すぐにでも、『あの時のストーカーか?』と問い詰めたいところだ。だが、俺はこのアリス・ミシェーレなる人物があのストーカーと同一人物なのか、いまいち確証が持てない。何故なら、彼女は青縁の眼鏡をかけ、雰囲気もストーカーの刺々しいものとは全く逆の、ふんわりした感じだからだ。俺に特段の興味関心もないみたいである。
滅多にないと思うが、双子やそっくりさんである可能性も否定できない。あー、失敗した。あの時、名前を聞いておけばよかった。
五十嵐もどうやら俺と同じ考えらしく、彼女に『よろしくねー』とにこやかに挨拶をしているが、ストーカーの話はしていない。また、知り合いである確証も持てていないようだ。
いずれにせよ、後で何らかの形で確認するべきだろう。
俺はため息をつくのだった。