俺は五十嵐にプレゼントされたばかりの包丁を、戸棚の包丁入れに大切にしまう。
すると、五十嵐が思い出したように俺に聞いてきた。
「そういえば、慧も何か渡したいものがあるって言っていたよね?」
「あ、ああ」
すっかり忘れていたが、俺からも渡す物があったんだった。五十嵐が包丁を構えた衝撃で頭から抜け落ちてしまっていたぞ。危ない危ない。
俺はボケットに再び手をやると、小さなクリスマス柄の包装のプレゼントを差し出す。
「ほい、俺からのクリスマスプレゼント」
「やったー! 開けていい?」
「もちろん」
五十嵐はワクワクした表情で、ガサガサと包装を外す。そして、俺からのクリスマスプレゼントを中から取り出した。
「これは……髪留め?」
「そうだ。お前の前髪が長いから、それが視界の邪魔になるんじゃないかって思ったんだ」
「わぁー! ありがとう!」
幸いにも五十嵐はお気に召したようで喜んでくれた。そして、早速そのオレンジ色の髪留めを前髪に付ける。
「どう? 似合う?」
「似合ってるぞ」
「えへへ~」
それにしても、このやり取りが、なんだか付き合いたてのカップルが互いにプレゼントを贈り合ったみたいに聞こえてくる……。
まあ、とにかく、俺のプレゼントは的外れなものではなかった。うん。髪留めは五十嵐によく似合っているし、本人も喜んでくれた。よかったよかった。
「それにしても、よくわたしが髪留めが欲しいって分かったね」
「マジで欲しかったのかよ……」
どうやら本人もご所望だったらしい。だったら、その望みに応えられてなおさらよかった。
「この髪留めは大事にするよ。プレゼントありがとう、慧」
「おう。こっちこそ、包丁ありがとうな、五十嵐」
……何だろう、このプレゼントの差。
今更過ぎるけど、包丁に対して髪留めだけじゃ、プレゼントの等価交換が成り立っていないと思う。というか、それを言うなら、そもそも包丁と髪留めをクリスマスプレゼントとして出すのもなかなかないことなんじゃないかと思う。
とにかく、俺たち二人のちょっとおかしなミニクリスマスプレゼント交換会は、これにて終了したのだった。