『続いては、ペンネームМ.Kさんからの投稿です』
『投稿ありがとうございます』
女子の放送委員が、次の投稿を読み上げる。
М.Kと言ったら……。わたしは顔を上げて、望月君を見た。
望月君は無言でサムズアップ。相変わらず何がいいのか分からないけど、フラグが立ったことだけは分かった。嫌な予感レーダーがビンビンに反応している。
『えーっと……『最近友人のAとIがとってもいい雰囲気になっているが、何故か付き合わない。どうしたらいいんでしょうか』とのことです』
「⁉」
これって完全にわたしと慧のことだよねそうだよね望月君⁉
慌てて小声で彼を問い詰める。
「どどど、どういうことなの望月君⁉」
「そのままだよ。五十嵐さん、慧と付き合っちゃえばいいのに」
「え、ええ~?」
わたしは紅潮していく頬を隠そうと俯いて考える。
た、確かに慧はいい人だし、顔もそこそこ良いし、なんだかんだ言って優しくしてくれる。神様にくっつけって言われているし、悪い人ではない。たぶん、わたしは慧のことを気にはなっているんだと思う。
でも、最初に会った時は彼を殺害するためだったし、もしわたしが慧のことを仮に好きだったとして、付き合いたいと思っても、流石にそれはできないんじゃないかと思う。
だって、慧がわたしのことを好きだという保証はどこにもない。初対面で『あなたを殺しに来ました』なんて言ってきた人なんかとは誰とも付き合いたくないでしょ?
『雨宮君どう思いますか?』
と、もう一人の当事者に、女子の方が問いかける。
『え、えーっと……これは本人たちの進展を見守るのが一番だと思います。きっとそのうち何かあると思います、よ?』
なるほど! わたしたちの問題だから、口出しをするべきではない、と……。まあ、その通りだね。
「……そっか」
望月君は背もたれに寄りかかると、じゃあ、オレは静観の構えで行くかな、と呟いた。
こうして、一波乱あったお昼の放送は終わった……はずだった。
「……つまり、慧は五十嵐さんに告白するということだね」
「え」
はずだったけど、望月君が突然ミサイルを撃ち込んできた。
告白? 慧が? わたしに? そのワードが頭の中をぐるぐると回り始める。
わたしは思わず再び望月君に詰め寄る。
「わ、わ、わたわ、わた」
「落ち着けって」
「……慧が、わたしに告白?」
「そう」
もう脳内はショート寸前。思考回路がめちゃめちゃだ。
「だって、今のところ五十嵐さんが何もしないなら、何かある=慧が何かをする、っていう意味だよ」
「そそ、それがっ、こく、はく?」
「そう。無意識の内の言葉かもしれないけど、つまり慧は五十嵐さんが気になってるってことだ」
「はうぅ……」
もしかして、これって……。
その言葉で遂にKOされ、頬の熱さを感じながらわたしは机に突っ伏した。