メインベアリングを交換する場合、正しい方法で行えば、成功するのは難しいことではない。
大きな問題は、ベアリングのスラスト方向のすき間が無くなった状態になってしまうことで、そうなると短期間でベアリングに不具合が生じる。200マイル(320km)ももたないかもしれない。
クランクが組み付けられ、クランクケースが規定トルクで締められた時にダイヤルゲージで遊びを測定することは重要なことである。
以下の手順は作業の最適な方法である。早くて簡単でもあり、正しい精度で組み付けるためにも以下のように作業して欲しい。
ベアリングをオイルに漬けて100度程度まで加熱する。目安としてオイルから煙が出るくらい。
特殊工具のクランクシャフトサポートツールを使うなどしてクランクシャフトを垂直に固定する。ベアリングを奥に止まるまで挿入する。重力のみで挿入できないのならば、ベアリングの加熱が不足している。その場合軽く叩いて挿入する。パイプを使い、インナーレースにのみチカラを加える。決してアウターレースを叩いてはならない。正しい位置まで挿入できたら、そのままにして冷やす。
クランクシャフトをひっくり返し、逆側のベアリングを同様に組み付ける。組み付けたら完全に冷やす。
駆動側のクランクケースを内側を上にして木などの台に置く。クランクを組み付ける(クランクシャフトも重力だけを使って落とし込む)のでその分下にスペースをとっておくこと。
クランクケースのベアリングの周囲をホットエアガンを使って加熱する。あわててはいけない。クランクケースの後端の方が触っていられないほど熱くなるくらいまで加熱する。
充分に熱くなったらクランクを落とし込み、冷めるまで待つ。簡単に奥に当たるまで落ちないならば、まだケースの加熱が不十分である。
完全に冷えていることを確認し、クランクケースをクランクが下向きである反対向きにする。特殊工具のクランクリムーバルツールをクランクを取り外した時のようにセットする。
中央のエキストラクターボルトを手で締められるだけ締める。これはクランクを押すことによってベアリングの遊びを反対側に向けて寄せるためであるので、クランクを取り外すように押し出すのとは違う。スパナなどの工具を使ってボルトを締めたら、ベアリングが抜けてきてしまうからやってはいけない。手の力だけで締めればベアリングは抜けない。(あなたにそんな怪力は無いだろう)セットできたらクランクケースを木の台に置く。
マグネット側のクランクケースを加熱し落とし込んで組み付ける。
クランクケースケースの合わせ目には液状ガスケットを塗布する。(シリコンではない。指定はロックタイト510)水冷エンジンではウォーターポンプインペラーを組み付けるのを忘れないこと。規定トルクでボルトを締め付け、そのまま冷やす。
完全に冷却したら特殊工具を取り外す。ダイヤルゲージを用意してスラスト方向の遊びを測定する。クランクを押し引きしてダイヤルゲージを読む。0.03-0.09mmの遊びが必ず無ければならない。
適切な遊びがあったならば、クランクの両端をプラスチックハンマで叩いてから、もう一度遊びを確認する。
もしも遊びが無かったなら、もう続けられない。分解してやり直し。(ベアリングは新品に替えたほうがよろしい。すでにベアリングにダメージがあるかもしれない)
遊びを確実に確認する理由を述べると、ベアリングに対するスラスト荷重を無くすためであり、ボールレースのスラスト荷重が過大であると早期に問題が発生するからである。クランクの遊びを測定することにより、スラスト荷重が無いことと、ベアリングのボールがレースの中央を転がるということが保証される。
この組み付け方法の利点とは
各部分を一度加熱するだけであり、再加熱の時間の無駄がない。
重力だけを使って組み付けているのだから、ダメージを与える心配が無い。
ベアリングをオイルで加熱しているので、これもダメージを与えない。
行き当たりばったりで作業しないこと。適切な工具を使用することは作業効率を上げるためのとても良い投資となる。
なにか質問があればピアジオのアフターセールスマネージャーに電話してください。
ボールレースがサイドロードを受けるとなぜ失敗するのですか?
上の図は、横荷重なしで正しく取り付けられたベアリングを示しています。全体の荷重のみがボールを介して伝達されています。
下の図は、横荷重のあるベアリングを示しています。 内側と外側。トラックが反対方向に押されています。ボールは角度を付けて荷重を伝達しており、サイドフォースには、ボールをランプ(トラックの形状)に押し上げる効果。 ボールは、内側と外側のトラックを押し離そうとします。 ランプ効果のため、適用される力は、横荷重だけよりもはるかに大きくなります。 だから今トラックは通常の負荷だけでなく、大きな負荷もかかります。さらに、追加の負荷により、潤滑が強制的にポイントから離れる可能性があります。接触するので、油の膜ではなく、乾いた金属同士の接触になります。パーツの分離。