セラミックス、合金、ハロゲン化物といった伝統的な無機物質から、近年の発展が著しい金属有機構造体(Metal-organic framework, MOF)まで、幅広く磁性体や超伝導体の研究に取り組んでいます。
結晶構造、イオンの価数、化学結合といった化学的な視点と、電子相関、フラストレーション、バンド構造といった物理的な視点の両者から面白い性質が期待される物質を合成し、物性を調べます。
電子状態の探索や物性評価に強い威力を発揮するパルス超強磁場施設などの大型施設を積極的に利用します。
ジャイロイドは空間群I4132を持つ三次元構造で、構造材料、昆虫、液晶などの様々な分野で注目を集めています。最小のジャイロイドである電子自由度のジャイロイドに着目し量子物性を開拓します。
イオンの価数は物性を決める基本的なパラメーターです。タンタルやニオブなど、普通は磁性を持たない元素の磁性、アニオン的な遷移金属をもつ化合物の超伝導といった未知物性を探索します。
近年、100テスラ(温度に換算すると100ケルビン以上)を超える強い磁場中でさまざまな物性測定が可能となっています。磁性体の研究に積極的に活用し、未知の磁場誘起相転移を開拓します。
無機物質は温度を変えると多彩な構造変化を示します。結晶中の水分子の配向秩序、スピン軌道相互作用の強い物質におけるスピンや軌道の秩序、MOFにおける圧電転移などを開拓します。
望んだ性質をもつ新物質を狙って合成できるようになるのが固体化学の究極の目標といえますが、真に画期的な性質や新しい結晶構造をもつ物質は、よく考え、準備して実験を行った結果、思いもよらず発見されることが多いと思います。
新しい量子物性を狙った物質合成と並行して、過去の論文やデータベース、計算科学などを参考に、これまでにない合成条件や元素を組み合わせることによって、"偶然新しい物質を見つけることを狙った" 水熱合成や結晶育成にも積極的に取り組んでいます。
新物質の発見に、近年の発展が著しいマテリアルズインフォマティクスをどのように取り入れるかということにも興味をもっています。
見たことのない形の結晶 (左)や、予想外の新構造を持つ物質 (右)ができることがあり、狙って作った物質よりも面白い場合があります。