研究紹介コーナー
これまで行ってきた研究(赤ちゃん~大人まで)をいくつか紹介します。詳細は省くので,質問などあればお気軽にご連絡ください。
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これまで行ってきた研究(赤ちゃん~大人まで)をいくつか紹介します。詳細は省くので,質問などあればお気軽にご連絡ください。
赤ちゃんには錯覚が通じない?
我々は注意を向けている対象の周辺情報も加味して,それが何であるかを認識しています。この仕組みを利用した錯覚現象に,misbinding(ミスバインディング)があります。中央の運動方向とは逆方向の運動にも関わらず,我々は赤と緑それぞれの一様な動きを感じます↓参考画像。
驚いたことに,この錯覚は実は生後半年未満の赤ちゃんでは起きず,中央と周辺の正しい運動方向をみています。一方で,生後半年を超えてくると錯覚が起きるようになります。
この発見はイギリスの大手新聞The Guardianに取り上げてもらいました。
顔を見つけやすい位置がある?
我々が外界の情報を処理するとき,その対象が視野のどの位置によって認知するまでにかかる時間や難易度が変わります。例えば,対象の動きや運動方向といった情報は視野の下側の方が上よりも優れていると言われています。これは視野の下側で動きを感じやすいことに由来しています。普段道を歩いているとき,真正面よりも,足元で変化を大きく感じると思います。
その人が誰であるかといった顔認知は,視野の上側の方が良いと報告されています。しかしその原因はよくわかっておらず,日常で遭遇する顔が視野の上側に頻繁に現れるからなのか,あるいは身体の中で顔は上側にあるからなのか,未だ議論されています。
生後半年前後でこの現象を検討したところ,7-8ヶ月頃の赤ちゃんでは上側の顔を見つけやすく,それ以前の赤ちゃんでは上も下も顔をみつけるのに差はみられませんでした。従って,この現象は生得的なものではなく経験的に得られるものであることが考えられます。おそらく,一人で座れるようになることで,上下空間の座標が形成され,顔が上側という学習が起きるのかと考えています。
目が向いてなくても何かわかる!
我々は実際に眼を動かして対象を見なくとも,それに意識(注意)を向ければ解像度は低くとも何であるかわかります。このような注意の向け方を”潜在的注意(covert attention)”といいます。反対に,眼も一緒に対象に動かす注意の向け方を”顕在的注意(overt attention)”といいます。
これまでの赤ちゃん研究では顕在的注意が中心でした。というのも,まだ喋れない赤ちゃんに「眼を動かさないで意識だけそこに集中して」とは指示ができないためです。そこで私たちは,赤ちゃんが眼を動かす前に対象を呈示し終える課題を行うことで,大人と同じ潜在的注意が機能するか調べました。
その結果,3ヶ月頃の赤ちゃんも眼を動かさずとも対象が何であるか(実験では方位と運動方向を使用)区別していました。赤ちゃんがじっと見ている場所とは違うところも実はしっかり見ているのかもしれません。
自分の体重が気になる年ごろ?
コロナ禍以降,肥満や痩身傾向の子どもが増えました(文部科学省, 2024)。隔離期間があり,体調管理等を自分でしないといけないことが増えたためなど,様々な要因はありますが,子どもたちが自分の身体をどう認知しているのかを知ることが一つの課題となりました。
そこで,私たちは8-9歳の小学生を対象に,自分の体重の数値が彼らの注意を引くのか調べました。フラッシュ暗算のように,複数のアルファベットが一瞬出てくる中に,自分の体重か関係ない数値が出てきて,その後現れる標的の文字が何かを回答してもらいました。その結果,男の子は自分の体重が出てきても標的の回答成績に影響はありませんでしたが,女の子では体重の方が関係ない数値が出たときよりも回答成績が統計的に有意に下がりました。つまり,体重へ注意が引っ張られるのには性差があり,女の子の方が自分の体重に関心があることが考えられます。
この発見はPsyPostで紹介されました。
肌の露出は注意をひく…?
顔は注意をひきつけるものとして古くから研究されてきました。顔はその人の印象であったり,今の気分などを教えてくれるリッチな情報源なので,社会的な生き物である我々にとって重要な信号です。
同じようにヒトの身体でどの部位に注意が引かれるのか,という研究も行われてきました。身体観察中の視線を計測したり,認知課題遂行中に身体部位を呈示して課題の成績に影響を及ぼすのかなどなど。ただ,これは顔と違って文脈の影響を比較的強く受けることが報告されています。例えば,観察対象を友達あるいはパートナーとしてみるときには注目する部位が変化したり(Bolmont et al., 2014),自身が気にしている部位に注目する傾向がある(Bauer et al., 2017),ことなども言われています。
本研究では,顔と並んで人の印象を左右する身体部位である脚に焦点を当てました。認知課題と視線計測実験から,男女ともに同性・異性の肌が見える脚に注意がひかれることがわかりました。さらに,この効果は女性の脚に強く現れました。
異性だけでなく同性の肌が見える脚に注意が向く結果は,単に配偶者選択といった進化的な意味だけでなく,生物学的に脚への関心が高いということが考えられます。また,女性が同性の脚に注意が向いてしまう背景には,自身の身体へのどのくらい関心があるか(満足しているか)とも関連している可能性があります。このあたりはまだ考察の域を出ないため,慎重に結果を解釈する必要があります(for future study)。
本成果は各機関を通じてプレスリリースされました。